令和 2年 9月11日(金):初稿 |
○「遺産分割協議後新発見財産も法定相続分での分割を命じた家裁審判紹介」の続きで、その控訴審令和元年7月17日大阪高裁決定(判時2446号28頁)全文を紹介します。 ○被相続人の相続人(子)である抗告人が、他の相続人(子)である相手方を相手として、遺産分割協議(先行協議)成立後に発見された被相続人の遺産(本件遺産)の分割を求め、原審が、本件遺産について、相手方がすべて単独取得することとし、その代償として抗告人に対し金員を支払えと命ずる旨の審判をしていました。 ○そこで抗告人が即時抗告した事案で、抗告人は、先行協議において法定相続分と異なる不均衡な遺産分割協議が行われたとして、先行協議後に判明した本件遺産の分割において、先行協議の不均衡を考慮すべきであると主張ました。 ○これに対し、抗告審も、先行協議の当事者は、各相続人の取得する遺産の価額に差異があったとしても、そのことを是認していたものというべきで、先行協議の際に判明していた遺産の範囲においては、遺産分割として完結しており、その後の清算は予定されていなかったというべきで、また、抗告人は、原審判の本件各土地の評価には誤りがあると主張するが、仮に誤りがあったとしても、本件の結論を左右しないとして、本件抗告を棄却しました。 ******************************************** 主 文 1 本件抗告を棄却する。 2 抗告費用は抗告人の負担とする。 理 由 第1 抗告の趣旨 1 原審判を取り消す。 2 抗告人は原審判別紙遺産目録記載の遺産を全て単独取得する。 第2 事案の概要(以下、略称は、原審判の表記に従う。) 1 事案の要旨 本件は、被相続人の相続人(子)である抗告人が、他の相続人(子)である相手方を相手として、遺産分割協議(先行協議)成立後に発見された被相続人の遺産(本件遺産)の分割を求める事案である(平成29年9月15日申立て、同年10月30日付調停決定、平成30年12月11日調停不成立、原審判手続再開)。 原審は、平成31年3月6日、本件遺産について、原審判主文1項のとおり分割し、相手方に対して同2項のとおり代償金の支払を命ずる旨の審判をしたところ,抗告人が、これを不服として、即時抗告した。 2 抗告理由 別紙「抗告人主張書面(1)(抗告理由書)」《略》(写し)記載のとおり 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、本件遺産について、原審判主文1項のとおり分割し、相手方に対して同2項のとおり代償金の支払を命ずるのが相当であると判断する。その理由は、原審判を次のとおり補正し、次の2で抗告理由に対する判断を付加するほかは、原審判「理由」の1から4までのとおりであるから、これを引用する。 (1)原審判3頁25行目の「預貯金」の後に「合計183万8574円」を加える。 (2)原審判4頁5行目の「9865円」の後に「)」を加え、同頁7行目末尾に「また、本件各土地について、先行協議に基づく登記手続もされた。」を加える。 (3)原審判4頁10行目末尾を改行して次のとおり加える。 「(オ)亡Dが平成13年×月×日に死亡したため、抗告人が、大阪家庭裁判所に対し、相手方を相手として、遺産分割調停を申し立てたところ、平成14年2月6日、次の内容により調停が成立した。 a 相手方は、亡Dが被相続人から相続した土地及びその持分や亡Dの建物持分を含めた不動産と簡易保険金を取得する。 b 抗告人は、亡D名義の預貯金全てを取得する。 c 相手方は、抗告人に対し、代償金として1820万円を支払う。」 (4)原審判4頁11行目の「(オ)」を「(カ)」と、同行目の「死亡した後の」を「死亡してその遺産分割調停も成立した後の」とそれぞれ改める。 (5)原審判4頁16行目の「そうすると」から同頁18行目の「このような場合においては、」までを次のとおり改める。 「そして、一件記録によれば、先行協議の対象となった被相続人の遺産には、不動産のほか、現金や預貯金もあったところ、相手方は、現金や預貯金は取得せず、本件各土地と農耕具などを取得し、抗告人は現金200万円のみを取得しているのに対して、亡Dは不動産のほかに183万円余りの預貯金と現金100万円も取得することとして、相互に代償金の支払を定めることもなく遺産分割協議が成立していることが認められることからすると、先行協議の当事者は、各相続人の取得する遺産の価額に差異があったとしても、そのことを是認していたものというべきである。そうすると、先行協議の際に判明していた遺産の範囲においては、遺産分割として完結しており、その後の清算は予定されていなかったというべきであるから、」 (6)原審判4頁24行目の「主張するが、」の後に「先行協議の際に判明していた遺産の中には、抗告人が取得した現金以外にも現金と預貯金があったことなどと整合せず、亡Dが、抗告人に対し、先行協議において、後に何らかの清算をすることを約したとは認め難いし、」を加える。 (7)原審判4頁末行目冒頭から5頁19行目末尾までを削除する。 2 抗告理由に対する判断 (1)抗告人は、先行協議において法定相続分と異なる不均衡な遺産分割協議が行われたとして、先行協議後に判明した本件遺産の分割において、先行協議の不均衡を考慮すべきであると主張するが、原審判を補正の上引用して説示したところによれば、採用することができない。 (2)抗告人は、原審判の本件各土地の評価には誤りがあると主張するが、仮に誤りがあったとしても、上記説示に照らせば、本件の結論を左右しない。 したがって、抗告人の上記主張は、前提を欠くものであって、採用することができない。 3 以上によれば、原審判は相当であって、本件抗告には理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官 志田原信三 裁判官 濱谷由紀 中村昭子) 別紙 抗告人主張書面(1)(抗告理由書)《略》 以上:2,456文字
|