令和 6年11月27日(水):初稿 |
○「相続財産管理人と相続財産清算人覚書-両者の違い」の続きです。令和3年改正令和5年4月施行相続法によってそれまでの相続財産管理人の制度は、相続財産清算人と名称が変わり、新たな相続財産管理人の制度が設けられたことを説明していました。 ○この新たに設けられた相続財産管理人は根拠は以下の条文です。 第897条の2(相続財産の保存) 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第952条第1項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。 2 第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。 ○この改正以前は、相続人が判明している場合で相続承認又は放棄までは民法第918条2項に「家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。」と規定され、限定承認がされた場合926条2項、相続放棄後次順位者が相続財産を始めるまでは940条2項で、準用されていましたが、相続人が相続承認後遺産分割前の段階での相続財産管理の規定がなかったため、相続財産適切管理を実現するため、統一的な相続財産管理制度を創設したのが民法897条の2で、これにより918条2項・926条2項・940条2項は削除されたと説明されています。 ○この統一的相続財産管理制度での相続財産管理人選任の要件は、相続財産保存の必要性があることで、相続人が一人だけで相続を承認したとき、相続人が数人で遺産分割協議が成立したとき、相続人不明で相続財産清算人が選任されたときは、相続財産保存の必要性がなくなったとして、相続財産管理人選任の要件はなくなります。なお、相続財産管理人・相続財産清算人いずれも不在者財産管理人についての民法27乃至29条が適用されて、103条保存行為を越える越える行為をするときは家庭裁判所の許可が必要です。 第28条(管理人の権限) 管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。 第103条(権限の定めのない代理人の権限) 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。 一 保存行為 二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為 ○この統一的な相続財産管理制度創設で家事事件手続法も以下の条文が加えられました。 第12節の2 相続財産の保存に関する処分の審判事件 第190条の2 相続財産の保存に関する処分の審判事件は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。 2 第125条第1項から第6項まで、第146条の2及び第147条の規定は、相続財産の保存に関する処分の審判事件について準用する。この場合において、第125条3項中「成年被後見人の財産」とあるのは、「相続財産」と読み替えるものとする。 第125条 家庭裁判所は、いつでも、第三者が成年被後見人に与えた(※相続財産含む)財産の管理に関する処分の審判事件において選任した管理者を改任することができる。 (中略) 6 民法第644条、第646条、第647条及び第650条の規定は、財産の管理者について準用する。 ○弁護士稼業について45年目ですが、これまで法改正以前の相続財産管理人(現在の相続財産清算人)選任申立は相当件数扱っていますが、今般創設された統一的相続財産管理のための相続財産管理人選任申立を依頼されたことは一度もなく、そのような制度があること自体失念していました。どのような場合この相続財産管理人選任が必要になるか、検討していきます。 以上:1,702文字
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