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平成17年 1月15日(土):初稿 平成17年 5月 5日(木):更新 |
第6節 著作隣接権 1.著作隣接権の意義・目的 著作者隣接権とは、実演家の権利、レコード製作者の権利、放送事業者及び有線放送事業者の権利を言う。 著作者隣接権が認められるのは、これらの者が著作物利用の有力媒体であり、著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしていることと、これらの者が行う伝達行為に著作物の創作に準じた隼創作性があり、その知的価値を正当に評価する必要があるからである。 2.実演家の権利 (1)実演家の意義 実演とは、著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう(2条1項3号)。 実演家とは、俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行なう者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう(2条1項4号)。 (2)実演家の権利の内容 (a)録音権・録画権(91条) 実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する。但し、映画の著作物中の実演は除く。 (b)放送権・有線放送権(92条) 実演家は、その実演を放送し、又は有線放送する権利を専有する。 但し、放送される実演を有線放送する場合、既に許諾済みの録音・録画物の放送、有線放送の場合、映画等の著作物に収録(録音・録画)された実演で録音・録画の許諾を不要とする実演の放送、有線放送の場合は除く。 許諾を受けた放送事業者による再放送、他の放送事業者への提供による放送、ネットワーク放送をする場合、実演家に報酬金を支払わなければならない。 3.レコード製作者の権利 (1)レコード製作者の意義 レコードとは、蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音をもつぱら映像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう(2条1項5号)。 録音テープその他の物とは、ディスク(CD・DVD)、メモリ等の媒体を含む。 レコード製作者とは、レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう(2条1項6号)。 (2)レコード製作者の権利の内容 (a)複製権(96条) 複製とは、レコード等媒体その物の複製ではなく「音」を他の媒体に固定すること。 (b)送信可能化権(96条の2) レコードを送信可能化する権利。アナログレコードの音をデジタルデータ化してwebサーバーにアップロードすることで送信可能化権の対象となる。 4.放送事業者の権利 (1)放送事業者の意義 放送とは、公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいい、放送事業者とは、放送を業として行なう者をいい(2条1項8,9号)、放送法上の「放送事業者」とは必ずしも一致しない。 スターデジオ事件参照 (2)放送事業者の権利の内容 (a)複製権(96条) 放送事業者は、その放送又はこれを受信して行なう有線放送を受信して、その放送に係る音又は影像を録音し、録画し、又は写真その他これに類似する方法により複製する権利を専有する。 (b)再放送権・有線放送権(99条) 放送事業者は、その放送を受信してこれを再放送し、又は有線放送する権利を専有する。 (c)テレビジョン放送の伝達権(100条) 放送事業者は、そのテレビジョン放送又はこれを受信して行なう有線放送を受信して、影像を拡大する特別の装置を用いてその放送を公に伝達する権利を専有する。 5.有線放送事業者の権利 (1)有線放送事業者の意義 有線放送とは、公衆送信のうち、公衆によつで同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいい、有線放送事業者とは、有線放送を業として行う者をいう(2条1項9号の2,3)。 (2)有線放送事業者の権利の内容 放送事業者の権利内容と同じ。 6.著作隣接権の制限 大部分は、著作権の制限規定を準用しており、著作権制限とほぼ同様である。 7.著作隣接権の存続期間 以下の時を起算点として50年経過した時まで存続する(101条) ①実演に関しては、その実演が行われた日の属する年の翌年 ②レコードに関しては、その発行が行われた日の属する年の翌年 ③放送に関しては、その放送が行われた日の属する年の翌年 ④有線放送に関しては、その有線放送が行われた日の属する年の翌年 8.平成14年著作権法改正 (1)実演家に対する実演家人格権の付与 (a)氏名表示権 実演家は、その実演の公衆への提供又は提示に際し、その氏名若しくはその芸名その他氏名に代えて用いられるものを実演家名として表示し、又は実演家名を表示しないこととする権利を有する(90条の2)。 (b)同一性保持権 実演家は、その実演の同一性を保持する権利を有し、自己の名誉又は声望を害するその実演の変更、切除その他の改変を受けないものとする(90条の3)。 (c)一身専属性及び死後の人格的利益の保護 実演家人格権は、実演家の一身に専属し、譲渡することができず、実演を公衆に提供し、又は提示する者は、その実演の実演家の死後においても、実演家が生存しているとしたならばその実演家人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該実演家の意を害しないと認められる場合は、この限りでない(101条の2,3)。 (d)法的救済 実演家人格権の侵害に対する法的救済のため112条(差止請求権)等の改正がなされた。 (2)放送事業者等への送信可能化権の付与 本格的ブロードバンド時代の到来によって、放送番組等の無断再送信防止のために規定された。 (a)放送事業者の送信可能化権 放送事業者は、その放送又はこれを受信して行う有線放送を受信して、その放送を送信可能化する権利を専有する(99条の2)。 これは、インターネットを通じたインタラクティブ(オンデマンド)方式送信可能化権を付与するもので、具体的には ①ネットワークに接続されているサーバーの公衆送信用記録媒体に放送番組を記録していくこと ②ネットワークに接続されているサーバーに放送番組を入力すること ③公衆用記録媒体に放送番組を記録し或いは入力しつつあるサーバーをネットワークに接続すること の3類型の行為が対象となる。 (b)有線放送事業者の送信可能化権 放送事業者の送信可能化権と同様。 (3)レコード保護期間の起算時期の変更等(101条) 7.著作隣接権の存続期間に記載したとおり改正。 (4)その余のWIPO実演家・レコード条約t(隣接著作権条約)締結に伴う改正 以上:2,657文字
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