平成25年 2月 1日(金):初稿 |
○「別居中の夫婦間の子の引渡(奪い合い)紛争解決方法如何2」を続けます。今回は、別居中の夫婦が、子の監護者指定審判申立をした場合の監護者指定基準です。 離婚の際の親権者指定基準は、「親権の概観-離婚の際の親権者指定基準概観1」、「同2」に私なりのまとめを記述していました。別居中の夫婦間の子の監護者指定基準もこれと全く同じと思われますが、我が仙台弁護士会所属離婚・DV問題最高権威小島妙子弁護士著「Q&A離婚実務と家事事件手続法」の「Q44子の引渡・子の監護者指定を求める審判の判断基準は?」を読むと最近は判断基準が変容しつつあるようで、以下、同著記述の備忘録です。 なお、この小島妙子弁護士著「Q&A離婚実務と家事事件手続法」は、出版社民事法研究会HPによると ・2013年1月1日施行の家事事件手続法による手続上の変更点を当事者・代理人の立場から家庭裁判所実務に即して解説!とあり、新家事事件手続法の元での離婚等男女問題実務家には必読の書としてお薦めです。 ○かつての監護者指定の大まかな指標は次の通りとされていました。 ①当事者双方の諸要因の比較考量(ⅰ経済力、ⅱ居住条件・居住環境、ⅲ心身の健康・性格、ⅳ子への愛情・熱意、ⅴ養育能力、ⅵ履行補助者の有無、ⅶ監護の継続性等)、 ②乳幼児についての母親優先、 ③従前の監護状況の尊重(継続性の原則)、 ④子の意思尊重 ところが、近時は、乳幼児についての母親優先については性差別であるという主張がなされ、「主たる監護者基準」へと変化し、監護の継続性を重視する視点については、実力による子の奪い合いの結果を追認する結果となるとして重視すべきでないとの意見も出ているとのことです。 ○「乳幼児についての母親優先」が、「主たる監護者基準」に変化しているのは、父親にとっては、有り難いことですが、その内容がいまいち掴めません。しかし、「Q&A離婚実務と家事事件手続法」198頁以下に紹介されている松本哲泓元裁判官作成論文「子の引渡・監護者指定に関する最近の裁判例の傾向について」(家月63巻9号1頁)によると少しずつ見えてきますので、以下に紹介します。なお、この論文が取り上げている事例は、別居中の夫婦の子の監護者指定審判例です。 ・現在および将来を含めた子の監護態勢優劣が「非常に大きな要素を占める」、「監護態勢としては経済力、居住条件・居住環境、心身の健康・性格、子に対する愛情・監護に対する熱意、面会交流に対する姿勢、養育能力、監護補助者の有無・態勢、経済的・物的な側面及び精神的環境が対象となる」と指摘 ・裁判官の関心は、子供が順調に育っていける物的・精神的環境を親が整えられるかどうかということにあり、裁判例の傾向としては、「主たる監護者」と未成年者との間の親密な親和関係が形成されている場合には、「主たる監護者」による監護の継続を原則とする ・乳幼児期の哺乳や幼児期のこまごまとした身上監護を基盤とした子との愛着関係や心理的絆は子の健全な成長・発達のためには必要不可欠であることから、そのニーズを満たす者(性別を問わず)による監護の継続性が重視され、母親優先が性差別という観点から批判され、「主たる監護者」基準へと変容している ・ただし、「主たる監護者」による看護の継続性の重視は、未成年者が成長し、親とは別個の生活空間をもつに至ることによって次第に低下し、これと反比例して未成年者の意思を尊重すべき重要性が増し、この年齢が高くなり、親子関係だけでなく学校・友人関係などの子独自の世界が形成されて行くにつれ、子自身の意向・意思を尊重すべきである ※家事事件手続法第5款 家事審判の手続における子の意思の把握等 第65条 家庭裁判所は、親子、親権又は未成年後見に関する家事審判その他未成年者である子(未成年被後見人を含む。以下この条において同じ。)がその結果により影響を受ける家事審判の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。 ・違法な監護の開始については、違法性が高い場合や面会交流の際の連れ去りなどは、特段の事情がない限り原状回復が認められる 以上:1,996文字
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