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遺産不動産の共有登記と共有物分割訴訟の注意点

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平成24年 6月25日(月):初稿
○以下、最近相談を受けた事例からの備忘録です。
被相続人Aが唯一の遺産として甲不動産を残して死去し、その相続人がB、C、D3人の子供だった場合、民法相続に関する以下の規定によって、甲不動産は、3人の共有不動産になります。
第898条(共同相続の効力)
 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

 そして、遺産である不動産については、民法の以下の規定によって、法定相続人である共有者が共有持分権に従って保存登記=保存行為として共有者だれでもできます。
第252条(共有物の管理)
 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

 ですから遺産分割協議が整わない場合でも、上記設例でBがC、Dの協力なくても単独で、甲不動産を相続を原因としてB、C、D3人の共有の登記が出来ます。

○しかし、登記をしても3人の共有名義であるときは、甲不動産の一部でも独占的に使うことは出来ません。例えばB一人で甲不動産の一部に建物を建築することは出来ません。共有者は全員が甲不動産全部について使うことが出来るからです。
第249条(共有物の使用)
 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

 Bが甲不動産の一部に建物を建てて独占的に使用するためには、共有状態を解消して、共有物を分割しなければなりませんが、その分割協議が整わないときは、共有物分割訴訟を提起するしかありません。
第258条(裁判による共有物の分割)
 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。


○ところが遺産である共有物は、昭和62年9月4日最高裁判決(判時1252号101頁、判タ651号61頁)によって、「遺産相続により相続人の共有となつた財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によつてこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないと解するのが相当である。」として遺産分割前に共有物分割請求は出来ないとされています。

○Bとしては、早期に甲不動産に建物を建築するなど一部を独占的に使用したくても、遺産分割協議が暗礁に乗り上げ、なかなか決まらないとしても、共有物分割訴訟が出来ないときは、その3分の1の共有持分権を、相続人以外の第3者に譲渡するという方法があります。例えば、相続人ではないEにこの共有持分権を譲渡すると、昭和50年11月7日最高裁判決(判時799号18頁、判タ329号115頁)によってEはC、Dに対して民法第258条の共有物分割訴訟を提起することが出来ます。ちと長いのですが、その理由を末尾に全文掲載します。

○Bが特別受益を受けており、その価値等が争いになってなかなか遺産分割協議が出来ないとき、Bが共有持分権3分の1を第3者Eに譲渡すると、C、DはEに対してはBの特別受益を主張できなくなり、且つ、共有物分割訴訟で無理矢理現物分割か競売にかけられることになります。ちと理不尽な気がしますが、これが心配であればC、Dとしては、Bの特別受益により実質は甲不動産に3分1の共有持分権は存在しないことを理由として、保証金を積んでBの共有持分権について処分禁止の仮処分をかける必要があります。

○また、BがEに譲渡してしまった場合、(相続分の取戻権)民法第905条「共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2 前項の権利は、1箇月以内に行使しなければならない。」
との規定によって、「その価額及び費用を償還して」1ヶ月以内に買い戻すことはできません(昭和53年7月13日最高裁判決、判時08号41頁)。この規定は、あくまで「相続分」の譲渡だからです。

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共同相続人の一人が特定不動産について有する共有持分権を第三者に譲渡した場合、当該譲渡部分は遺産分割の対象から逸出するものと解すべきであるから、第三者がその譲り受けた持分権に基づいてする分割手続を遺産分割審判としなければならないものではない。

のみならず、遺産分割審判は、遺産全体の価値を総合的に把握し、これを共同相続人の具体的相続分に応じ民法九〇六条所定の基準に従つて分割することを目的とするものであるから、本来共同相続人という身分関係にある者または包括受遺者等相続人と同視しうる関係にある者の申立に基づき、これらの者を当事者とし、原則として遺産の全部について進められるべきものであるところ、第三者が共同所有関係の解消を求める手続を遺産分割審判とした場合には、第三者の権利保護のためには第三者にも遺産分割の申立権を与え、かつ、同人を当事者として手続に関与させることが必要となるが、共同相続人に対しては全遺産を対象とし前叙の基準に従いつつこれを全体として合目的的に分割すべきであつて、その方法も多様であるのに対し、第三者に対しては当該不動産の物理的一部分を分与することを原則とすべきものである等、それぞれ分割の対象、基準及び方法を異にするから、これらはかならずしも同一手続によつて処理されることを必要とするものでも、またこれを適当とするものでもなく、さらに、第三者に対し右のような遺産分割審判手続上の地位を与えることは前叙遺産分割の本旨にそわず、同審判手続を複雑にし、共同相続人側に手続上の負担をかけることになるうえ、第三者に対しても、その取得した権利とはなんら関係のない他の遺産を含めた分割手続の全てに関与したうえでなければ分割を受けることができないという著しい負担をかけることがありうる。

これに対して、共有物分割訴訟は対象物を当該不動産に限定するものであるから、第三者の分割目的を達成するために適切であるということができるうえ、当該不動産のうち共同相続人の一人が第三者に譲渡した持分部分を除いた残余持分部分は、なお遺産分割の対象とされるべきものであり、第三者が右持分権に基づいて当該不動産につき提起した共有物分割訴訟は、ひつきよう、当該不動産を第三者に対する分与部分と持分譲渡人を除いた他の共同相続人に対する分与部分とに分割することを目的とするものであつて、右分割判決によつて共同相続人に分与された部分は、なお共同相続人間の遺産分割の対象になるものと解すべきであるから、右分割判決が共同相続人の有する遺産分割上の権利を害することはないということができる。このような両手続の目的、性質等を対比し、かつ、第三者と共同相続人の利益の調和をはかるとの見地からすれば、本件分割手続としては共有物分割訴訟をもつて相当とすべきである。
以上:2,944文字

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