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雇用主を特別縁故者として遺産の半額の分与を認めた高裁決定紹介

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令和 2年 3月14日(土):初稿
○「引きこもり者の安否確認等について特別縁故者該当とした高裁決定紹介」で、遺産総額約1億7875万円に対し、特別縁故者としての分与財産額を300万円だけ認めた判決を紹介し、「民法958条の3第1項に定める被相続人と「特別の縁故があった者」として相当額の分与が認められるには、被相続人自身と相当強い人間関係があったことが必要で、単に安否確認や遺体引取・葬儀主催等だけでは、ダメなようです。」と説明していました。

○身寄りがなく,知的能力が十分ではない被相続人の相続財産(約4120万円)につき,同人の元雇用主が相続財産分与の審判を求めたましたが、一審の家裁では、被相続人が脳梗塞を発症してから死亡するまでの約15年間の支援にのみ着目し,分与額を800万円とする審判をしたていました。

○これに対し、抗告人(原審申立人)が被相続人を雇用していた期間(昭和47年~)にも着目し,知的能力が十分でなかった被相続人が4000万円以上もの相続財産を形成・維持することができたのは,抗告人(原審申立人)が約28年間にもわたり,労働の対価を超えて実質的な援助を含んだ給与を支給続けてきたことや,被相続人を解雇した平成13年以降も緻密な財産管理を継続してきたためであるとして,分与額を2000万円とした平成31年2月15日大阪高裁決定(家庭の法と裁判24号91頁)を紹介します。

○遺産のおよそ半分の額を分与額と認めた理由を「被相続人の死亡前後を通じての抗告人の貢献の期間,程度に照らすならば,抗告人は,親兄弟にも匹敵するほどに,被相続人を経済的に支えた上,同人の安定した生活と死後縁故に尽くしたということができる」としています。

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主   文
1 原審判を次のとおり変更する。
2 被相続人の相続財産から2000万円を抗告人に分与する。
3 手続費用は原審及び当審とも各自の負担とする。

理   由
第1 抗告の趣旨及び理由

 別紙即時抗告申立書及び抗告の理由書(各写し)のとおり

第2 当裁判所の判断
1 認定事実

 一件記録により,次の事実が認められる。
(1) 当事者等
ア 被相続人B(昭和5年○月○日生,以下「被相続人」という。)は,D家の長男E(明治35年○月生)とF(明治39年○月生)の長男として出生した。被相続人は,昭和44年11月11日,Gと婚姻したが,同女は昭和49年○月○日に死亡した。被相続人には子はなく,直系尊属全員及び弟H(昭和8年○月○日生)は死亡しており,法定相続人はいない。また,被相続人相続財産管理人の請求(平成29年7月27日)により,相続人捜索の公告がされた(同年○月○日)が,期間内(平成30年3月5日まで)に相続人としての権利を主張する者はいなかった。

イ 抗告人は,昭和21年○月○日,I(以下「抗告人父」という。)とJの長男として出生し,抗告人父から家業(醤油製造及び酒類等の販売)を継ぎ,被相続人の雇用主であった者であり,被相続人と親族関係にはない。

(2) 抗告人と被相続人との関係
ア 被相続人は,K(現在の○,以下「○地区」という。)で出生したが,昭和10年○月に父Eと死に別れ(4歳),弟(1歳)とともに,女中として稼働する母Fの下で,K地区の地域住民からの経済的支援を受けながら成育した。
 被相続人は,知的能力が十分でなく,昭和30年頃,抗告人父(民生委員)に雇用してもらい,給料を受け取っていた(25歳)。

イ 被相続人は,昭和34年○月には弟と(被相続人28歳),昭和49年○月には妻と(同43歳),昭和53年○月には母と(同47歳)それぞれ死別した。
 被相続人は,この間も,抗告人父に雇用されて給料を受け取り,抗告人父らK地区の住民の支援(食事や衣類の差入れ等)を受けながら,安定した生活を送った。抗告人は,昭和47年10月,抗告人父から家業を引き継ぎ(抗告人26歳,被相続人42歳),家業が順調とはいえない中でも,平成12年12月末に経営不振を理由に被相続人を解雇するまで(被相続人70歳),被相続人を雇用し,給料を支払い続けたほか,被相続人へ食事を差し入れたり風呂を提供するなどして被相続人の生活支援もしていた。

ウ 被相続人は,平成13年2月5日,抗告人の母により,自宅で倒れているのを発見され,病院への搬送後,脳出血後遺症,脳梗塞後遺症と診断され,同年3月以降,施設(L)に入所した。被相続人は,車椅子で移動し,身の回りのことを介助なくできていた。
 抗告人は,被相続人の入院や施設入所(転所)に伴う諸手続を行い,月に3回以上は被相続人を見舞い,外出に付き添い,施設からの連絡に適時対応をしたほか,被相続人の依頼を受けて,同人の預貯金(中小企業退職共済事業からの約437万円を含む。)や収入(国民年金,養老年金)及び支出(施設入所費用,日用品,被相続人の小遣い等)の管理を続けた。これ以外にも,抗告人は,平成19年8月,被相続人の依頼により,台風で屋根が崩落した被相続人の自宅の処分を手配し,その跡地に係る長年の紛争を弁護士を通じて解決した上で,駐車場として賃貸し(月額1万7000円,平成22年8月入金分以降1万4000円,平成27年11月入金分以降1万2000円),被相続人の賃料収入とした。抗告人は,平成13年以降,上記の収支等について,各費目(「入院費」,「現金引出B」等)ごとに分け,年毎の収支を集計して,B4版集計用紙に詳細に記録した(甲1〔同年2月5日から平成25年12月31日まで54枚〕,甲2〔平成26年1月14日以降10枚〕)。これらの収支等について被相続人に説明していたが,被相続人から異論を受けたことはなかった。

エ 被相続人は,平成21年8月17日,被相続人が生活及び財産管理を抗告人に委任し,抗告人がこれを受任する旨の委任契約及び抗告人を任意後見受任者とする任意後見契約を締結した(抗告人無報酬,M地方法務局所属公証人N作成の委任契約及び任意後見契約公正証書〔平成○年第○号〕)。

オ 被相続人は,平成25年3月8日に骨折した後(82歳),寝たきりで全介助を要するようになったが,その後も,抗告人は,前記ウ同様,被相続人の財産管理等を続けた。

カ 抗告人は,平成28年,神戸家庭裁判所洲本支部に,被相続人について任意後見監督人の選任を求める申立てをし(同年(家)第562号),同裁判所は,同年10月17日,任意後見監督人として司法書士を選任する旨の審判をし,同審判は同月19日確定した。

キ 被相続人は,同年○月○日に死亡した(抗告人70歳,被相続人86歳)。抗告人は,被相続人死亡後の手続や,通夜,葬儀及び四十九日の法要を執り行った。

ク 抗告人は,平成29年1月23日,神戸家庭裁判所洲本支部に,被相続人の相続財産の管理人の選任を求める申立てをし(同年(家)第57号),同裁判所は,同年2月21日,C(弁護士)を相続財産管理人に選任する審判をし,同審判は確定した。抗告人は,相続財産の管理業務(被相続人の動産の処分等)に協力した。

(3) 被相続人の相続財産
 被相続人の相続財産は,平成29年3月10日時点(相続財産管理人の初回財産目録)では,前記(2)ウの自宅跡地と預貯金及び現金合計約4000万円であったが,その後,上記土地が売却されるなどし,平成30年8月20日時点では,相続財産管理人が保管する預金合計約4120万円である。

2 判断
(1) 被相続人は,幼い頃(4歳)に父と死別してから,母の下でK地区の地域住民の支援を受けて成育した。被相続人は,知的能力が十分ではなかったため,抗告人の父に雇用されたが,昭和53年(47歳)までには,親族(弟,妻,母)と死に別れ,独居生活となった。

(2) このような中,抗告人は,昭和47年に抗告人父から家業を引き継いだが,被相続人(42歳)の生活を慮って,平成12年(70歳)までの約28年もの間,家業引継前と同様,被相続人の雇用を続けた。被相続人は,知的能力が十分でなかったが,抗告人は,被相続人が高齢になるまで,同人の稼働能力に見合う以上の給料を支給し続けた。

 このような被相続人の稼働能力と抗告人による被相続人の雇用の実態に照らすならば,抗告人から被相続人に給料名目で支給された金額には,被相続人の労働に対する対価に止まらず,それを超えた抗告人による好意的な援助の部分が少なからず含まれていたとみることができる。その上,抗告人は,上記期間,被相続人に食事や風呂を提供するなどして,同人の生活も支えてきた。

(3) また,被相続人は,平成13年2月(解雇直後)の脳梗塞等の発症後,入院治療を経て施設に入所した。抗告人は,その際の諸手続を行い,その後の見舞い,外出時の付添及び施設への対応を続けたほか,被相続人の財産を管理し,被相続人の自宅の取壊しと跡地の有効利用(賃貸)に奔走した。そして,被相続人が死亡する平成28年○月までの約16年間,上記の財産管理等の状況を精緻に記録し,被相続人に説明した。
 他方,被相続人も,生活全般や財産管理を抗告人に任せ,任意後見受任者を抗告人とするなど抗告人を頼りにしていた。

(4) さらに,抗告人は,被相続人が死亡すると(抗告人70歳),被相続人の四十九日までの法要を執り行い,相続財産管理人選任の申立てをし,同管理人の業務に協力した。

(5) 以上の検討を踏まえると,被相続人が4000万円以上もの相続財産を形成し,これを維持できたのは,抗告人によって,昭和47年からの約28年間,被相続人の稼働能力を超えた経済的援助(前記(2))と,平成13年から被相続人死亡までの約16年間,緻密な財産管理が続けられた(同(3))からとみるのが相当である。被相続人の相続財産の中には,抗告人による約44年間もの長年にわたる経済的援助等によって形成された部分が少なからず含まれているというべきである。このほか,抗告人は,上記の期間(抗告人26歳から70歳,被相続人42歳から86歳),生活面でも被相続人を献身的に支え,同人死亡後は,その法要等を執り行った。

 このように,被相続人の相続財産の相応の部分が抗告人による経済的援助を原資としていることに加え,被相続人の死亡前後を通じての抗告人の貢献の期間,程度に照らすならば,抗告人は,親兄弟にも匹敵するほどに,被相続人を経済的に支えた上,同人の安定した生活と死後縁故に尽くしたということができる。したがって,抗告人は,被相続人の療養看護に努め,被相続人と特別の縁故があった者(民法958条の3第1項)に該当するというべきである。

 そして,上記の抗告人自身と被相続人との縁故の期間(被相続人42歳から86歳)や程度のほか,相続財産の形成過程や金額など一件記録に顕れた一切の事情を考慮すれば,被相続人の相続財産から抗告人に分与すべき額について,2000万円とするのが相当である。


3 結論
 以上のとおりであるから,上記判断に抵触する限度で原審判を変更することとし,主文のとおり決定する。
 大阪高等裁判所第9民事部 (裁判長裁判官 松田亨 裁判官 上田日出子 裁判官 髙橋綾子)

 
以上:4,578文字

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