平成29年10月 6日(金):初稿 |
○「”自由と正義”H29年08月号懲戒例-ヒヤッとする懲戒事例紹介3」の続きです。 今回は、弁護士業務着手が極端に遅かったこと、着手後も、十分に連絡を取らず、お客様とのコミュニケーション不足のまま訴訟を遂行したことについて懲戒請求されて、戒告処分を受けた例を紹介します。 ○弁護士の三大悪弊というか三大悪というか、兎に角、三つの特徴として、 「遅い」、「連絡がない」、「横柄(威張る)」 を挙げている例を、何かの文章で読んだ記憶があるのですが、その出典をネットで調べても見つけることが出来ませんでした。 ○上記三つの特徴は、弁護士数が極端に限られていた弁護士特権階級時代には、ちまたに溢れていたように思います。弁護士特権の多くが取り払われた現在においても、特に「遅い」と言う表現は、難しい訴訟手続を遂行していると忸怩たる思いにかられることもあります(^^;)。裁判官から遅くても期日1週間前には準備書面を提出して下さいと指示されていても、調査が進まず、或いは思うような証拠が集まらず期日ギリギリに提出することもままあります。 ○「連絡がない」については、私自身は、期日結果報告、文書受領連絡等はこま目に行っていると自負していますが、お客様がどう感じているかは、完全な自信はありません。「横柄(威張る)」についても、私自身は、昔に比較して随分気をつかっているつもりですが、お客様がどう感じているかは、「連絡がない」以上に自信がありません(^^;)。 ○以下、お客様とのコミュニケーション不足のまま訴訟を遂行したことについて懲戒請求されて、戒告処分を受けた例の理由分を紹介します。昔は、このような例はごまんと溢れていたところ、懲戒制度自体余り知れ渡って居なかったため請求自体がなされることは殆ど無かったと思われます。しかし、現在は、ネットの普及で弁護士懲戒制度も広く知れ渡り、弁護士に注がれる目は大変厳しくなっておりますので、大いに自戒すべき事案です。 ****************************************** 3 処分の理由の要旨 (1)被懲戒者は懲戒請求者から、同人の離婚した元夫Aに対する損害賠償請求等に関する交渉事件を受任し、2011年9月29日内容証明郵便による通知書の文案を作成して同年10月7日にAに上記通知書を郵送することを懲戒請求者に約束したが、これを放置し2013年7月3日に懲戒請求者が法テラスに連絡するまで約1年9か月間、懲戒請求者に対して何らの連絡もしなかった。 (2)被懲戒者は、上記事件の方針変更がなされ2014年2月16日懲戒請求者を原告としAを被告とする損害賠償請求事件を訴訟提起し、その後、上告審まで懲戒請求者の訴訟代理人であったが、裁判期日を懲戒請求者に事前連絡しなかったり、懲戒請求者が書面内容を事前に確認したいので十分な余裕を持って検討できるよう要請し、被懲戒者もこれを了解していたにもかかわらず、懲戒請求者の確認を得ないで裁判所に準備書面を提出したり、裁判所に重要な書類を提出するごとに懲戒請求者にその控えなどを交付しなかったり、懲戒請求者との間で十分な意見交換、聴き取り等をしないまま訴訟行為を進める等した。 懲戒者の上記(1)の行為は、弁護士職務基本規程第35条に、上記(2)の行為は同規程第36条に違反し、いずれも弁護士法56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。 以上:1,413文字
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