平成26年 5月11日(日):初稿 |
○「重畳的債務引受後債務者と引受人は連帯債務が原則との判例紹介2」の続きです。 債務引受とは、ある人が負っている債務を同一の債務を別の人(引受人)が債権者との合意によって承継することです。民法に直接の規定はありませんが、契約自由の原則上、当然に認められています。当初の債務者が当該債務を負わなくなる免責的債務引受(交替的債務引受、免脱的債務引受)と、当初の債務者が引き続き当該債務を負う併存的債務引け(重畳的債務引受、添加的債務引受け)の二種あります。 ○併存(重畳)的債務引受がなされた後の、当初債務者と引受債務者の債務の関係が問題になりますが、大審院判例時代から、連帯債務になると解釈されています。 大審院判例時代は、重畳的債務引受と言われており、私が有する2件の判例データベースでは、「併存的債務引受、連帯債務」で検索すると余り件数が出てきませんが、「重畳的債務引受、連帯債務」で検索すると多数の判例が出てきます。併存的債務引受と重畳的債務引受は全く同義です。 ○以下古い順に、重畳(併存)的債務引受と連帯債務に関する判例要旨を紹介します。 昭和3年5月2日大審院判決(評論全集17巻818頁) 時を異にする連帯債務の負担は、重畳的債務の引受である。 併存(重畳)的債務引受は、原債務者の意思に反するときでも、有効である。 昭和10年8月10日大審院判決(新聞3882号17頁、判例彙報46巻353頁) 重畳的債務引受においては、債務者全員間に連帯関係が成立する。 昭和10年11月27日大審院判決(判決全集1輯24号10頁) 債務を履行した連帯保証人は、主債務者の重畳的債務引受人に対して、その負担部分につき求償権を有する。 重畳的債務引受においては、債務者全員間に連帯関係が成立する。 昭和12年3月18日大審院判決(判決全集4輯6号6頁) 重畳的債務引受は、債権者と引受人間の契約によつて成立する。 重畳的債務引受があれば、それ以後原債務者と引受人とは連帯債務を負担する。 昭和41年12月20日最高裁判決(判タ202号108頁、判時475号33頁) 重畳的債務引受があつた場合には、特段の事情のないかぎり、原債務者と債務引受人との間に連帯債務関係が生ずるものと解するのが相当である。 ○最後に紹介した昭和41年12月20日最高裁判決(判タ202号108頁、判時475号33頁)は、私の扱っている上告事件で最重要参考判決になり、全文を紹介します。 **************************************** 主 文 原判決中、上告人ら敗訴の部分を破棄する。 前項の部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。 理 由 上告代理人○○○○の上告理由第二点について。 原審が確定したところによると、被上告人に対する原債務者A株式会社の本件貸金債務につき、上告人ら先代B人は昭和29年8月31日被上告人との間で重畳的債務引受の合意をしたところ、右原債務者の貸金債務は弁済期の翌日たる昭和27年1月1日より起算して5年の時効完成により昭和31年12月31日の経過とともに消滅したというのである。 重畳的債務引受がなされた場合には、反対に解すべき特段の事情のないかぎり、原債務者と引受人との関係について連帯債務関係が生ずるものと解するのを相当とする。本件について、原判決が右債務引受の経緯として認定判示するところによれば、上告人ら先代Bは本件貸金債務の原債務者A株式会社の解散後、同会社の清算人からその清算事務の一環として同会社所有不動産等を売却処分する権限を与えられてその衝に当つていたところ、その頃被上告人の代理人Cは右会社の清算人に対し本件貸金の履行を求めていたが、その債務存在の承認さえ得られなかつたので、右会社の前社長であり事実上清算事務の一部を担当していた右Bに対しその責を負うべきことを要求した結果、Bにおいて個人として右会社の債務につき重畳的債務引受をすることになつたというのであるから、これによつて連帯債務関係が生じない特段の事情があるとは解されず、したがつて、右原債務者の債務の時効消滅の効果は、民法439条の適用上、右原債務者の負担部分について債務引受人にも及ぶものと解するのを相当とする。 ところで、上告人らは、原審において、重畳的債務引受人として右原債務者の消滅時効の効果を援用しているものと解されるのに、原原判決は、右の点について、なんら審理判断を尽すことなく、上告人らの消滅時効の主張を排斥して右債務引受人たる上告人ら先代の債務の存在を認容した点に理由不備の違法があるものといわなければならない。 右の点を指摘する論旨は理由があるから、その余の論点について判断するまでもなく、原判決は上告人ら敗訴の部分について破棄を免れず、右部分につき本件を原審に差し戻すべきである。 よつて、民訴法407条1項を適用し、裁判官全員一致をもつて主文のとおり判決する。(柏原語六 五鬼上堅磐 田中二郎 下村三郎) 以上:2,045文字
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