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養親からの包括受遺者提起養子縁組無効の訴えを却下した家裁判決紹介

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令和 1年12月 6日(金):初稿
○原告が、被告に対し、被告と訴外Cとの間の本件養子縁組が無効であることの確認を求めた訴えについて、第三者の提起する養子縁組無効の訴えは,養子縁組が無効であることによりその者が自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けないときは,訴えの利益を欠くとして、訴えを却下した平成29年9月22日徳島家裁判決(金商1569号20頁<参考収録>)を紹介します。

○事案は以下の通りです。
・原告は、C女(t13生まれ)の原告に対する包括遺贈の自筆証書遺言を所持していると主張
・h22.10.22Cは被告Yと養子縁組届
・H25C死去
・h28被告Yは原告に遺留分減殺請求の訴え
・h29.5.8原告は被告YにCとの養子縁組無効確認の訴え


○判決は、原告はCの親族ではなく,本件養子縁組の養親であるCから包括遺贈を受けた者であり得るにとどまるから,本件養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者には当たらないとして、訴えを却下しました。

○原告からすれば、Cと被告Yの養子縁組が無効になれば、被告YはCの相続人ではなくなり、原告に対する遺留分減殺請求もできなくなるので、養子縁組無効確認に訴えの利益があると思われます。この家裁判決は、平成30年4月12日高松高裁判決で覆され、原告の主張が認められましたので、別コンテンツで紹介します。ところが最高裁でさらに覆され、難しいところです。

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主   文
1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 平成22年10月22日にa町長に対する届出によってされた被告とC(本籍〈省略〉,大正13年○月○日生まれ。●●●)との間の養子縁組(以下「本件養子縁組」という。)が無効であることを確認する。

第2 事案の概要
1 事案の骨子

 本件は,原告が,被告に対し,本件養子縁組が無効であることの確認を求める事案である。

2 前提事実等(後掲各証拠等及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)
(1) Cは大正13年○月○日生まれの女性であり(甲3の5),原告は昭和11年○月○日生まれの男性であり(甲5),被告は昭和26年○月○日生まれの男性である(甲4)。

(2) Cは,Dの非嫡出子であり,父から認知を受けておらず,同母兄がいたが早くに亡くした(甲3の1・5)。Cは,昭和23年3月4日にEとの婚姻届を了し,同年○月○日にEとの間に長女をもうけたが,同28年○月○日にEを亡くし(甲3の2),平成6年○月○日に長女を亡くした(甲3の3)。また,Cは,その間にDも亡くした(甲2,3の1,弁論の全趣旨)。

 Dには他の男性との間に子がおり,同人には子ら(Cの甥)がいたので(甲2,弁論の全趣旨),平成22年7月11日(後記(3)の遺言書の作成日付)当時,Cの推定相続人は上記甥らであった。

(3) 原告は,「私はぜん財産をXに相ぞくさせる。平成二十二年七月十一日」と記載された「F」作成名義の「ゆい言書」と題する書面を所持し(甲2),これを,Cが原告に遺産全部を相続させる意思で作成した自筆証書遺言であると主張している(記録から明らか)。

(4) a町長は,平成22年10月22日,「養子になる人」欄に被告が表示され,「G」との署名押印があり,「養親になる人」欄にCが表示され,「F」との署名押印がある養子縁組届を受理し(甲1),その頃,戸籍に同日被告とCとが養子縁組をした旨の記載をした(甲3の4)(本件養子縁組)。

(5) Cは,平成25年○月○日に死亡した(甲3の5)。

(6) 被告は,原告に対し,遺留分減殺請求の意思表示をしたことを理由とする訴え(徳島地方裁判所平成28年(ワ)第23号)を提起し,本件口頭弁論終結時も,上記訴えが係属している。

(7) 原告は,平成29年5月8日,本件訴えを提起した(記録上明らか)。

(8) なお,被告は,Eの兄であるHの子(Cの義理の甥)であり,原告の妻であるIの弟でもある。

3 争点及びこれに関する当事者の主張
(1) 本件訴えに訴えの利益があるか

(原告の主張)
 原告はCの包括受遺者であるから,本件養子縁組が無効であるか否かによって,包括受遺者としての受遺分の範囲に直接影響を受ける。
 また,受遺者は,遺言の内容を実現するために,遺言者の相続人と共同して手続を行い,債務の履行に当たる必要があるから,誰が相続人であるかは,受遺者にとって強い利害関係がある。
 さらに,本件訴えにより本件養子縁組が無効であることを確定しておかなければ,被告が,Cの遺言の無効確認請求をして紛争を蒸し返すことも可能になってしまう。
 したがって,本件訴えに訴えの利益を認めるべきである。

(被告の主張)
 原告は,本件請求が認容されても,遺留分減殺請求により財産を失うことがないという財産上の権利義務に影響を受ける者に過ぎないから,本件訴えには訴えの利益がない。

(2) 本件養子縁組は縁組意思を欠き無効といえるか。
(原告の主張)
 被告は,本件養子縁組に係る養子縁組届に署名押印しなかった。
 また,Cは,専らその遺産を甥に相続させないための方便として,本件養子縁組の手続を行ったから,被告との縁組意思を有していなかった。
 したがって,本件養子縁組は,当事者の縁組意思を欠き,無効である。

(被告の主張)
 原告の主張事実は否認し,主張は争う。
 被告は養子としてCの面倒を見るつもりで本件養子縁組に係る養子縁組届に署名押印したし,Cも被告やその妻の世話を受け容れていたから,縁組意思があったはずである。仮にCがその遺産を甥に相続させたくないと考えていたとしても,成人間の養子縁組であるから,その効力は左右されない。

第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件訴えに訴えの利益があるか)について

 第三者の提起する養子縁組無効の訴えは,養子縁組が無効であることによりその者が自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けないときは,訴えの利益を欠く(最高裁昭和59年(オ)第236号同63年3月1日第三小法廷判決・民集42巻3号157頁)。
 これを本件についてみると,前記認定のとおり,原告はCの親族ではなく,本件養子縁組の養親であるCから包括遺贈を受けた者であり得るにとどまるから,本件養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者には当たらない。
 原告は,本件請求の本案判決が得られなくても,別件訴訟(前提事実等(6))で本件養子縁組の無効を主張すれば,被告に対して自己の権利利益を防御することができるし,仮に被告が原告の包括受遺者の地位を争う別途の法的手続をとったとしても,同様に自己の権利利益を防御することができるから,上記のように解したとしても,原告に過酷な不利益が生ずることはない。

 原告の主張は,被告の同種の主張を先制攻撃的に封じておきたいというに過ぎず,採用の限りでない。

2 結論
 以上によると,その余の点について検討するまでもなく,本件訴えは不適法であるから,これを却下することとして,主文のとおり判決する。
 徳島家庭裁判所 (裁判官 平野剛史)
以上:2,948文字

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