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平成16年12月15日(水):初稿 平成17年 1月 8日(土):更新 |
第2節 知的財産権侵害訴訟の構成の一般的パターン 1 法的三段論法と侵害の有無の事実認定 (1)三段階の過程 ① 事実の確定作業 … 侵害対象物であるイ号の特定と損害の確定 ② 法規の選定作業 … 知的財産権諸法 ③ 法規のあてはめ作業 … 権利とイ号との対比作業 (2)法規のあてはめ作業 <特許> イ号が「特許請求の範囲」に含まれるかという場面の問題 <意匠> イ号が意匠の要部を共通にしているかという場面の問題 <商標> イ号に「類似性」があるかという場面の問題 2 知的財産権侵害訴訟の構成の一般的パターン (1)一般的構成 ① 権利の特定 ② 当該権利の特徴 ③ イ号の特定 ④ イ号の特徴 ⑤ 両者の対比 ⑥ 差止請求 ⑦ 損害 ⑧ 信用回復(謝罪広告) (2)①②権利 <特許権・実用新案権> 技術の保護を対象領域とする <意匠権> 物品の外観に表れたデザインの保護を対象領域とする <商標権> 商品やサービスに関するマークの保護を対象とする <不正競争防止法> 登録の有無とは関係なく著名な又は周知のマークを保護し、あるいは形態模倣等を排除しようとする <著作権> 思想感情の創作的な表現物の保護を対象とする (3)3つのステップ 第1 原告側の権利の存在・帰属を明らかにする段階 ① 特許・実用新案・意匠・商標 … 登録されているので作業は容易 ② 不正競争防止法 … 侵害の前提となる権利自体があらかじめ存在しているわけではなく、相対的判断となる 第2 侵害物(イ号)の特定作業 ① 侵害物を文章として特定する必要 ② 意匠や商標は写真や図面によってイ号自体の存在・特徴は明瞭であるが、デザインの構成や特徴等を訴状の中で文章として説明しておく必要がある 第3 原告側の権利とイ号との対比・比較の作業の段階 ① 特許 … イ号が特許の技術的範囲すなわち「特許請求の範囲」に属するか ② 意匠 … イ号が原告の意匠の類似範囲内にあるか イ号が原告の「意匠の要部」を具備しているか ③ 商標 … イ号が原告の商標と類似しているか ④ 不正競争防止法(2条1項1号周知表示混同惹起行為事案) … イ号が周知標章と類似混同するおそれがあるか ⑤ 著作権(複製権を例)… 複製の同一の範囲内にあるか ↓ 権利侵害の心証を得た事案について、損害の審理あるいは信用回復(謝罪広告)の要否の審理に入る 第3節 知的財産権侵害訴訟の特徴 民事訴訟との相違 1 専門的性格を有する 2 訴訟のパターンは、知的財産権の内容と侵害対象物(イ号)との対比という形をとる 対比は、文章によって行われる 3 原告の勝訴率が低い 第4節 計画審理の状況 計画審理による訴訟運営がなされている <留意点> ① 侵害論と損害論の審理区分の明確化 ② 時期に後れた攻撃防御方法の却下が発動される場合も (損害論に入った後の侵害論主張立証) ③ 被告側 認否だけでは足りず、積極的に自らの主張を明らかにして反論、反証することが必要 ④損害論 損害の法的根拠を明らかにする (これについても被告は単純な否認だけでは許されない) 以上:1,512文字
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