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死因贈与契約にも民法第1022条の準用を認めた最高裁判決紹介

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令和 6年10月17日(木):初稿
○不動産について、死因贈与契約をして仮登記をした場合、それで不動産の権利を完全に取得できますかとの質問を受けました。民法第1002条に「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」との規定があり、これが死因贈与契約に準用されるかどうかの問題です。

○単独行為である遺言で贈与する場合は遺贈と呼ばれ、民法第1022条でいつでも撤回できますが、契約である死因贈与は、他方の契約当事者の同意無くして撤回できるかどうかは、古くから肯定説と否定説とが対立し、学説の多数説と大審院の判例(大判昭16・11・15判例体系12Ⅱ107)は、肯定説をとっていましたが、我妻博士等の否定説も有力に主張されていました。

○この争いについて昭和47年5月25日最高裁判決(判タ283号127頁、判時680号40頁)が、死因贈与の取消については、民法1022条がその方式に関する部分を除いて準用されると解すべきであるして決着を付けました。

○事案は、以下の通りです。
・Xら6名(原告・控訴人・被上告人)はAの子であり、Y(被告・被控訴人・上告人)はAの妻
・Aは、生前、Yに対し、書面によつて本件不動産の死因贈与をしたが、Yとの関係が冷却し、死因贈与の取消をしたのち死亡
・Yは、右死因贈与に基づき仮登記仮処分を得て、本件不動産につき仮登記を経由
・Xらは、Yに対し、本件不動産について共有持分権の確認を求めるとともにYのなした右仮登記の抹消登記手続を訴求


○最高裁は、死因贈与は贈与者の死亡によつて贈与の効力が生ずるものであるが、かかる贈与者の死後の財産に関する処分については、遺贈と同様、贈与者の最終意思を尊重し、これによつて決するのを相当として、死因贈与については、遺言の取消に関する民法1022条がその方式に関する部分を除いて準用されると解すべきとしました。

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主   文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。

理   由
 上告代理人○○○○の上告理由第一点および第二点について。
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができ、この認定判断の過程に所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

 同第三点について。
 所論は、原判決には、死因贈与について遺言の取消に関する民法1022条の準用を認めた法令の解釈適用の誤りがあり、かつ、本件死因贈与は夫婦間の契約取消権によつて取消しえないものであると解しながら、右民法1022条の準用によつてその取消を認めた理由そごの違法がある、というものである。

 おもうに、死因贈与については、遺言の取消に関する民法1022条がその方式に関する部分を除いて準用されると解すべきである。けだし、死因贈与は贈与者の死亡によつて贈与の効力が生ずるものであるが、かかる贈与者の死後の財産に関する処分については、遺贈と同様、贈与者の最終意思を尊重し、これによつて決するのを相当とするからである。

そして、贈与者のかかる死因贈与の取消権と贈与が配偶者に対してなされた場合における贈与者の有する夫婦間の契約取消権とは、別個独立の権利であるから、これらのうち一つの取消権行使の効力が否定される場合であつても、他の取消権行使の効力を認めうることはいうまでもない。それゆえ、原判決に所論の違法は存しないというべきである。論旨は、独自の見解に立脚して、原判決を非難するものであつて、採用することができない。

(中略)

 よつて、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(岸盛一 岩田誠 大隅健一郎 藤林益三 下田武三)

以上:1,589文字

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