平成20年 3月13日(木):初稿 |
○給料の差押等民事執行についての定める民事執行法が平成15,16年に大改正がなされました。この改正での一番の目玉は養育費等扶養義務に関する執行方法について、それまでは貸金、売買代金等普通の債権と同様の定めで不便であったものをその特徴にあった合理的なものに変えたことでした。 ○実務で最も多い養育費債権での給料債権を例にとって説明します。Aは元夫Bに対し現在5歳のCのためにCが成年に達するまで毎月金5万円の養育料債権を持っています。Bがここ2ヶ月支払を怠り、遅滞分が10万円になったとしてその勤務先D社から毎月支給される月額手取り金30万円の給料を差押したいと考えています。 ○Bはこれまでの時々養育料の支払を怠りAが厳しく催告してようやく支払ってくることが良くありました。そこでAとしては支払遅れ分だけでなくCが成年に達するまでの将来の分を一気に差押て毎月給料から天引きされる形で確実に取得したいと思っています。 ○民事執行法第30条(期限の到来又は担保の提供に係る場合の強制執行)では「請求が確定期限の到来に係る場合においては、強制執行は、その期限の到来後に限り、開始することができる。」として、平成15年改正までは、期限の到来していない将来の養育費を一気に差し押さえることは出来ませんでした。そのため期限の到来を待つ必要があり、極端な場合、毎月給料差押申立をするという面倒なことをしなければなりませんでした。 ○これは面倒だと言うことで平成15年改正で民事執行法第151条の2が追加され「債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、第30条第1項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。」とされ、毎月5万円ずつCが成年に達するまで支払う養育費について、支払遅れ分がある場合は、成年に達するまでの分を一気に差し押さえることが出来るようになりました。これによってBが給料を得ている限り、養育費分は事実上給料からの天引きで確保できるようになりました。 ○民事執行法第151条の2の「確定期限の定めのある定期金債権」とは、養育費の他に夫婦間の婚姻費用、親子間の扶養料等がありますが、離婚に伴う財産分与や慰謝料について、数年間の期間を定めて毎月分割支払を約束した場合は含まれません。養育料や婚姻費用は金額が少額のことが多く将来分をまとめて差押する必要性が認められますが、財産分与は慰謝料は金額が多額になる場合もあり、一般の債権と同様に扱うべきとされています。 以上:1,085文字
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