平成25年 9月30日(月):初稿 |
○「弁護士の経済的自立論-一体世間はどう見るでしょうか」で、中部弁護士会連合平成21年10月16日付「適正な弁護士人口政策を求める決議」の中の「2 弁護士過剰の弊害」と言う項目を紹介していました。ここの記述が「弁護士の経済的自立論」の核心部分と思ったからです。 ○この中部弁護士連合会が言う「弁護士の経済的自立論」は、「弁護士が経済的に自立しないと本来の弁護士業務が果たせないので参入規制すべき」との趣旨と捉えました。そして参入規制の理由は、弁護士は、「高い倫理観を保持し、その職務に精励」、「職務の独立性と適正性の確保」、「人権救済者」、「日本国憲法の理念に則った司法」・「法の支配」の各実現者という公益的義務を課せられており、この「公益的義務」遂行のために弁護士には経済的自立が必要だからということです。 ○しかし、弁護士全般としてみるとこの「公益的義務遂行者」とは、到底、思えません。実態は、あくまで民間自由業者です。弁護士法第1条に「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と規定され、弁護士の本来業務は、「人権擁護」、「社会正義の実現」として、参入規制論者はこれを錦の御旗とします。しかし、昔から、「弁護士さんはお金にならないことは嫌がる」と言う世間の声があり、この実態が紛れもなく存在しました。 ○この「お金にならないことは嫌がる」実態は、これだけ弁護士業務が大変な時代になった現在でも公然と存在します。債務整理・過払金事件に群がり、その後は、交通事故事件に群がる弁護士の実態です。私が弁護士になった昭和55年当時は、債務整理・過払金返還請求事件は、弁護士にとっては大変気の重い事件でした。手間暇ばかりかかって、お客さまの弁護士費用支払も滞りがちで、お金にならない事件だったからです。30年前のサラ金事件は、余りお金にならず電話口でサラ金業者と怒鳴りあいになるのが常で、ホントに面倒な事件でした。 ○ですから当初サラ金事件は「お金にならないことは嫌がる」実態から、弁護士の主力事件ではありませんでした。それがサラ金規制法の成立と度重なる法改正で、サラ金側の抵抗が出来なくなり、破産手続も徐々に裁判所のマニュアルも整備され手続が円滑化され、10年前にはサラ金事件が弁護士にとって最高に「美味しい事件」に変貌しました。「美味しい事件」とは「楽してお金になる事件」と言う意味です。過払金返還請求事件も借り手側有利解釈最高裁判所判例が続出し、「楽してお金になる」「美味しい事件」に変貌しました。 ○その結果、サラ金専門弁護士が急増して、大量事務員を雇って大量事件処理を行い、正にボロ儲けを実現し、巨万の利益を得る事務所が続出しました。当事務所も、サラ金事件に群がった一例ですが、中途半端で、到底、巨万の利益を上げることは出来ませんでした。サラ金専門と言うことは、実態は、「楽してお金になる事件」専門と自称するに等しく、内心恥ずかしくて表示出来ず、宣伝もせず、大した事件数を扱わなかったからです。それでもサラ金事件だけで事務所売上の3割を占めていた時期があり、この時期はホントに楽でした。 ○どうしてサラ金事件が弁護士にとって楽かというと、仕事の大部分を事務員に丸投げできるからです。ですから、いくら仕事が来ても事務員を大量に雇って大量処理が出来ます。サラ金事件は「サルでも出来る」とまでは言いませんが、基本的に弁護士でなくても少し勉強すれば出来ます。しかし、法律事務独占で基本的に弁護士資格がないと出来ませんので、大量にとっても価格を安くせず済みます。その結果、大量事務処理で、年間数十億円も稼ぐ事務所が出現し、そのことをマスコミにベラベラ得意げに話す弁護士も出て来ました。 このように、楽してお金になる事件に目を付け、大量事務処理で巨万の富を築くことが出来るのは正に民間自由業者だからです。 以上:1,598文字
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