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第9章著作権法-著作権訴訟における留意点 小松

平成17年 1月15日(土):初稿 平成17年 1月18日(火):更新
第7節 著作権訴訟における当事者の主張・立証の留意点
1.原告の主張・立証の留意点
(1)原告の主張・立証の要件事実
①侵害の対象が著作物であること
②当該著作物について原告が著作権を有すること
③侵害行為の存在-支分権の内容に対応した侵害行為の特定が必要、但し113条あり。
⑤損害の発生-114条1、2項及び114条の4参照
⑥侵害行為と損害の因果関係

(2)著作物性
要件は、第2節記載の通り。対象物に争いがない場合は、「著作物」に該当しないと言う主張が被告の抗弁か?
応用美術の著作物性、実用製品の設計図の著作物性について争いがあるときは、原告に「著作物」該当の主張・立証責任がある。
対象物が「思想・感情の創作的表現」と言えるかどうか争いになった場合、原告はどの部分が「表現」に当たるかをより具体的に特定して主張する必要がある。
商品カタログ事件
「アイデア」と「表現」の限界が問題になる事案では、原告が著作物と主張する「表現」の内容をより具体的に主張し、それが
「ありふれたもの」でないこと
②当該「表現」を著作権法によって保護しても「アイデア」自体を保護することにはならないこと(同一の「アイデア」を表現する方法として他に選択の余地があること)
を積極的に主張する必要がある。
システムサイエンス事件IBFファイル事件ラスメッセージin最終号事件

(3)原告が著作権を有すること
差止請求訴訟では、口頭弁論終結時まで、損害賠償請求では損害発生期間中著作権を有すること。
著作者人格権侵害の主張の場合は、原告が著作者であること
著作権は登録不要なので外形的には発生が不明確なので、原告自ら著作者であると主張する場合原告自身が創作した事実を主張・立証する。
但し、著作者の推定規定14条、実名登録の場合75条、職務著作の場合15条
職務著作の場合の「別段の定め」は被告の抗弁事由

原告が著作者以外のもので著作権を主張する場合は、著作権取得原因を主張・立証する。
但し、相手が対抗関係にある場合は、対抗要件規定77条。対抗関係にない場合は、登録不要。

(4)侵害行為の存在
①権限なくして支分権(21~28条)の内容をなす著作物利用行為を行ったこと
②著作権法上のみなし侵害(48,113条等)を行ったこと

著作者人格権侵害行為は、18~20条人格権侵害行為を、死後の名誉等の侵害行為は60条該当行為

複製権侵害や翻案権侵害行為は、原告の著作物に「依拠」して行われたこと
「依拠」は、被告が原告の著作物にアクセスした事実或いはアクセスしうる十分な蓋然性があったことを主張・立証すれば推定される。
壁の世紀事件古文単語語呂合わせ事件地裁判決同高裁判決

「依拠」は、原告著作物の創作性が認められる表現部分に依拠することが必要
システムサイエンス事件
江差追分事件春の波濤事件
複製では、被告の作成物が原告の著作物に「依拠」してこれを「有形的に再製した」と言える程度に「同一性」が認められる必要性がある。
この「同一性」は、著作物の一部を構成する表現部分でも足りる。要するに一定の「思想・感情の創作的表現」と評価された部分であれば一部でも「著作物」として保護され、実際は、この一部の著作権侵害が問題となる例が多い。
この場合、対象となる原告の「表現」と被告の「表現」を対比する一覧表を作成して著作権侵害部分を特定すべきである。
但し、重要なことは被告の表現は原告の表現の創造性に依拠してこれを再製していることが重要で、単に外形的表現形式の同一性を主張するだけでは足りない。

尚、プログラム等デジタル著作物については対比的比較が困難で、内面的形式の同一性だけでなく、外形的表現においても「既存の著作物の表現形式上の本質的特徴を直接感得出来るか否か」を判断基準とする例がある。

3.被告の主張・立証
(1)著作権の制限(30~47条の3)への該当性


(2)著作権の存続期間の満了

(3)許諾

(4)真正商品の並行輸入
著作物の並行輸入のような国際間の著作物の流通に関し、「消尽」の論理で著作権権利行使制限の解釈が出来る。

(5)信義則違反・権利濫用


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