平成27年 2月20日(金):初稿 |
○「小5児童自殺に体罰責任を認めた平成21年10月1日福岡地裁判決理由紹介1」以下で紹介した判決のまとめです。 先ず事案概要です。 ・C教諭は、C教諭は,昭和54年に大学を卒業後,北九州市公立学校教員に任命され,4つの小学校での26年間の教員経験を経て,平成17年4月、B君(平成6年生まれ、当時小学5年生)の在籍する小学校に赴任しその担任となる、C教諭は,身長約160cmの細身の体格で、当時、B君は、身長約134cm,体重約31kg ・2学期になると,Bは,日がたつにつれて,C教諭の指導に反抗することが多くなり,多いときは毎時間のようにしかられては反抗、Bは,指導を受けると,「うるさい。」,「関係ない。」,「くそばばあ。」などと言い,教室を飛び出すことも10回近くあった ・平成18年3月16日C、Bの間に諍いが生じ、両者は大声で言い争いになり、C教諭は,いすに座っているBの胸ぐらを両手でつかみ,Bの身体をゆすったため,Bはこれに抵抗し,いすから床に倒れ落ち、Bが「帰る。」と言うと,C教諭は「勝手に帰んなさい。」と大声で言い返し,教室前方の黒板の方に向かい、他の児童らは,C教諭がふだん以上に激しくBをしっ責する様子を見て,静まりかえった ・Bは教室を飛び出し、数分後、教室に戻るも、C教諭は,「何で戻ってきたんね。」と怒鳴り,Bは,自分の席にあったランドセルを取って,再び教室を飛び出していった ・Bの母親が、買物から午後4時半過ぎに帰宅し、Bの部屋に入ると,Bがシャンデリアにかかったひもで首をつって折り、病院に搬送するも同日午後6時10分死亡 ・Bの両親が、Bは,担任教諭Cの違法な体罰が原因で自殺したと主張し,北九州市に対して,国家賠償法基づく損害賠償、独立行政法人日本スポーツ振興センターに災害共済給付金を請求 ○平成21年10月1日福岡地裁小倉支部判決(判タ1321号119頁、判時2067号81頁)は,詳細な事実経過を認定した上,担任教諭による胸ぐらを両手でつかんでゆするという行為の態様やBの転倒やその後の教諭の対応等を考慮すると,同教諭の行為は,社会通念上許容されない有形力の行為であり,「体罰」に該当する違法行為であり,かつ,教室を飛び出した後教室に戻ってきたBに対し,「何で戻ってきたんね」と怒鳴ったことは違法であるとし,北九州市の損害賠償責任を認めました。 ○問題は、C教諭と体罰とB自殺の因果関係です。本判決は,Bは,担任教諭に頻繁にしかられ,体罰を受けたことから,衝動的に自殺に及んだものと思われますが、「本件懲戒行為及び本件事後行為以外に,Bが自殺の動機を有していたとはうかがわれず,Bの自殺が本件懲戒行為及び本件事後行為から1時間前後のうちに行われていることを考慮すると,Bは,専ら本件懲戒行為及び本件事後行為が直接的な原因となって自殺したと認められる。」,体罰と自殺との因果関係を認めました。 ○Bの死亡による慰謝料,逸失利益等の損害については、Bの心因的要因が相当程度寄与していることに加え,自殺自体が損害の拡大に寄与した程度を考慮すると,損害の公平な分担の見地から,民法722条を類推適用し,その損害額の9割を減額するのが相当として、総額約880万円余認めました。 ○独立行政法人日本スポーツ振興センターに災害共済給付金を請求については、Bの死亡が,省令24条3号所定の「学校の管理下において発生した事件に起因する死亡」に該当することは明らかであり,被告センターは,原告らに対し,センター法,16条1項及び2項,施行令4条2項に基づき,施行令3条1項3号所定の死亡見舞金2800万円の支払義務を負うとして全額支払を認めました。 以上:1,522文字
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