平成28年 1月27日(水):初稿 |
○「相続財産管理人の実務-特別縁故者の要件等」で、「③その他被相続人と特別の縁故があった者の判定は、抽象的基準であるため大変難しく、相当数の申立があるも相当数が該当せずとして却下されています。」と記載し、平成21年までの具体的裁判例を掲載していました。 ○最近の裁判例で、判例集に掲載された却下例判決一審平成25年11月8日東京家裁審判、二審(抗告審)平成26年1月15日東京高裁決定を以下に紹介します。 ******************************************* 平成25年11月8日東京家裁審判(LLI/DB 判例秘書) 主 文 本件申立てを却下する。 理 由 第1 申立ての趣旨 申立人に対し,被相続人の相続財産を分与する。 第2 当裁判所の判断 1 一件記録によれば,次の事実が認められる。 (1) 申立人は,被相続人の従姉の養子である。 (2) 被相続人は,生前申立人の本籍地を訪ねることがあった。 (3) 被相続人は,平成21年×月×日から×日までの間に死亡した。 (4) 申立人は,同年×月×日,被相続人の遺骨を引き取り,供養を行っている。 (5) 申立人は,相続財産管理人の選任を申し立てた。 2 判断 (1) 上記事実関係及びその他一件記録上の証拠に照らしても,申立人と被相続人との被相続人の生前における関係は特別なものとはいえず,特別縁故者であると認めるに足りない。 (2) これに対し,申立人は,①申立人は,本家であり,被相続人は分家であって継続的な関係があった,②申立人は,生前,死後のことを被相続人から委ねられたなどと主張する。 しかしながら,一件記録からは,仮に,一時的な関係や通常の親戚付き合いが認められたとしても,関係が継続的で付き合いが通常を超えていたということも,被相続人が申立人に委ねたということも,いずれも認めるに足りない。 (3) 以上より,本件申立ては理由がない。 平成25年11月8日 東京家庭裁判所家事第1部 家事審判官 小西 洋 ******************************************* 平成26年1月15日東京高裁決定(判タ1418号145頁、判時2274号23頁) 主 文 1 本件抗告を棄却する。 2 抗告費用は抗告人の負担とする。 理 由 1 抗告の趣旨及び理由 抗告の趣旨は「1 原審判を取り消す。2 抗告人に対し,被相続人の相続財産を分与する。」というものであり,抗告の理由は準備書面(1)のとおりである。 2 当裁判所の判断 (1)本件は,抗告人が被相続人と特別縁故関係にあるとして,被相続人の相続財産の分与を求めた事案である。 原審は,抗告人が被相続人の特別縁故者であるとは認められないとして抗告人の申立てを却下した。 これを不服として抗告人が抗告した。 (2)当裁判所も,抗告人が被相続人の特別縁故者であるとは認められないと判断する。 一件記録によれば,抗告人は被相続人の従姉の養子であることが認められるところ,抗告人は,被相続人との間に本家と分家として親戚づきあいがあり,被相続人に後事を託されたことがある,被相続人の葬祭や供養等を行うため多額の費用を支出した等主張する。 しかし,抗告人が被相続人の生前に,特別の縁故があったといえる程度に被相続人との身分関係及び交流があったということができないことは,原審判の「理由」第2の1,2に記載のとおりであり,一件記録によれば,被相続人は婚姻もせず,子もなく,兄弟姉妹も先に亡くなっていることが認められ,また,抗告人が被相続人の死後に被相続人の法要をし,被相続人宅の庭木と草木の伐採,掃除等をし,そのために一定の労力と費用をかけ,今後もこれを継続する意思を有していることが認められるが,生前の身分関係及び交流に,被相続人の境遇及び被相続人の死後の抗告人の貢献を加えて検討しても,抗告人の被相続人との生前の交流の程度に鑑みると,抗告人を被相続人と「特別の縁故があった者」と認めることはできない。 3 よって,本件抗告を棄却することとして,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官 園尾隆司 裁判官 綿引穣 裁判官 森脇江津子) 以上:1,741文字
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