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成年後見等開始決定申立は申立後原則として取り下げることは不可2

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平成28年 9月11日(日):初稿
○「成年後見等開始決定申立は申立後原則として取り下げることは不可」の続きです。
それまでの家事審判法と家事審判規則が廃止され、平成25年1月1日から平成23年5月25日に公布された家事事件手続法が施行され、同時に最高裁判所規則としての家事事件手続規則が施行され、現在の家事事件は、この家事事件手続法・家事事件手続規則によって運営されています。

○後見開始申立事件の取下は、家事審判法時代は明確に規定されず裁判例では肯否両説がありました。しかし、家事手続法によって以下の通り、明確に否定されました。これに関する家事手続法・家事審判規則の条文は以下の通りで、家裁の許可がない限り、取下はできなくなりました。
家事事件手続法第121条(申立ての取下げの制限)
 次に掲げる申立ては、審判がされる前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ、取り下げることができない。
一 後見開始の申立て
二 民法第843条第2項の規定による成年後見人の選任の申立て
三 民法第845条の規定により選任の請求をしなければならない者による同法第843条第3項の規定による成年後見人の選任の申立て

家事事件手続規則第78条(申立ての取下げの理由の明示等・法第121条)
 法第121条各号に掲げる申立ての取下げをするときは、取下げの理由を明らかにしなければならない。
2 前項の取下げについては、第52条第1項の規定は、適用しない。
3 法第121条の許可があったときは、裁判所書記官は、その旨を当事者及び利害関係参加人に通知しなければならない。


○この成年後見申立取下を制限する家事事件手続法第121条は、同法第133条で保佐開始申立取下に、同法142条で補助開始申立取下に準用されています。その立法趣旨は、成年後見・保佐・補助いずれもその申立は、被成年後見人等申立の対象となる人の保護にあるところ、開始決定の要件があるのに、申立人の都合で取り下げることが可能になってのでは、申立対象人の保護・利益に欠け、公益に反するからというものです。

○実際、成年後見申立は、申立人自身が成年後見になろうとして申立をしても、他の親族の反対等があって申立人自身が成年後見人になれないと判明した時期になされることが良くありました。端的に言えば、申立対象の人が多額の財産を有しているが、認知症等で判断能力がなくなり、財産管理もできなくなったため、これに代わって財産管理をすることを目的に成年後見開始申立がなされるので普通です。自分がその多額の財産管理をすることを目論み、成年後見人になろうとして申立をしたが、その目論見が外れたため申立を取り下げることは認められなくなりました。

○取下は、「家庭裁判所の許可」を得れば可能です。この「許可」を得るために、家事事件手続規則第78条で「取下げの理由を明らかにしなければならない」とされています。どのような場合に、「許可」がなされるかについては、現在刊行されている家事事件手続法関係逐条解説書には明記されていません。一例として、同一人について他にも成年後見申立がなされていることが判明した場合、手続の重複を避けるため一方の取下が「許可」されるとの解説があります。

○認知症が奇跡的に回復し、判断能力も回復したことを医師の診断書で明らかにできる場合は、おそらく取下の「許可」が出されるでしょうが、認知症の病態からは、実際にこのような医師の診断書が出ることは先ずないと思われます。申立対象人の保護・利益確保との取下制限の趣旨からすると申立対象人の反対の意思表明等も考えられますが、いったん、判断能力なしとの医師の診断書が出ている以上は、その反対の意思が真意と認めらることも先ずないと思われます。この「許可」が出る例は、他にも成年後見申立が出されたこと以外なさそうです。
以上:1,560文字

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