平成17年 1月16日(日):初稿 平成17年 4月22日(金):更新 |
報告者 崔 信義弁護士 判決:平成16年7月28日 東京地裁 平成15年(ワ)第29376号 不正競争行為差止等請求事件 (参照条文) 不正競争防止法2条1項1号,2号,3条 商標法25条,37条1号,36条 (当事者) 原告 カルティエ インターナショナル ビーブイ(原告カルティエ) 原告 リシュモンジャパン株式会社(原告リシュモンジャパン) * 原告カルティエは,平成9年(1997年)に,「パネライ」からパネライとの商標を付した時計の製造販売等の事業とそれに関連するすべての知的財産権を譲り受け,世界市場において,パネライの商標を付した腕時計(「パネライ製品」という。)を製造し,販売。 原告リシュモンジャパンは,原告カルティエが製造するパネライ製品を,日本における総代理店として販売。 被告 ケントレーディング有限会社 被告 ケントレーディングブレイン株式会社 * 被告ケントレーディング有限会社は,時計とその部品の輸出入販売等。 被告ケントレーディングブレイン株式会社は,食料品,香辛料の輸出及び販売等。 被告らは,共同してR・X・Wという商標を使用して腕時計を製造し,販売。 (事案) 原告らは,被告らに対して, ①原告らの製造又は販売する腕時計の形態が,原告らの商品等表示として需要者の間に広く認識されているものであり,被告らの製品である腕時計の形態はこれと類似し,原告らの製品との混同のおそれがある, ②原告らの製品の形態が,原告らの商品等表示として著名であり,被告らの製品の形態がこれと類似している,又は, ③被告らの製品は,原告カルティエが有する商標権に係る登録商標と類似する標章が付されている, と主張して,不正競争防止法2条1項1号,2号,3条に基づき(原告カルティエにおいては,選択的に商標法25条,37条1号,36条に基づき),被告らの製品の製造,販売等の差止及び廃棄を求めた事例。 (前提事実) 原告カルティエは,別紙1原告製品目録記載1ないし9の腕時計(以下,順に「原告製品1」「原告製品2」という。また,原告製品1ないし原告製品9を併せて「原告各製品」という。)を製造,販売し,原告リシュモンジャパンは,原告各製品を日本国内で販売。 被告らは,平成14年ころ,別紙2被告製品目録記載2の腕時計(以下「被告製品2」という。)を製造し,被告らの店舗である銀座ケントレーディング(「被告ら店舗」)内及び被告らのウェブサイト「RXW」上において,被告らの販売する商品として譲渡又は引渡しのために展示し,前記店舗内及びウェブサイトを通じて販売し,現在も展示及び販売を継続している。 被告らは,被告製品2を製造,販売した後,「被告製品1」,「被告製品3」を製造し,被告ら店舗内及びウェブサイト上において,被告らの販売するレギュラー商品として譲渡又は引渡しのために展示し,被告ら店舗内及び各ウェブサイトを通じて販売し,現在も展示及び販売を継続している。 原告カルティエは,別紙3原告商標目録記載のとおりの商標権を有する。 (主文) 請求認容 1 被告らは,別紙2被告製品目録記載1ないし3の各商品を製造し,譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,又は電気通信回線を通じて提供してはならない。 2 被告らは,別紙2被告製品目録記載1ないし3の各商品を廃棄せよ。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 4 この判決は,仮に執行することができる。 (争点) (1)原告各製品の形態は,周知又は著名な商品等表示といえるか。 (2)被告各製品は,原告各製品と類似するといえるか。 (3)被告各製品は,原告各製品と間で,混同を生じるおそれがあるか。 (4)被告各製品にリューズプロテクターを付ける行為は,原告登録商標を使用する 行為といえるか。 (争点についての当事者の主張) 争点(1)について 「原告らの主張」 ア 商品等表示性 形態上の各要素は, ①リューズプロテクター(リューズを保護するための部品)の形状, ②ケース(本体)及びベゼル(文字盤の外周部分にある枠)の形状,大きさ, ③ホーン(革のストラップやブレスレットなどを装着するための角状の凸部)の形状, ④文字盤のレイアウト, ⑤文字盤上の数字等の形状, ⑥長針,短針及び秒針の形状, ⑦バックルの形状である。 原告らが,これらの各要素又はこれらの組合せからなる原告各製品を独占的かつ継続的に製造し,販売したことにより,各要素,又はこれらの組合せからなる形態は,原告らの出所に係る製品であることを示す出所表示機能を有するに至った。 イ 周知性・著名性 平成12年初頭ころまでには,少なくとも高級腕時計の取引者及び需要者の間に,原告らの製造販売に係る商品であることを示す商品等表示として広く認識されていた。 原告各製品の前記の形態上の特徴は,遅くとも平成13年初頭ころまでには,全国の高級腕時計の取引者及び需要者に知られるようになり,原告らの製造販売に係る商品であることを示す商品等表示として著名となった。 (ア)販売数量 (イ)宣伝費用 (ウ)雑誌での紹介 「被告らの反論」 原告各製品には,各要素又はこれらの組合せに形態上の特徴はない. その形態が商品等表示に該当することはない. 周知,著名であるともいえない。 ア 商品等表示性 (ア)リューズプロテクターの形状 通常採用される,ありふれた形態といえる。 他社製品においても,同様の形態が採用されている。 (イ)ケース及びベゼルの形状 他社製品でも採用されているので,原告各製品の形態的特徴とはいえない。 (ウ)ケースの大きさ 他社製品でも多数紹介されているので,原告各製品の形態上の特徴とはな らない。 (エ)ホーンの形状 腕時計が通常有する形状であり,形態上の特徴はない。 (オ)文字盤のレイアウト 形態を特徴付けるものとはいえない。 他社製品において採用されている,ありふれたレイアウトである。 (カ)文字盤上の数字等の形状 暗闇の中で発光する点も,他社製品において通常有する形態であり,また, 視認性を高めるために機能的に選択されたものであり,形態上の特徴にはなり得ない。 (キ)長針,短針及び秒針の形状 ごくありふれた形態であり,形態上の特徴とはいえない。 イ 周知性・著名性 (ア)販売数量及び宣伝費用 原告らの主張する販売数量,宣伝費用を前提としても,原告各製品の商品形態の周知性を根拠付けることはできない。 原告各製品の販売数量は,わずかであるといえるから,その形態が周知性及び著名性を有することはない。 (イ)雑誌での紹介 読者は,パネライという商品名を認識することはあっても,原告各製品の形態の特徴を認識することはなく,原告各製品の形態が,周知性及び著名性を取得することはない。 以上:2,758文字
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