平成28年 4月 1日(金):初稿 |
○保証人が主たる債務者に対して取得した求償権の消滅時効の中断事由がある場合であっても、共同保証人間の求償権について消滅時効の中断の効力は生じないとした平成27年11月19日最高裁判決(判タ1421号108頁、判時2282号63頁)全文を紹介します。 ○第一審平成25年2月28日大津地裁判決(金商 1481号24頁<参考収録>、ウエストロー・ジャパン)は、消滅時効中断効を認め、控訴審平成25年7月9日大阪高裁判決(金商 1481号24頁<参考収録>、ウエストロー・ジャパン)では、中断効果を否認し、一審と控訴審で判断が分かれていたものを最高裁は中断効果を否認して決着を見ました。 ○控訴審平成25年7月9日大阪高裁判決(金商 1481号24頁<参考収録>、ウエストロー・ジャパン)での事案の概要は次の通りです。 第2 事案の概要 1 本件は,a株式会社(以下「a社」という。)と株式会社滋賀銀行(以下「滋賀銀行」という。)との間で,a社を借主,滋賀銀行を貸主として,いずれも平成2年8月14日に締結された7210万円の金銭消費貸借契約(以下「本件第1消費貸借契約」という。)及び1280万円の金銭消費貸借契約(以下「本件第2消費貸借契約」という。)に基づくa社の滋賀銀行に対する債務につき,滋賀銀行に対し,a社の委託を受けて保証する旨約した被控訴人が,本件第1消費貸借契約及び本件第2消費貸借契約に基づくa社の滋賀銀行に対する債務を代位弁済したと主張して,a社と滋賀銀行との間の一切の取引に関してa社が滋賀銀行に対して負担する債務につき,滋賀銀行に対して,B(以下「B」という。)と共に連帯保証する旨約した控訴人に対し,共同保証人間の求償権(民法465条1項)に基づき,次の(1)及び(2)の控訴人の負担部分の支払を求めた事案である。 (1) 被控訴人が滋賀銀行に対して本件第1消費貸借契約に基づく債務につき代位弁済した7429万6827円(元金7210万円と利息219万6827円との合計である。)の3分の1である2476万5608円(元金2403万3333円,利息73万2275円)及びうち元金部分の2403万3333円に対する代位弁済日の翌日である平成6年2月24日から支払済みまで約定の範囲内の年14パーセントの割合による損害金 (2) 被控訴人が滋賀銀行に対して本件第2消費貸借契約に基づく債務につき代位弁済した1319万0005円(元金1280万円と利息39万0005円との合計である。)の元金部分1280万円の3分の1である426万6666円に対する代位弁済日の翌日である平成6年2月24日から平成13日5月16日までに生じた年14パーセントの割合による約定損害金431万8801円 原審は,被控訴人の請求を全部認容したため,控訴人がこれを不服として控訴した。 以下、最高裁判決全文です。 ***************************************** 主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人○○○○の上告受理申立て理由第1について 1 本件は,共同保証人の1人であり,主たる債務者の借入金債務を代位弁済した上告人が,他の共同保証人である被上告人に対し,民法465条1項,442条に基づき,求償金残元金と遅延損害金の支払を求める事案である。被上告人が上記求償権の時効消滅を主張するのに対し,上告人は,主たる債務者に対して取得した求償権の消滅時効の中断により共同保証人間の求償権についても消滅時効の中断の効力が生じていると主張して争っている。 2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1) 被上告人は,Aから委託を受け,平成元年4月10日,株式会社B銀行との間で,AがB銀行に対して負担する一切の債務を連帯保証する旨の契約をした。 (2) ア Aは,平成2年8月14日,B銀行から,いずれも弁済期を平成3年7月31日,利息を年7.7%,遅延損害金を年14%とする旨の約定で2口合計8490万円を借り入れた。 イ 上告人は,Aから信用保証の委託を受け,平成2年8月13日,B銀行との間で,Aの上記アの各債務を連帯保証する旨の契約をした。 (3) 上告人は,平成6年2月23日,B銀行に対し,上記(2)アの残債務全額を代位弁済した。 (4) ア Aは,平成6年12月30日から平成13年5月16日までの間,上告人に対し,上記(3)の代位弁済により発生した求償金債務を一部弁済した。 イ 上告人は,平成14年5月20日,Aに対し,上記アの求償金の支払を求める訴訟を提起し,同年9月13日,上告人の請求を認容する判決が言い渡され,その後同判決は確定した。 (5) 上告人は,平成24年7月25日,本件訴訟を提起した。 3 原審は,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権と共同保証人間の求償権との間に主従の関係があるとはいえないから,Aに対する求償権の消滅時効の中断事由がある場合であっても,被上告人に対する求償権について消滅時効の中断の効力が生ずることはないなどとして,上告人の請求を棄却した。 4 所論は,共同保証人間の求償権は,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権を担保するためのものであるから,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権の消滅時効の中断事由がある場合には,民法457条1項の類推適用により,共同保証人間の求償権についても消滅時効の中断の効力が生ずると解すべきであるというものである。 5 民法465条に規定する共同保証人間の求償権は,主たる債務者の資力が不十分な場合に,弁済をした保証人のみが損失を負担しなければならないとすると共同保証人間の公平に反することから,共同保証人間の負担を最終的に調整するためのものであり,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権を担保するためのものではないと解される。 したがって,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権の消滅時効の中断事由がある場合であっても,共同保証人間の求償権について消滅時効の中断の効力は生じないものと解するのが相当である。 6 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 山浦善樹 裁判官 櫻井龍子 裁判官 池上政幸 裁判官 大谷直人 裁判官 小池裕) 以上:2,648文字
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