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出資法違反貸付について不法原因給付を認めた簡裁判決紹介1

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令和 3年 1月 8日(金):初稿
○「出資法違反貸付について不法行為とした高裁判決紹介」の続きで、貸金業を営む原告が、金銭消費貸借契約に基づき被告に対して貸付金等の返済を求めた事案において、本件消費貸借契約の利息は、貸金業法42条の2第1項が規定する年109.8パーセントを超えるものであり、このような利息の契約をしたときは、消費貸借の契約は無効となるから、利息のみならず元本の返還も請求することはできないとして請求を棄却した平成16年11月10日東京簡裁判決(裁判所ウェブサイト)を紹介します。

○判決は「本件契約は,貸金業法42条の2第1項が規定する年109.8パーセント(平成16年がうるう年であることは顕著な事実である。)を超えることは明らかである。したがって,このような利息の契約をしたときは,当該消費貸借の契約は無効となるから,本件契約に基づいて,利息のみならず元本の返還を請求することはできない。」と表現し、民法第708条不法原因給付と表現はしていませんが、元本の返還を請求できない理由は「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。」との規定によるものです。

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主    文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 
 
事実及び理由
第1 請求

 被告は,原告に対し,57万4485円及び内金57万円に対する平成16年2月21日から支払済みまで年26.28パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 争いのない事実等
(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実を含む。)
(1) 原告は,金銭の貸付等を業とする会社である。

(2) 原告は,被告に対し,平成16年2月5日,150万円を次のとおりの約定で貸し付けた。
ア 支払方法
 平成16年2月から平成20年12月まで毎月20日に元金1万円と経過利息を支払い,最終弁済日である平成21年1月20日に残元金91万円と経過利息を支払う。
イ 利息 年21.9パーセント
ウ 遅延損害金 年29.2パーセント
エ 特約
(ア) 期限前弁済禁止特約
 借入日から48か月間は,元本等を利用するものとし,一括弁済できない。
(イ) 期限の利益の喪失
 被告は,平成16年2月6日までに原告が適正と認める連帯保証人2人を立てるものとし,被告が同日までに上記連帯保証人2人を立てることができないとき,又は上記分割金の支払を1回でも怠ったときは,当然に期限の利益を失う。
オ 預り金
 原告は,平成16年2月9日まで貸付金のうち60万円を預かり,上記特約が履行されなかったときは,これを貸付金の弁済に充当する。

(3) 原告は,平成16年2月5日,上記貸付金のうち60万円を預かり,融資諸費用として33万円のほか1万5750円を受領した。

(4) 被告は,平成16年2月20日の第1回弁済期を過ぎても約定の分割金の弁済をしない。

2 争点及びこれに対する当事者の主張
(1) 争点

 本件契約の貸付金利が貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)第42条の2第1項に規定する金利を超えるか否か

(2) 原告の主張
 本件契約の金利は,次の理由により,貸金業法42条の2第1項に規定する年109.5パーセント(うるう年のときは,年109.8パーセント)を超えるものではなく,本件契約は無効とならない。
ア 本件契約については,貸付期間が5年とされ,借主において,少なくとも48か月は,期限前弁済ができないから,被告が約旨どおりに期限までに連帯保証人2人を立てた上で,その後5年間(少なくとも48か月),被告の原告に対する本件契約上の債務につき,各支払期日における元利金の返済が継続していくことが予定されている。

イ 一般に,金銭消費貸借契約において,利息の天引きがある場合において,金銭消費貸借契約は,天引後の受領額ではなく,天引前の金額を元本として成立するが,実質金利を算出するには,次の算式により計算されるものとされ,実質金利算定における実質元本については,天引額を控除した後の実質的に使用可能な元本を基礎にすべきものとされている。
 実質年率=(徴収利息額÷利用可能な期間÷実質元本額)×100

ウ 以上の前提に立てば,原告が被告から本件契約時に受領した融資諸費用33万円を「みなし利息」とし,みなし利息控除後の実質元本額117万円(57万円+60万円)として,実質金利を算定しても,別紙1及び同2のとおり年28.23パーセントにとどまる。

(3) 被告の主張
 本件契約の金利は,次の理由により,貸金業法42条の2第1項が規定する年109.5パーセント(うるう年のときは,年109.8パーセント)を遙かに超えるものであって,本件契約は無効となる。
ア 金銭消費貸借契約の金利は,契約内容によって確定するから,本件契約の元本は,150万円とされるべきであり,これを基準として算定すべきであるが,被告が連帯保証人2人を立てる条件を充たせなかった場合には,預り金60万円が元本に算入されるから,これを控除した90万円が元本とされる。

イ 契約諸費用の33万円のほか1万5750円も,みなし利息(天引利息)と解される(利息制限法第3条本文)。

ウ 天引利息である33万円及び1万5750円の「相当期間」は,次の理由により,被告が前記条件を充たせなかった場合はその時点(平成16年2月6日)で,充たせた場合は第1回の返済日(平成16年2月20日)までと解される。
 (ア) 「後日連帯保証人をたてる確約書」(甲第3号証)は,被告が連帯保証人2人を立てることができない場合には期限の利益を失い,150万円を一括して支払うという内容になっている。そして,60万円は預り金とされている(甲第5号証)から,被告が期限の利益を失った場合,元本に算入されるが,33万円と1万5750円は融資諸費用として授受されているから期限の利益を失っても元本に算入されないことは明らかである。したがって,本件契約によると,被告が期限の利益を喪失した場合,期限の利益喪失までの期間の利息として33万円及び1万5750円の支払を余儀なくされる。

 (イ) 「金銭消費貸借契約書」(甲第1号証)は,被告において,1回でも利息の支払を怠れば,直ちに債務金額150万円を一括で支払うという内容であるから,前記(ア)同様,被告が利息の支払を怠れば,33万円及び1万5750円の支払を余儀なくされることになる。

第3 争点に対する判断
1 平成15年の改正で貸金業法42条の2が新設されたのは,貸金業者の中には,登録業者であるかどうかにかかわらず,高金利の貸付けを行い,また執拗な取り立てを行うなどして,債務者やその家族等を窮地に追い込むという者もおり,これが深刻な社会問題となったため,これらの貸金業者の活動を規制し,高金利の貸付けによる収益を得させないようにするためである。このような立法趣旨からすれば,貸金業者が,同項所定の金利を超えることとなる可能性がある利息の契約をすれば,その消費貸借契約は無効となるというべきである。そうすると,費用等の名目で多額の利息を天引きした上,連帯保証人を立てるなどの条件を付し,その条件を充たすことができないときは,期限の利益を喪失し,元本,利息などを一時に支払う旨の契約を締結した場合も,当然同項の適用を受け,その金利が計算上同項の利率を超えるときは,当該消費貸借契約は無効となると解される。

2 本件においては,原告が被告に対し,平成16年2月5日に150万円を貸し付け,その際,原告が上記貸付金のうち融資諸費用の名目で33万円及び1万5750円を受領し,預り金として60万円を預かっているから,実質的に被告が受け取った金員は,55万4250円となる。そして,被告において,平成16年2月6日までに原告が適正と認める連帯保証人2人を立てることができない場合には,期限の利益を失い,上記貸付金150万円から預り金60万円を控除した90万円を弁済しなければならない。

 そうすると,連帯保証人2人を立てられず,期限の利益を喪失した場合,被告が実質元本を利用することが可能な期間は,貸付日である2月5日(貸付日当日も被告が元金を利用することができるから,利息が発生する。)と連帯保証人2人を立てる期限である2月6日の2日間ということになり,被告は,この2日間で,約定利息の年21.9パーセントの割合による金員と上記の融資諸費用名目の33万円及び1万5750円とを利息として支払うことになる。

なお,原告は,この点に関し,上記1万5750円については,「契約締結費用・債務弁済費用(公正証書作成費用)」である旨主張するが,貸金業法第42条の2第2項が準用する出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)第5条7項には,利息制限法第3条ただし書のような除外規定がないから,融資諸費用名目の33万円はもとより,1万5750円についても,いわゆるみなし利息と解される。

そして,これを前提に貸金業法第42条の2第2項(出資法第5条5項)に基づいて,本件契約の金利を計算すると,次のとおりとなる。
① 150万円(名目元本額)-60万円(預り金)=90万円(交付金額)
② 90万円(交付金額)-33万円(融資諸費用)-1万5750円(融資諸費用)=55万4250円(実質元本額)
③ 55万4250円(実質元本額)×2/366×0.219(平成16年2月5日から同月6日までの約定利息)=663円
④ (33万円+1万5750円+663円)(徴収利息額)÷2/366(利用可能な期間)÷55万4250円(実質的元本額)×100=約1万1438パーセント

3 以上によれば,本件契約は,貸金業法42条の2第1項が規定する年109.8パーセント(平成16年がうるう年であることは顕著な事実である。)を超えることは明らかである。したがって,このような利息の契約をしたときは,当該消費貸借の契約は無効となるから,本件契約に基づいて,利息のみならず元本の返還を請求することはできない。

 なお,原告は,債務者が連帯保証人を立てられず期限の利益を失った場合や連帯保証人を立てたが最初の利息の支払日に支払を怠り期限の利益を失ったような場合には,利息等について事後的に清算処理がなされた例もあり,本件においてもそのような清算処理が予定されていたから,同条の金利を超えるものではない旨主張する。しかし,同項の金利を超える契約をしたかどうかが問題であって,その後に清算処理をしたかどうかは問題ではないばかりか,本件契約において,そのような清算処理に関する合意があったことを認めるに足りる証拠はない。 (裁判官 寺内正三) 
 
 〈以下省略〉 
 
以上:4,469文字

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