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不動産売買での宅建業者業務は原則として媒介(仲介)

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平成25年 1月30日(水):初稿
○弁護士業務では、業務遂行過程で、お客様の不動産の売買を依頼されることがよくあります。典型的には債務者資産を売却等処分してお金に換えて債権者に配当する倒産整理業務ですが、その他にも例えば遺産分割で不動産を売却して売却金を分配する場合、事業拡張のために資金が必要になり、借家人が居る建物を売却する場合に借家人との明渡交渉と合わせて売却を依頼される場合等様々な例があります。

○これまでは弁護士自身が売却先を探すことはなく、売却先を探す業務は不動産仲介業をメイン業務とする宅建業者に依頼します。ですから弁護士稼業をしていると多くの宅建業者との付き合いが必要になります。また、弁護士から不動産売却物件を紹介して貰うことが多いと言うことで宅建業者から挨拶状を頂くこともよくあります。

○これまでなかなか買い手の見つからない不動産について、宅建業者自身に購入して貰うことが何度かありましたが、この宅建業者自身が売買する要件についての結構厳しい判例を見つけましたので紹介します。判例タイムズ1383号234頁に掲載された平成24年3月13日福岡高裁判決です。

○事案は、Xの母Aが、不動産会社Y1の担当社員Y2と協議して、所有不動産をY1に代金1500万円で売却することとなったところ、Y2は転売先を探し、Aの隣人Bから2100万円での買受申出を受け、Y2は、AY1間の1500万円での売買契約と、Y1B間の2100万円の売買契約を締結し、Y1は600万円差益を得ていたところ、A死亡後、この事実を知ったXは、Y1・Y2に対し、善管注意義務ないし誠実義務違反として主位的に不法行為に基づく損害賠償、予備的に債務不履行ないし不当利得として600万円の返還を求めて提訴したものです。

○提訴されたY1らは、Y1の1500万円での買い受けには、①スピード(契約成立・代金決済まで期間が短い)、②確実性(代金は即金一括払で確実、解除リスク低い)、③安心感(瑕疵担保責任等売却後の紛争発生リスクが低い)との合理性があり、何ら宅建業者としての義務違反はないと主張し、さらにY1らは、Xの提訴は不当訴訟だとして、各金50万円の損害賠償反訴まで提起し、第一審の福岡地裁平成23年10月7日判決は、X、Y1らの請求をいずれも棄却しました。

○この一審判決に不服としてXが控訴した結果が平成24年3月13日福岡高裁判決で、その結論概要は以下の通りです。
・顧客がその所有する不動産を売却する際に、宅建業者が、媒介ではなく直接買い受ける取引においては、媒介契約によらずに売買契約によるべき合理的根拠を具備する必要があり、これを具備しない場合には、宅建業者は、売買契約による取引ではなく、媒介契約に止めるべき義務がある。
・本件売買は、①スピードについては、Aの売却意向表明から売買契約締結まで半年以上経過し、②確実性については、本件売買契約とY1からBへの転売契約が同一日に行われており、Y1は本件売買をしない余地が残されており、③安心感については、本件売買契約にAの瑕疵担保責任免除条項もなく、転売契約でY1に有利な特約もあり、AB直接売買として場合と比較して本件売買がAに有利との事情はなく、本件売買の合理性を説明することはできず、Y1直接買受の合理的根拠は具備されていない。
・従ってY1らには直接買受の合理的根拠は具備されていないのに実行した過失があり、Xに対し不法行為責任があり、損害賠償額については、仲介手数料相当額金72万4500円を差し引いた527万5500円とこれに対する遅延損害金である。


○宅建業者の顧客からの直接買受に合理的根拠の具備を必要とするのは、宅建業法31条誠実義務と、同46報酬規制から導かれます。
第31条(業務処理の原則)
 宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない。
2 宅地建物取引業者は、第50条の2第1項に規定する取引一任代理等を行うに当たつては、投機的取引の抑制が図られるよう配慮しなければならない。
第46条(報酬)
 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。


○本件は、たまたま買受先が隣人Bだったので、その転売契約の内容がXに判明して、Y1ら600万円もの差益を得ていたことを知り得たため提訴に至ったものです。弁護士業務の経過で、宅建業者に直接お客様の不動産を買い受けて貰う場合には、その合理的根拠が具備されているかどうかを確かめないと、場合によっては弁護士も共同不法行為者にされる危険もありますので、注意が必要です。
以上:1,952文字

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