令和 4年 5月26日(木):初稿 |
○判例時報最新号2022年5月21号42頁に紹介されている母と当時9歳の子供との間で締結された被相続人父の遺産分割協議の有効性が、協議成立24年後に至り争われた珍しい事案である令和2年12月25日東京地裁判決(判時2513号42頁)を紹介します。 ○判例時報での紹介は「実父の遺産分割協議につき、家庭裁判所による特別代理人の選任がなかったとし、また、親権者とその未成年の子を当事者とする場合には遺留分制度の意義を踏まえて行わなければならないはずが、当該遺産分割協議は子である原告に大きな不利益をもたらし、客観的公正さを欠くものであることを理由に、その遺産分割協議が不成立ないし無効であるとして、原告がその母親(親権者)である被告に対して不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得に基づく返還請求を求めたがいずれも認められなかった事例」とされています。 ○事案概要は、以下の通りです。 Aは、妻Y(s32生まれ)との間に長女X(s60生まれ)、長男F(H1生まれ) Aはh6.6交通事故死 h6.10.23亡A遺産分割協議成立 Y(当時37歳)とX(当時9歳)は祖母B、F(当時4歳)は伯父Cが、それぞれ親権者として、遺産分割協議書に署名押印して協議成立 協議内容は、Aの相続財産現預貯金・株式・退職金等の内XとFが株式一部を取得しその余の財産は全てY取得、事故損害賠償金は記載なし h6.12Yは事故賠償金1億1200万円全額受領、Xに説明無し h6.11.21Y申立で札幌家裁がB(H8死去)・C(H10死去)を特別代理人選任審判 h29.8X(32歳)がY・Fを相手に民事調停申立-不成立終了 h30XがYに対し亡A遺産確認等請求訴訟提起(約1605万円の支払を求める) 請求原因概要 1.遺産分割協議不成立ないし無効 B・Cは無権代理、子の遺留分さえ保証されない遺産分割協議に同意することは遺留分制度の趣旨に反し無効 2.署名押印したB・Cは無権代理人で無効 3.特別代理人としても遺留分すら保障しない内容の分割協議は、遺留分制度の趣旨に反し無効 ○判示概要は、以下の通りです。 請求をいずれも棄却 1.遺産分割協議の合意が存在 どのような分割方法が子の利益に資するかは、年齢・生活状況・今後の養育監護状況等でケースバイケースで、子に法定相続分以上の財産を確保する義務は無い 2.B・Cは特別代理人選任審判で代理人として追認され代理は有効 3.親権者とその対象の未成年者との間の遺産分割協議において、子に法定相続分以上の財産を取得することは常にこの利益になるとは限らず遺留分についても同様で、特別代理人は、法定相続分・遺留分を確保する義務は無い ※Yは遺産分割で取得した財産・事故損害賠償金をXの養育費を含む一家の生活費に充てていた-Y自身のためのみに費消していたとは言えない ○判決文は相当長文になっており、別コンテンツで紹介します。 以上:1,191文字
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