平成24年 8月11日(土):初稿 |
○「担保不動産収益執行の基礎の基礎」を続けます。 「担保不動産収益執行の基礎の基礎」に担保不動産収益執行がなされると「貸しアパート、貸しマンション等の使用収益権が全て債務者(所有者)から裁判所が認めた管理人(通常執行官とその下請の不動産管理会社)に移り、債務者はそれまで受領していた賃料が全く受領出来なくなり、賃料で生計を立てていた場合は死活問題になります。」と記載していました。そこで今回は、担保不動産収益執行によって収入源を絶たれて死活問題となる債務者側の救済方法備忘録です。 ○民事執行法はこの場合の救済策を用意しており,以下の規定です。 第98条(収益等の分与) 強制管理により債務者の生活が著しく困窮することとなるときは、執行裁判所は、申立てにより、管理人に対し、収益又はその換価代金からその困窮の程度に応じ必要な金銭又は収益を債務者に分与すべき旨を命ずることができる。 2 前条第2項の規定は前項の規定による決定について、同条第3項の規定は前項の申立て又はこの項において準用する前条第2項の申立てについての決定について準用する。 これは以下の条文と同様、債務者側の救済規定です。 第131条(差押禁止動産) 次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。 1.債務者等の生活に欠くことができない衣服、農具、家具、台所用具、畳及び建具 2.債務者等の1月間の生活に必要な食料及び燃料 3.標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭 ※政令とは民事執行法施行令で、以下の規定 (差押えが禁止される金銭の額) 第1条 民事執行法(以下「法」という。)第131条第3号(法第192条において準用する場合を含む。)の政令で定める額は、66万円とする。 (中略) 第152条(差押禁止債権) 次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の4分の3に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。 1.債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権 2.給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権 2 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の4分の3に相当する部分は、差し押さえてはならない。 (中略) ○これらの規定は強制執行により財産を失い生活が困窮する債務者を救済するもので担保不動産収益執行の場合、「強制管理により債務者の生活が著しく困窮することとなるとき」で、担保不動産収益執行により賃料債権を失う結果、債務者がその扶養家族を含めて生活が著しく困窮することがその要件です。債務者が行方不明であっても、その扶養家族の生活が困窮するときは、この要件に該当しますので、この申立が可能で、「生活が著しく困窮する」とは、生活保護法による生活基準ではなく、それまでの生活水準・生活状況等も考慮して判断されます。 ○民事執行法施行令での以下の継続的給付すなわち給料に関する差押禁止債権額を考慮すると、毎月の収益分与額は最低33万円かなとは思われますが、これにどれだけ加算されるかは、家族数、それまでの生活状況等がどれだけ考慮されるかにより、大変、難しい判断です。 第2条(差押えが禁止される継続的給付に係る債権等の額) 法第152条第1項各号に掲げる債権(次項の債権を除く。)に係る同条第1項(法第167条の14及び第193条第2項において準用する場合を含む。以下同じ。)の政令で定める額は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額とする。 1.支払期が毎月と定められている場合 330,000円 (中略) 2 賞与及びその性質を有する給与に係る債権に係る法第152条第1項の政令で定める額は、33万円とする。 以上:1,592文字
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