平成17年 5月12日(木):初稿 平成17年 7月12日(火):更新 |
○著作権の話しを続けます。 著作権で最も使用されるのは複製権であり、著作物の複製は著作者しか出来ないはずが、複製の一種である書籍等のコピー機によるコピー或いはCDはビデオ,DVDの録音・録画機器による録音・録画等は、著作者以外の人によって日常茶飯事に行われています。 ○これは著作権法30条で「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」即ち「私的使用」として例外的に認められているもので、「使用」とは「当該複製物をその経済的用法に従って用いること」と解説されています。 私の理解では、例えばCDをMDにコピーし、自分一人で聞くか、或いは家庭内及びこれに準ずる狭い限られた場所で、他人と一緒に聞くことです。 ○問題は、親しい友人同士のAが甲曲CD、Bが乙曲CDを購入し、それぞれMDに録音して、交換することが許されるかどうかです。甲、乙曲何れも1000円とすれば、A、B何れも録音による複製物の交換で1000円の出費と僅かのMD費用だけで甲、乙両曲を取得できることになります。 仮にAが親しい仲間10人を集めてそれぞれ別の10曲のCDを購入してMDに録音して交換すれば、その10人は1000円と交換用9枚のMD費用だけで10曲のCDを取得できます。 ○これとピッタリ合致する事例について解説した著作権解説書は、現時点では私の知る範囲では見当たりませんが、これも「私的使用の範囲内」であるとの見解の方が一般的なのかも知れません。 ○しかし、私には上記A、BのMD交換行為は、単なる「使用」とは思えません。Aからすれば自分のCDの複製MDを、BからBのCDの複製MDを対価として提供を受け、有償譲渡したと理解すべきと思っております。「使用」の定義を「当該複製物をその経済的用法に従って用いること」とした場合、有償譲渡することも含めると理解すれば「使用」に該当することになりますが、私としては納得できません。 ○ところで26条の2に著作物原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供する権利即ち譲渡権が定められています。 ここでの譲渡は公衆即ち不特定又は特定多数の人に対するものであり、特定少数の人に対する譲渡は含まれません。だとすると30条「私的使用」として著作権者の許諾を得ないで複製した著作物でも特定少数の人に対する譲渡であれば、有償であろうと無償であろうと許されることになります。 ○では特定少数とは何人かの問題になりますが、解説書には「多くても10人位」との記述も見受けられ、Aが親しい友人を集めて10人位の規模で、CD複製MDの交換会を催しても著作権法違反にはならない見解もあるかも知れません。 ○しかし解釈としては、当初、私的使用を目的とした複製として許されたCDのMDへの録音も、他人に譲渡することによって目的を逸脱して、私的使用の範囲外となり、当初の私的使用が遡って否認され、当初の複製そのものが許されないことになり、A、Bの上記行為は複製権侵害になるとの考え方も成り立るような気もします。 ○私としては、著作権保護のためにはAB間のMD交換行為は認めたくないところで、上記の譲渡による遡及的な私的使用否認とする考え方の方が、著作権を尊重し著作権制度の趣旨に合致すると思いますが、余り厳しく考えると却って音楽普及の妨げになるとの見解もあるようで、著作権の限界事例はなかなか難しいなと思っているところです。 以上:1,398文字
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