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周旋の意義-昭和34年2月19日名古屋高裁金沢支部判決紹介

平成25年 4月18日(木):初稿
○弁護士法第72条は、以下の通りですが、ここでの「周旋」の意義についての昭和34年2月19日名古屋高裁金沢支部判決全文を紹介します。

第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

但し、昭和46年7月14日最高裁判決での解釈に基づく正確な表現は、
第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
 弁護士又は弁護士法人でない者は、「報酬を得る目的」で且つ「業として」以下の行為をすることはできない。
(1)訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱うこと(法律業務取扱)
(2)前項の行為を周旋すること(法律業務周旋)

となります。

○名古屋高裁は、周旋について「申込を受けて訴訟事件の当事者と訴訟代理人との間に介在し、両者間における委任関係成立のための便宜をはかり、其の成立を容易ならしめる行為を指称し、必ずしも委任関係成立の現場にあつて直接之に関与介入するの要はない」としています。
私は、インターネット上の弁護士紹介サイトは、単に広告掲示板の提供と掲示板へのデータ掲載に過ぎずその実態は「広告」の手助けであり、弁護士法第72条の「周旋」に該当するのだろうかとの疑問を持っていますが、この名古屋高裁見解によると微妙です。

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主  文

 原判決を破棄する。
 被告人を罰金1万5千円に処する。
 右罰金を完納することができないときは金500円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理  由

第5点(事実誤認)について
 併し原判決挙示の証拠を総合すれば被告人は弁護士でないのに、報酬を得る目的を以て業として原判示第一、(一)(二)記載の日時及び場所において、それぞれB並びにC外15名のために法律事務たる原判示各民事訴訟事件につき弁護士Aを訴訟代理人として周旋し、以て法律事務の周旋を業としたものであることを認めることができる。

弁護人は「被告人は弁護士Aに対し電話にて訴訟事件を代理されたい旨連絡したにすぎないのであつて、本件において被告人が一定の法律関係成立に導いた周旋をなしたこと及び其の周旋を業として反覆累行したことの証明はいずれも不十分である」旨主張する。

併し
(一)弁護士法第72条にいわゆる訴訟事件の代理の周旋とは申込を受けて訴訟事件の当事者と訴訟代理人との間に介在し、両者間における委任関係成立のための便宜をはかり、其の成立を容易ならしめる行為を指称し、必ずしも委任関係成立の現場にあつて直接之に関与介入するの要はないと解すべきであるから、所論の如く当事者たるB又はC等の申込を受けた被告人が弁護士Aに対したとえ電話連絡を以て右当事者の訴訟事件の代理を依頼した場合であつても同条にいわゆる周旋に該当するものと解するを妨げず、
(二)又同条にいわゆる「業とする」とは継続して行う意思のもとに同条列記の行為(本件においては周旋)をなすことを謂うものであつて、具体的になされた行為の多少は問うところではないと解するを正当とする。

本件において検察官に対する弁護士Aの昭和32年7月29日附供述調書によれば同人の供述として
「10、私が被告人の紹介で委任を受けた民事事件について申し上げます。昭和29年頃BがDから損害賠償の訴を起されたので其の頃私が高岡へ来た際にBが被告人と共に弁護士会へ来て同人から被告人の紹介で其の委任を受けたのであります。
11、昨年7月頃と思いますが、被告人が私方へ来て高岡市が買収して○○株式会社に提供した高岡市○○の土地について登記をするため、前の登記が誤つてなされているので其の登記抹消の訴訟を起さなければならない(中略)ということでありましたので私は法廷に出るだけのことを引受けたのであります」
なる旨の記載(記録370丁裏)が認められるのであつて、之と原判決挙示の各証拠を総合すれば被告人は原判示のB及びC等の申込を受けて、これらの当事者と弁護士Aとの間に介在し両者間における原判示各訴訟事件代理の委任関係成立のため便宜をはかり、之を成立せしめた事実が明らかであるのみならず、被告人の周旋行為は前認定のとおり前後二回にすぎないけれども、被告人が継続して行う意思のもとに周旋をなしたものであることはE、B、F及び被告人の検察官に対する各供述調書により之を認めるに十分である。よつて事実誤認の論旨はいずれも理由がない。

第3、4点について
 原判決によれば所論のとおり原審は原判示二個の周旋行為に対し刑法第45条前段を適用し、且つ更らに同法第47条を適用して被告人に対し罰金2万円を科したことが明らかである。併し弁護士法第72条所定の行為は営業犯の一種であつて数回繰返すも之を包括して一個の犯罪として処断すべく、之に対し併合罪に関する規定を適用すべきものでなく、且つ罰金刑を以て処断すべき場合に、懲役刑に関する刑法第47条を適用すべからざるものであることは言う迄もない。

 原判決は法律の解釈適用を誤り、ひいて理由にそごを来したもので、かかる誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから破棄を免れない。論旨は理由がある。
 よつて刑事訴訟法第397条第380条第378条第四号後段に則り原判決を破棄し、同法第400条但書に従い当審において自ら判決する。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判官 山田義盛 沢田哲夫 辻三雄)

以上:2,436文字

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