平成27年 3月 1日(日):初稿 |
○「破産事件受任弁護士財産散逸防止義務を厳しく認めた東京地裁判決紹介1」の続きでこの事件処理についての私なりの感想です。 先ず事実の流れの確認です。 昭和59年;代表者Cが電子部品メーカーのB株式会社設立 平成23年2月8日;Y1弁護士がB社債務整理委任契約、同年3月8日500万円、同月11日700万円、同月15日以降60万円の合計1260万円を報酬として受領 3月6日;B社代表取締役Cが死去し、同月15日生命保険金約9974万円がY1経営事務所名義口座に入金 3月15日;B社全従業員解雇、Y1らは、受領保険金から以下の支払実施 退職金等名下に取締役Dに約1193万円、取締役Eに約1137万円、調整手当名下に従業員Fに70万円の総合計約2400万円 3月16日B社破産宣告申立、同日破産手続開始決定、Xが破産管財人就任 Xは、上記D・E・Fに対する支払の内約2346万円部分について否認の訴えを提起し、欠席判決で判決確定し、平成24年7月までに3名から約11万円回収、 平成24年7月;XはY1らに損害賠償として約2344万円、報酬否認分として600万円の返還を求める訴え提起 X作成平成25年3月1日付け財産目録では、 B社の資産として現金8630万円・敷金42万円、 B社負債としては、一般債権9億1274万円、公租公課4947万円 ○平成23年2月8日にY1はB社と債務整理委任契約を締結し、3月11日までに報酬金1200万円を受領していますが、代表者Cが3月6日に死去し、その保険金約9974万円を9日後の同月15日受領していることが、この事件の特異な点です。死去後僅か9日後に1億円近い生命保険金が支払われるのだろうかと疑問も感じますが、この事実関係を前提として検討します。 ○Dは、死去したCの二男であり、Eは身分関係は不明ですが、Dと同様に常務取締役であり、おそらくCとしては身内意識がある人間で、また、従業員Fも特別Cに近い関係にあったと思われます。Cとしては約1億円の生命保険金は、父Cの生命の代償金であり、Cが個人的に取得したとの意識があったと思われます。 ○それ故Y1弁護士も、この生命保険金がB社に帰属することについて軽く考えて、Cらの要請でその4分の1相当約2400万円程度は支払っても良いと考えたのでしょう。しかし、この考えは翌日破産宣告申立をすることを予定している弁護士としては全く甘いと言わざるを得ません。D・E・Fに対するXの強制執行でも約11万円しか回収できなかったことを考慮すると、なおさらです。 ○生命保険金約9974万円からDらに支払った約2400万円を差し引いた7574万円がXに引き継がれたと思われますが、平成25年3月現在X管理現金は8630万円だけです。解雇した全従業員解雇予告手当・退職金等の金額が不明で、断定できませんが、破産管財人独自で回収した金額は1000万円にも満たない金額です。このような事案で、破線宣告申立前日に2400万円も大金を会社経営者に支払う感覚は、債務整理に当たる弁護士としては、信じられないものです。 以上:1,271文字
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