旧TOP : ホーム > 知財法等 > 実務解説「知的財産権訴訟」 > |
平成17年 1月15日(土):初稿 平成17年 1月18日(火):更新 |
第4節 権利主体としての著作者・著作権者 1.著作者と著作権者 2条1項2号 著作者 著作物を創作する者をいう。 著作者は、創作行為により著作物について著作権と著作者人格権を取得するが、著作権については第3者に譲渡が可能であり、著作権の帰属主体を著作権者という。 映画の著作物については、著作者と著作権者が原始的に相違している(16条、29条) 2.職務著作物の著作者 (1)職務著作とは 15条 人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。 (3)職務著作となる要件 ①法人等の発意に基づく 著作物作成の意思が直接又は間接に法人等の判断にかかっているかどうかが決め手となる。 システム開発等の大規模プロジェクト開発においては、全体的構想が法人等の機関で意思決定されれば足りる。当該著作物作成業務を個別担当者に任せても、法人等の発意となる。 ②法人等の業務に従事する者 狭義説;原則として法人等と雇用関係にある者に限る 講義説;雇用関係になくても法人等の指揮監督の下にその業務に従事する者を含む 昭和60年制定労働者派遣業法に基づく派遣社員は、派遣先の法人等の業務に従事する者となる。 ③職務上作成する著作物 当該著作物の創作行為が業務従事者の職務として遂行されること 業務時間内でもその職務と関係なく私的に作成された著作物は該当しない。業務時間外でも法人等の職務の範囲内であれば該当する。問題になるのは大学関係者の著作物、東北大学N教授の場合。 ④法人等が自己の著作の名義の下に公表 現に法人等の名義で公表されたものでなくても、将来、法人等の名義で公表を予定しているものも含む。 将来とも公表の予定がないものについては争いがあるが、コンピュータプログラムについては、この公表の要件を不要とする法改正で解決。 ⑤その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない 別段の定めとは、著作物作成時に存在する法人等と被用者の間の契約や勤務規則に①乃至④の要件に合致しても法人等が著作者とならないの規定が存在している場合。個々の著作物の作成時毎に別段の定めは不要。 (3)プログラムの著作物に関する特例 15条2項 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。 プログラムは、多数の従業員により組織的に作成されるも、公表を全く予定せず或いは無名著作物や他人名義で公表される場合も多く、「法人等が自己の著作の名義の下に公表」を要件することは実態にそぐわないため昭和60年改正法で規定された。 但し、プログラム開発に伴う使用マニュアル等には適用されないので法人等の著作物にするには前記①乃至⑤の要件が必要になる。 (4)職務著作の効果 法人等が原始的に職務著作の著作者となり、著作者としての全ての権利を取得する。 53条1項 法人その他の団体が著作の名義を有する著作物の著作権は、その著作物の公表後50年(その著作物がその創作後50年以内に公表されなかつたときは、その創作後50年)を経過するまでの間、存続する。 プログラムに関する職務著作物についても同様(53条3項) 3.映画の著作物の著作者・著作権者 (1)はじめに 映画は、脚本、映像、音楽等様々な素材を含む総合芸術で、創作に多数の者が関与するので権利関係を明確に規定する必要がある。 16条 映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を相当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りでない。 更に映画の製作には多大の資本と労力が必要で、映画の製作に直接関与せずとも、自ら映画製作を発意し、制作費を支出し、配給を行うなど映画製作全般に責任を有する者もいる。その場合、 29条1項 映画の著作物(第15条第1項、次項又は第3項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。 他方、近代映画の多くは、映画製作会社その他の法人の発意のもとでその従業員であるプロデューサー、映画監督、カメラマン等で制作される場合があり、この場合、職務著作(15条1項)として当該法人等が映画の著作者となる。 16条、29条は職務著作規定が適用されない場合の映画の著作物に関する規定である。 (2)映画の著作物の著作者 16条 映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を相当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りでない。 「全体的形成に創作的に寄与した者」とは、演出家(プロデューサー)、監督、カメラマン、美術監督等の共同著作となる。 (3)映画の著作物の著作権者 29条1項 映画の著作物(第15条第1項、次項又は第3項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。 映画製作者とは、2条1項10号の映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいい、映画製作会社や独立系プロダクションが該当する。いずれにしても「当該映画の著作物の製作に参加することを約束」について明確な契約を締結する必要がある。 以上:2,442文字
|