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給費制の復活と司法修習の充実を求める集会記事雑感

平成26年 4月20日(日):初稿
弁護士ドットコム 4月18日(金)11時38分配信の”「若者はお金でふるいにかけられている」 若手弁護士が訴える「司法修習」のゆがみ” との記事に、日本弁護士連合会(日弁連)の村越進会長の以下の談話が掲載されていました。
●日弁連会長「質の高い法曹は国の人的なインフラだ」
続いて、今年4月に日弁連会長に就任したばかりの村越会長が、司法修習制度の充実に向けて、全力で取り組む考えを明らかにした。

「給費制がなくなり、貸与制になったことで、法曹を目指すうえでの経済的な負担が大幅に増加しています。修習生の給与がなくなり、貸与になって、経済的な負担が300万円以上増えたことが、若者たちが法曹を目指すことをためらわせることになっています。そして、法曹志願者が激減しているという異常な事態が生じています。

これは大変なことです。将来にわたって、日本の司法を支え、民主主義と人権を守っていく優秀な人材が法曹界に来てくれないということです。また、この国の発展を支え、国際社会の中で日本が頑張っていくことを支える人材が乏しくなるということです。2000人の修習生だけの問題ではない、この国の将来がどうなるのかという大きな問題なのです。

私が修習生だったころは、修習は2年でした。今は1年です。この期間で大丈夫かなという思いはありますが、せめてこの1年間は修習に専念してほしい。アルバイトなどしないで、全力で一人前の法曹になるために研鑽を積んでほしいわけです。そういう、修習生が安心して、しっかり勉強できる環境を何としても早く整えなければいけないと思います。

世の中で、なぜ法曹ばかりを優遇するのか、という意見も聞かれます。しかし、この国の司法、民主主義、人権を担う、質の高い法曹は、いわばこの国の人的なインフラです。こういうものをしっかり養成して、社会に提供していくことは、医師の場合と同様に、国の責務ではないでしょうか。

ことに修習生に対する『給費』の実現を含む経済的支援の充実・強化は、喫緊の課題だと思っています。みなさんと力を合わせ、全力で取り組み、なんとしても実現してまいります」
○この村越日弁連会長の、「この国の司法、民主主義、人権を担う、質の高い法曹は、いわばこの国の人的なインフラです。」との言葉を法曹、特に弁護士以外の一般国民に広く理解して頂けるとは、到底、思えません。というのは、弁護士業務は基本的に公務ではなく、自由業務で、お金にならない仕事は引き受けない自由があるからです。実際、私が弁護士になって、お客様から聞いた言葉に「弁護士さんて、お金にならない事件はやってくれませんからね。」という言葉があります。※私のことではありません(^^;)

○いやいや、弁護士はお金にならない仕事を正に手弁当でやっている例が山程あるではないかと囂々たる非難を浴びそうです。確かにこのような例はありますが、弁護士業務全体から見ると業務量的にも担当人数的にも微々たる割合です。お金にならない事件の典型として国選刑事事件がありました。私が、若手の頃は、この国選刑事事件の引き受け手が少なくて、国選事件配点担当の弁護士会職員から、引き受けてくれる弁護士が居なくて困っています、何とか引き受けて頂けませんかと懇願されることが良くありました。仙台弁護士会会員数が100名台の頃です。

○ところが、仙台弁護士会会員数が400名に達した平成25年代ではこのお金にならないと言われた国選刑事事件が特に若手弁護士に貴重な収入源で、むしろ取り合いとなっており、引き受け手がないという声は全く聞かれなくなりました。また、私がメイン業務として取り組んでいる交通事故損害賠償請求事件は、10年前まではこれに積極的に取り組む弁護士が少なく、かつ、死亡事故や重篤な後遺障害を残す事件は取り扱っても、後遺障害のない事案やあっても12級以下の軽い事案は取り扱わないと公言する弁護士も多くいました。

○弁護士のドル箱であった多重債務・過払金返還請求事件が殆どなくなったここ1,2年は交通事故事件に取り組む弁護士が激増し、派手な交通事故宣伝HPが彼方此方で見られるようになりました。それでも、後遺障害のない事案、あっても低い事案-要するにお金にならず手間暇ばかりかかる事案-は取り扱っていませんと公言するHPも散見されます。医師法第19条では「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と規定されていますが、弁護士法では、お金にならない事件は受任を拒んではならないと規定されていませんので、基本的に事件受任は弁護士の自由です。

○弁護士の中には、効率的にお金になる事件ばかり受任して年間売上数億円を維持する方もおり、正に腕次第で、いくらでもお金を稼ぐ余地があります。例えば離婚事件でも相当の財産分与が期待できるお金持ちの夫婦の事件ばかり扱って効率的に稼ぐ弁護士も居るとのことです。このような弁護士は、法律扶助で1件着手金10数万円程度の事件はおそらく受任しないと思われます。

○弁護士を「この国の司法、民主主義、人権を担う、質の高い法曹は、いわばこの国の人的なインフラ」として給費制を再現するには、効率的にお金を稼げる仕事しかしない自由を制限しない限り、一般国民の理解は得られないと確信しております。しかし、自由な業務活動が出来なくなることと給費制再現いずれが良いかは難しいところです。
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