平成17年11月20日(日):初稿 |
○H17-11-19更新情報に続けます。 父Aと母Bが一緒に商売を継続して1億円の財産をA名義で形成してきたが、Aは名前だけで殆ど働かず、実質はBの経営であり、Aの財産形成にBの寄与分が5分の4が認められるところ、Aは晩年愛人Eを作り、その間に生まれたFに全財産を遺贈する遺言を残した場合、Bは寄与分相当額8000万円をFから取り戻せないかと言う問題があります。 ○寄与分は、先ず相続人間の合意で定め、合意形成が出来ない場合、家裁に寄与分を定める審判を申立して最終的には家裁の審判によって認められるものです。本件では、AB間の子、C、Dは何れも母Bの寄与分に争いが無く、家裁に申立をすれば家裁から寄与分5分の4が認められることは確実な事案であることを前提とします。 ○私自身は、寄与分は実質共有財産の清算であり、本件ではA名義の財産の内5分の4はBの寄与分と認められ、実質はBの財産であるから、Aはその部分について処分権がなく、寄与分相当額についての遺贈は無効と解すべきと思っていました。 ○しかし残念ながらこの考えは現行法の下では間違いでした。民法904条の2第3項に「寄与分は、被相続人が相続開始時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した額を超えることが出来ない。」と規定されているからです。この規定は「遺贈は寄与分に勝つ」ことを定めたもので、被相続人の意思を寄与分よりも優先させるものです。 ○従って上記事案では、H17-11-19更新情報で解説したとおり、法定相続分は妻B2分の1、子C、D、Fは各6分の1になり、遺留分として2分の1がありますので、妻Bは4分の1の2500万円、C・D・Eは各12分の1の各約833万円を遺留分減殺請求によって返還請求できるだけです。この結論は私としては納得できませんが、民法904条の2第3項の規定がある限りどうしようもありません。 ○実際実務のこのような事案では、E側は、Aの商売はやはりAの力で継続しAの力によって1億円の財産を形成できたもので、Bは全く役に立っていなかったとしてBの寄与分を強硬に否定します。更にAは生前Bから虐待されひどい目に遭っていたこと、そのためEがAを助けて、男女関係になりFを産んだもので真実Aを支えてきたのはEであり寄与分があるとすればE側である等と主張し、双方の主張が真っ向から対立します。 ○「寄与分は遺留分に勝つも遺留分より弱い遺贈には負ける」という複雑な定めになっていることに要注意です(この話題後日に続けます)。 以上:1,040文字
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