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”自由と正義”H29年08月号懲戒例-ヒヤッとする懲戒事例紹介3

平成29年 9月15日(金):初稿
○「”自由と正義”H28年09月号懲戒例-ヒヤッとする懲戒事例紹介2」の続きです。
今回は、夫の不貞行為相手方女性に対する損害賠償請求訴訟事件で、被告女性の父親にこの損害賠償請求訴訟を提起した事実を通知したことが懲戒理由となっています。処分理由全文は、以下の通りです。
3 処分の理由の要旨

(1)被懲戒者は2015年7月2日、Aの代理人として懲戒請求者を被告とする損害賠償請求訴訟を提起したところ、同日、通知をする必要性、相当性が認められないにもかかわらず、懲戒請求者の父親宛てに、懲戒請求者がAの夫と交際していること、懲戒請求者を被告とする不貞行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起したこと等を記載した通知書を送付した。

(2)被懲戒者はAの代理人として提起した上記訴訟において、事実に反するとの認識を有しながら、訴状に「弁護士費用」の請求の理由として「被告が任意の賠償に応じなかったため、本件訴訟を余儀なくされた」との事実と異なる記載をした。

(3)被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士法第23条項、上記(2)の行為は弁護士職務基本規程第5条に違反し、いずれも、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
○私自身は、繰り返し記載していますが、不貞行為第三者への請求事件は原則として受任しません。相談は、多数受けていますが、不貞行為第三者への請求についての、現在時点での学説、欧米諸国の立法例等を説明し、且つ、裁判所での現時点での認容金額例等を説明して、受任はやんわりとお断りして、他の弁護士を紹介しています。

○この種事件の相談過程では、不貞行為相手方への憎しみの余り、相手の親にも請求できないか、またはせめて通知くらいできないかとの相談も日常茶飯事にあります。不貞行為をされた方は、不貞行為をした人間を、極悪人と確信していますので、そんな人間に育てた親にも責任があるのではないか、せめて、その事実を親に知らせて当然だと考えています。

○この懲戒例での弁護士さんも、おそらく、依頼者の女性から相手の親に請求して欲しい、せめて通知くらいはして欲しいと強く迫られたものと思われます。そこで、「懲戒請求者の父親宛てに、懲戒請求者がAの夫と交際していること、懲戒請求者を被告とする不貞行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起したこと等を記載した通知書を送付」した思われます。

○また、普通は文書による請求から始まるのですが、相手方憎しのあまり、いきなり裁判を出して欲しいと要請される場合もあります。この懲戒例では、その任意請求の段階を踏まず、訴えを提起し、弁護士費用請求型どおりの文言である「被告が任意の賠償に応じなかったため、本件訴訟を余儀なくされた」をそのまま記載してしまったようです。

○最近、不貞行為第三者への請求事件は、相当増えており、若い弁護士さんも、請求する側として、相当受任されています。依頼者から本件のように相手の親、相手方の上司、相手方の会社等への通知を強く要請される例も多いと思われますので、注意が必要です。
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