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第1章 知的財産権訴訟の構造 小幡

平成16年12月15日(水):初稿 平成17年 1月 8日(土):更新
第1章 知的財産権訴訟の構造

第1節 知的財産権法とは
 1 知的財産権を構成する諸法
 (1)「知的財産基本法」 ~2002年11月27日成立~
知的財産の創造,保護及び活用に関し,基本理念及びその実現を図るために基本となる事項を定め,これらに関する施策を集中的かつ計画的に推進することを目的とする。
第15条に、国は,訴訟手続の充実及び迅速化等のため,必要な施策を講ずる等の内容の規定あり。
→ 理念を規定したものにすぎない。
 (2)主な関連法規
① 特許法 … 発明(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)の保護及び利用を図ることにより,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とする
② 実用新案法 … 物品の形状,構造又は組合わせに係る考案(自然法則を利用した技術的思想の創作)の保護及び利用を図ることによりその考案を奨励し,もってお産業の発達に寄与することを目的とする
③ 意匠法 … 意匠(物品の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であって,視覚を通じて美感を起こさせるもの)の保護及び利用を図ることにより,意匠の創作を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とする
④ 商標法 … 商標(文字,図形,記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合)を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする
⑤ 不正競争防止法 … 事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため,不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ,もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする
⑥ 著作権法 … 著作物並びに実演,レコード,放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め,これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ,著作者等の権利の保護を図り,もって文化の発展に寄与することを目的とする

 2 知的財産権諸法の相互関係
関係諸法が絡み合って問題となることが常態化
関係諸法相互の関連性を考慮することが大切
  <例> A社 製造・販売 キャラクター人形
B社 A社によく似た人形を製造・販売
①特別な方法・装置によって製造されている場合 → 特許権等の問題
②人形のデザインが斬新なものである場合 → 意匠権の問題
③人形の形態が周知のもの・形態模倣の場合 → 不正競争防止法の問題
④人形に製造標や販売標の付されている場合 → 商標の問題
⑤キャラクターが著作物の場合 → 著作権法の問題   等

 3 知的財産権諸法の捉え方
 (1)関係法 
「競争」に関係するルール
ルールの目指す法目的 = 「公正な競業秩序の維持」と「競争の促進」
→ ここから知的財産関係法全体を理解する視点が必要
 (2)独占禁止法との関係
知的財産権法 … 私人に知的無体物について、原則として独占的排他権を付与することで不正競業者の只乗りを防ごうとするもの
→ 私人間で個別に処理「独占」を認める
独占禁止法 … 公正取引委員会に市場の競争阻害要因を除去させることで、市場の競争の促進を図ろうとするもの 
→ 競争のフィールドの環境整備によりアンフェアな競争を防止する 
→ 「独占」を排除する
  ◎ 自由競争(営業の自由)の限界はどこまでか,という観点において相互に共通する

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