仙台,弁護士,小松亀一,法律事務所,宮城県,交通事故,債務整理,離婚,相続

旧TOPホーム > 弁護士等 > 弁護士法関連 >    

”自由と正義”H28年09月号懲戒例-ヒヤッとする懲戒事例紹介2

平成28年10月11日(火):初稿
○「”自由と正義”H28年09月号懲戒例-ヒヤッとする懲戒事例紹介」の続きで、今回は、名誉毀損及び業務妨害の疑いのある行為を中止させる目的での金100万円の損害賠償請求内容証明郵便の送付行為についての「戒告」処分例です。処分理由要旨全文は、以下の通りです。
被懲戒者は株式会社A及びその代表取締役であるBの代理人として懲戒請求者によるA社及びBの代理人として、懲戒請求者によるA社及びBに対する名誉毀損及び業務妨害の疑いのある行為を中止させる目的で、法的根拠が乏しいにもかかわらず損害賠償の請求金額を100万円とし、また、懲戒請求者がC大学の名誉教授を務めていることを指摘した上、使用者責任の要件を十分検討しないまま、懲戒請求者から支払も連絡もない場合にはC大学に対する使用者責任の追及を含めた法的措置を採らざるを得ない旨記載した2013年2月25日付け内容証明郵便を懲戒請求者に対して送付した。
被懲戒者の上記行為は弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
○弁護士が、お客様から損害賠償等相手方に対する債権回収のための請求書面の発送を依頼されることは、弁護士の根幹業務であり、日常茶飯事的にあります。しかし、お客様の債権の存在が明白であり、その権利行使としての請求であっても、昭和27年5月20日最高裁判決(最高裁判所裁判集刑事64号575頁)は、「他人に対し権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であつて、且つその方法が社会通念上一般に、忍容すべきものと認められる程度を越えないかぎり、なんら違法の問題を生じないけれども、右の範囲又は程度を逸脱するときは違法となり、恐喝罪又は脅迫罪の成立することがあると解するのを相当とする。」としていますので注意が必要です。

○良くあるのが不貞行為第三者への損害賠償請求で、例えば、夫が勤務先同僚と男女関係になり、これを知った妻が、夫の不貞行為相手方女性に対し、慰謝料の請求をし、支払わなければ不貞の事実を勤務先上司或いは社長、更に親戚等第三者に知らせると告げる場合です。刑法第249条は、「人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」と規定していますが、この「恐喝」とは、「相手方を畏怖させる程度の脅迫または暴行を加えること」であり、勤務先上司に知らせるとの告知は、正に「相手方を畏怖させる程度の脅迫」に該当する可能性があります。

○勤務先上司に知らせるとの告知は「社会通念上一般に、忍容すべきものと認められる程度」を超えていると評価できるかどうかが問題です。法律専門家の弁護士が代理人として、不貞行為第三者への損害賠償請求で、支払がない場合、法的手続に及ぶとの告知は、問題ありません。しかし、法律に素人の本人がそのようことを告げることは兎も角、弁護士がお客様の言うままに勤務先上司に知らせるなどと告知したら「懲戒」の対象になると考えるべきでしょう。相手の夫に知らせるとの告知も、本人は兎も角、弁護士が使うのは問題と思われます。「相手の弱みにつけ込む」行為だからです。

○先の懲戒例では、勤務先のC大学に使用者責任を追及すると告知したことが弁護士の品位を失うべき非行と評価されました。これは相手方の「名誉毀損及び業務妨害の疑いのある行為を中止させる目的」達成には、勤務先大学への請求の告知が最も効果があると考えて記述したと思われます。しかし、この表現は、「相手の弱みにつけ込む」行為と評価され、「品位を失う非行」とされました。お客様からこのような記述を要請されたとしても、表現は慎重に配慮する必要がありました。

以上:1,503文字

タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック
※大変恐縮ながら具体的事件のメール相談は実施しておりません。

 


旧TOPホーム > 弁護士等 > 弁護士法関連 > ”自由と正義”H28年09月号懲戒例-ヒヤッとする懲戒事例紹介2