平成26年 9月27日(土):初稿 |
○「相続人の一人が相続人なくして死去時の相続財産不動産相続登記方法1」の続きです。この記事を見たある弁護士さんから次のような投稿を頂きました。 ・ 東京家裁に申立+(不動産を管轄する)仙台家裁?への移送上申とすれば,予納金も移送先裁判所での協議で足りますよ。(今年,私も同種案件をしました。) 以下の感じです。 (東京家裁宛) 頭書事件については,下記理由により,本件を仙台家庭裁判所○○支部へ移送されたく上申します。 記 1 相続財産が,上記裁判所の管轄地に存在する。 2 法定相続人らも,宮城県内に在住している。 3 申立人の住所が,上記裁判所の管轄地である。 4 相続財産管理人も,上記裁判所の管轄地在住者が適切である。 ○これは有り難い情報です。実は、祖父X名義の土地が宮城県内にあったのでその地を管轄する仙台家庭裁判所某支部に相続財産管理人選任申立をして、何とか、そちらで審理して頂きたいとお願いしていました。しかし、最終的に裁判所から以下の規定を盾に東京家裁移送決定がなされました。 家事事件手続法第203条(管轄) 次の各号に掲げる審判事件は、当該各号に定める家庭裁判所の管轄に属する。 一 相続人の不存在の場合における相続財産の管理に関する処分の審判事件(別表第1の99の項の事項についての審判事件をいう。次号及び第208条において同じ。) 相続が開始した地を管轄する家庭裁判所 「相続が開始した地」とは民法第884条(相続開始の場所)で「相続は、被相続人の住所において開始する。」と規定され、通常、死亡時の住民登録地で住民登録していない場合居所になります。 ○この管轄規定について、商事法務遂条解説家事事件手続法では、「これは、これらの審判事件の判断に必要な資料は、相続開始地、すなわち被相続人の住所地(民法第883条)に最も多く存するものと一般的に考えられ、また、申立人がだれであっても、また、申立人がどこに居住していても一義的に管轄が定まり管轄原因として明確であることによるものである。」、「相続財産の所在地を管轄原因とすると管轄が複数生じ優先管轄によって処理するとしてもそれによって決まる管轄裁判所が審判事件の処理にとって最適であるとは限らないといった事情も踏まえ、相続開始地に管轄を認めることが最も合理的であると判断したものである。」と解説されています。 ○移送された東京家裁の担当書記官から電話連絡が入り、仙台家庭裁判所某支部に移送されたいとの上申書を出せば、そこへの移送を検討するとの有り難い指示がありました。そこで上記投稿と同様の詳しい移送上申申立をしましたが、待たされること数ヶ月後、やはり、東京家裁で審理するので、予納金100万円支払って頂きたいとの連絡が入り、がっかりしていました。 ○家事事件手続法での移送に関する規定は次の通りです。 第9条(移送等) 裁判所は、家事事件の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送する。ただし、家庭裁判所は、事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で、家事事件の全部又は一部を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に移送し、又は自ら処理することができる。 ○上記の「自ら処理すること」を自庁処理といいますが、この自庁処理をしなかったことを違法として即時抗告ができるかどうかは、大変難しい問題で、上記逐条解説でも解説も「自庁処理が飽くまで例外的措置であることを強調し、それを求める利益はおよそないものと考えるならば、消極的に考えることになろう。」なんて曖昧な記述になっています。そこで上記投稿の弁護士さんに移送決定書の送付をお願いしているところです。即時抗告ができなくても再考上申を考えているからです。 以上:1,584文字
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