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ファクタリング(債権買取)取引を消費貸借と認めない地裁判決紹介1

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令和 3年 3月30日(火):初稿
○原告会社が、被告会社に対し、(1)主位的に、被告との間で債権譲渡名目で行った取引(ファクタリング取引)は金銭消費貸借に当たるところ、原告が支払った金銭のうち利息制限法所定の制限利率を超える部分は同法1条により無効であるから、同部分は被告が法律上の原因なくして取得したものであり、かつ被告は同利得の当時、法律上の原因がないことについて悪意であったとして、不当利得に基づき、(2)予備的に、被告が原告の窮状につけ込んで優良債権を著しく安価で買い取ったうえ、原告を自転車操業に追い込んで不合理な取引を継続させた行為が暴利行為であって取引自体無効であるとともに不法行為にも当たり、原告は少なくとも利息制限法所定の利率を超える支払額相当の損害を被ったとして、不当利得又は不法行為に基づき、金員及び民法所定の年5分の割合による利息又は遅延損害金の支払を求めました。

○これに対し、本件取引がその実質において金銭を目的とする消費貸借に当たるために利息制限法が適用され、あるいは類推適用されると考えることはできず、原告の主位的請求原因事実(過払金返還請求)を認めることはできないとし、また、本件取引が暴利行為に当たり民法90条により無効であるとか、原告に対する不法行為に当たるということはできず、原告の予備的請求原因事実(暴利行為による不当利得又は不法行為)を認めることはできないとして、原告の請求をいずれも棄却した平成31年4月23日東京地裁判決(ウエストロージャパン)判断部分を紹介します。


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主    文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は,原告に対し,636万3877円及びこれに対する平成29年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,原告が,被告に対し,
(1)主位的に,被告との間で債権譲渡名目で行った取引(ファクタリング取引)は金銭消費貸借に当たるところ,原告が支払った金銭のうち利息制限法所定の制限利率を超える部分は同法1条により無効であるから,同部分は被告が法律上の原因なくして取得したものであり,かつ被告は同利得の当時,法律上の原因がないことについて悪意であったとして,不当利得に基づき,

(2)予備的に,被告が原告の窮状につけ込んで優良債権を著しく安価で買い取った上,原告を自転車操業に追い込んで不合理な取引を継続させた行為が暴利行為であって取引自体無効であるとともに不法行為にも当たり,原告は少なくとも利息制限法所定の利率を超える支払額相当の損害を被ったとして,不当利得又は不法行為に基づき,636万3877円及びこれに対する最終支払日の翌日又は不法行為日より後の日である平成29年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息又は遅延損害金の支払を求めた事案である。

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 主位的請求原因(過払金返還請求)について

(1) 証拠(甲4,15,16,乙1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,本件取引の経緯と内容について以下の事実が認められる。
ア 原告と被告は,平成29年2月13日に「債権売買基本契約書」(乙1。以下「本件基本契約書」といい,同契約書に係る契約を「本件基本契約」という。)にそれぞれ押印して,本件取引を開始した(乙1)。本件基本契約書は,契約の内容について,原告が現に有し又は将来取得する債権を被告に売却し,被告がこれを買い取ることに関して本件基本契約を締結すること,被告が原告から買い取る債権は,一定の条件を満たす原告の有する債権である必要があり,原告が被告に対する債権の売却を希望する際には,当該債権の契約書等の資料や債務者に関する情報を提供しなければならないことを定め,さらに,原告が被告に対して債権を売却し,被告がこれを買い取る場合には,その都度本件基本契約書とは別の個別の契約書を作成するとされている(本件基本契約書(乙1)前文,1条1項及び2項並びに2条。以下,上記個別の契約書による合意を「本件個別契約」ということがある。)。

イ 原告と被告は,同日,本件基本契約書に基づいて被告が買い取った債権の回収事務等を被告が原告に委託することとし,「事務委託契約書」を作成した(乙2)。同契約は,原告が本件基本契約書及び本件個別契約に基づいて原告が被告に対して債権を売却したことを直ちに本件債務者に通知することを希望していないことに配慮して締結されたものであった(乙2・1条)。

ウ 原告と被告は,同日,原告が本件債務者より平成29年2月1日から同年3月31日までの間に支払を受けるべき報酬債権のうち340万円を,代金290万円で売買する旨の「債権売買契約書」を作成し,これに従って被告は,同年2月14日,原告に対し,279万9365円を支払い,原告は,同月28日,被告に対し,本件債務者から回収した340万円を支払った(甲15,16,乙3)。

エ 原告と被告は,平成29年5月29日,原告が本件債務者より同6月1日から同年7月31日までの間に支払を受けるべき報酬債権のうち840万円を,代金730万円で売買する旨の「債権売買契約書」を作成し,これに従って被告は,同年5月31日,原告に対し,729万9800円を支払い,原告は,同年6月30日,被告に対し,本件債務者から回収した840万円を支払った(甲4,15,16)。

オ 原告は,いずれも被告に対し,平成29年2月28日頃,本件債務者に対する473万円の債権を代金約410万円で譲渡し,同年3月31日頃,本件債務者に対する633万円の債権を代金約550万円で譲渡し,同年4月28日頃,本件債務者に対する748万円の債権を代金約650万円で譲渡し,同年6月30日頃,本件債務者に対する1050万円の債権を代金約910万円で譲渡した(甲15,16,弁論の全趣旨)。

(2)
ア 利息制限法は,「金銭を目的とする消費貸借における利息の契約」について約定利率を制限するところ,上記(1)で認められる事実からすれば,本件取引に係る本件基本契約は,原告が被告に対して原告の有する債権を売却する取引を行うこととしてその一般的な条件を定めているところ,実際にも本件基本契約に従って本件個別契約が締結され,原告と被告との間で対象債権を特定した上,売買代金額を合意して取引がされているということができるから,本件取引は,原告の有する売掛債権を被告に売買する債権譲渡取引であることが明らかであって,利息制限法1条の「金銭を目的とする消費貸借」とは明らかにその法的性質を異にする取引であるというべきである。


(ア) この点について原告は,
①本件取引においては本件債務者の信用とは関係なく,実質的に借主である原告の信用状況のみが判断されて取引に至っていること,
②金銭のやり取りは,本件債務者の関与しないところで,消費貸借と同様に原告と被告の間でだけなされていること,
③契約上,譲渡にかかる売掛債権の回収リスクを原告のみが負っている点で,そのリスクを譲受人が負担すべき債権譲渡取引と異なることから,本件取引は実質的には金銭を目的とする消費貸借であって,利息制限法が適用又は類推適用されるべきである旨
主張する。

(イ) そこで,上記①の主張(原告の信用状況のみを判断していること)について検討するに,証拠(甲12,29)によれば,被告は,同社のホームページ上で,中小企業に対する金融サービスの一つとしてファクタリング取引を挙げていること,本件取引が開始された平成29年2月頃には,原告は銀行預金口座を差し押さえられたり,3000万円ほどの負債を抱えて経営に行き詰まっていたため,被告にファクタリング取引を申し込んだことが認められ,そうすると,本件取引が原告に対する金融を目的とするものであることは認められるものの,他方,証拠(甲13,乙1)によれば,本件基本契約において,原告は,被告に対し,本件債務者に関する資料及び情報,原告と本件債務者との過去の取引の状況の分かる資料及び情報の提供義務を負っていること(1条2項①及び②),被告は,平成29年2月10日,本件取引を開始するに当たって原告に対し,原告自身の財務状況等を示す資料とともに,本件債務者に対する直近の売上集計や今後2か月の売上見込み,月別の入金実績等の資料を持参するよう求めていたことが認められ,そうすると被告が本件債務者の信用状況について全く審査等を行わないまま本件取引を開始したものとはいい難い。したがって,原告の上記①の主張を採用することはできない。

(ウ) また,上記②の主張(金銭のやり取りが原告と被告間でのみされていること)について検討するに,確かに証拠(甲15,16)によれば,原告及び被告間の金銭のやり取りは,被告が原告に対して本件取引に係る譲渡代金を振り込んで支払い,そのほぼ1か月後に原告が被告に対して譲渡の対象債権に係ると考えられる金銭を振り込んで支払っていることが認められるものの,被告が原告に対して上記譲渡に係る債権の回収事務を委託していたことは上記認定((1)イ)のとおりであるし,また,証拠(甲15,16)によれば,上記原告が被告に対して振り込んで支払っていた金銭は,振込当日に本件債務者から原告に対して振り込まれた金銭であることが認められ,そうすると,上記金銭のやり取りから直ちに,原告及び被告間でのみ貸付けと返済が行われていたと評価することは困難であって,むしろ,原告が,被告から委託を受けた譲渡の対象債権の回収事務を遂行して回収された金銭を被告に支払っていたものと見るほかないというべきである。したがって,原告の上記②の主張を採用することはできない。

(エ) さらに,上記③の主張(債権の回収リスクを原告のみが負っていること)について検討するに,証拠(乙1)によれば,本件基本契約は,本件個別契約の締結後は,被告において本件個別契約に係る債権を債務者から回収するものとし,本件個別契約に係る債権の全部又は一部が債務者の債務不履行,支払不能又は支払停止により取立不能とされる場合においても,原告が本件基本契約に違反した場合を除き,原告は被告に対して何らの責任を負わない旨定めている(2条5項)ことが認められ,そうすると,本件取引において,譲渡に係る債権の回収リスクを原告のみが負っているということは困難というほかない。

確かに,本件取引においては,被告から原告に対して譲渡に係る債権の回収事務が委託されていることは上記認定((1)イ)のとおりであるから,上記規定はそのまま本件取引に適用されるわけではないと考えられるものの,もともと上記回収業務の委託は,原告が債権譲渡通知が被告から債務者にされることを希望しなかったことに配慮して合意されたものであることも上記認定((1)イ)のとおりであることからすると,被告が,上記回収業務の委託によってことさらに原告にのみ譲渡に係る債権の回収リスクを負わせたとまでいうことは困難である。

 原告は,本件基本契約は,原告の責任を著しく加重し,また被告に広範な事由による解除を認めた上,解除の場合には原告に譲渡代金の返還義務や遅延損害金の支払義務を負わせることによって,被告に回収リスクが及ばず,必ず回収できるように仕組まれている旨主張する。

 そこでこの点について検討するに,証拠(乙1)によれば,本件基本契約には,以下aないしeのように定められていることが認められる。
a 原告は,本件個別契約の締結後も,本件個別契約に係る債権の発生の原因となる契約において原告が債務者に対して負担する一切の債務につき履行の責任を負い,かつ,当該契約に関して債務者又は第三者から何らかの請求を受けた場合には,その理由の如何に関わらず原告の責任と費用においてこれに対処しなければならない(2条6項)。

b 被告は,原告が,本件個別契約に係る債権の発生原因である契約の変更,債権の免除又は放棄,第三者に対する譲渡や担保権の設定等被告の権利行使を妨げる行為をした場合,原告が本件個別契約に係る債権の発生原因となる契約において債務者に対して負担する債務の履行を怠った場合,原告が本件個別契約に係る債権について債務者が履行の全部又は一部を拒み得る抗弁事由が発生することとなる行為をした場合,本件個別契約に係る債権の債務者が何らかの抗弁事由をもって被告に対抗した場合,あるいは,被告が債務者又は第三者若しくはその双方に対して債権譲渡を対抗することができない場合などには無催告で本件個別契約を解除することができる(6条1項)。

c 被告が6条1項に基づいて本件個別契約を解除した場合には,原告は被告に対して本件個別契約に基づいて原告に支払われた譲渡代金を返還する義務を負い,かつ,本件個別契約締結の時から支払済みまで年15パーセントの割合による遅延損害金の支払義務を負う(6条2項及び3項)。

d 被告が6条1項に基づいて本件個別契約を解除した場合の原状回復請求権等を担保するため,原告が本件債務者に対して有する現在及び将来の債権を被告に対する譲渡担保に供する(6条4項)。

e 原告が被告に対して負う金銭債務の履行を1回でも遅滞したとき,あるいは本件基本契約又は本件個別契約その他の原告及び被告間の契約に違反したときは,被告は本件基本契約を無催告で解除できる(7条1項1号及び2号)。

 しかしながら,上記各規定の内容は,いずれも本件個別契約に基づき譲渡された債権について,原告自身によるこれと矛盾する処分行為を禁止したり,本件債務者から抗弁をもって対抗された場合に備えたりするものと考えられ,上記各規定が,債権の譲渡人としての原告の法的責任をことさらに加重しているとか,被告に不必要なほどに広範な解除事由を定め,更に解除された場合の原告の義務を不必要に拡張するなどして被告が回収リスクを負わないように仕組んでいるということは困難であって,結局のところ,原告の上記③の主張を採用することはできない。

(3) 以上から,本件取引がその実質において金銭を目的とする消費貸借に当たるために利息制限法が適用され,あるいは類推適用されると考えることはできず,原告の主位的請求原因事実(過払金返還請求)を認めることはできない。

2 予備的請求原因(暴利行為による不当利得又は不法行為)について
(1) 本件取引において,原告は,いずれも被告に対し,平成29年2月13日に本件債務者に対する340万円の債権を代金290万円で譲渡し,同年2月28日頃,本件債務者に対する473万円の債権を代金約410万円で譲渡し,同年3月31日頃,本件債務者に対する633万円の債権を代金約550万円で譲渡し,同年4月28日頃,本件債務者に対する748万円の債権を代金約650万円で譲渡し,同年5月29日,本件債務者に対する840万円の債権を代金730万円で譲渡し,同年6月30日頃,本件債務者に対する1050万円の債権を代金約910万円で譲渡したことは前記認定事実(2(1)ウないしオ)のとおりであり,証拠(甲15,16)によれば,上記いずれの取引も,本件債務者から原告に対して入金があったその日に原告から被告に対して上記各譲渡に係る債権額の振込みがされ,同日に被告から原告に対して振込みがされることにより行われていることが認められる。

(2) 原告は,本件取引が金銭消費貸借に当たることを前提に,本件取引における譲渡代金と譲渡に係る債権との差額が利息に当たり,貸付け(譲渡代金の支払)から返済(原告が回収した債権額の支払)までの期間をおよそ1か月とすると,利息制限法所定の制限利率の約10倍以上の高利をとっていることになるから暴利行為である旨主張するけれども,本件取引をもって金銭消費貸借と評価することができないことは主位的請求原因に対する前記判断のとおりであるし,本件個別契約における各譲渡代金額が,譲渡に係る債権額に比して著しく低額であるともいい難い。

また,原告代表者は,被告の事務所を訪問して本件取引を開始した際,被告代表者が「いわゆるヤクザの風体」であったとか,その後にしつこく取引の勧誘の電話やメールがあった旨陳述する(甲29)けれども,これをもって直ちに,被告が原告に対して,債権額や本件債務者の信用状況に比して著しく低額な代金で本件個別契約を締結することを強要したり,あるいは執拗に勧誘して原告を誤信させたりしたということはできず,その外にこのような事情を認めるに足りる証拠もない。

 また,原告は,被告は原告の窮状につけ込んで自転車操業の状態に陥らせた旨主張する。原告が預金口座の差押えや多額の負債を抱えて経営に行き詰まっていたために被告にファクタリング取引を申し込んだことは前記認定(1(2)イ(イ))のとおりであるし,本件取引において,原告が,本件債務者からの入金のうち譲渡された債権額を被告に振込をしたその日に被告からの振込がされていたことは上記(1)の認定のとおりであり,これにより,被告からの入金額をもってその前の本件個別契約に係る債権額の支払に充てられていたこともあり得ると考えられるけれども,被告が原告の窮状につけ込んで本件取引を行っていたとか,ことさらに自転車操業の状態に陥らせたことまでを認めるに足りる証拠はないし,被告が原告に対して本件取引の開始や継続を強要したり,あるいは原告を誤信させていたりしたなどの事情を認めるに足りる証拠もないことは上記のとおりであって,原告の上記主張を採用することはできない。

(3) 以上から,本件取引が暴利行為に当たり民法90条により無効であるとか,原告に対する不法行為に当たるということはできず,原告の予備的請求原因事実(暴利行為による不当利得又は不法行為)を認めることはできない。

第4 結論
 したがって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却し,訴訟費用の負担について民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第41部 (裁判官 竹内努)
以上:7,465文字

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