平成23年 9月 8日(木):初稿 |
○「NIBEN Frontier 別冊版紹介-裁判官アンケート結果」で、東京第二弁護士会機関誌「NIBEN Frontier」別冊での裁判官アンケートの中の準備書面についての関根稔弁護士HPで紹介されたものを転載しておりました。その後、この「NIBEN Frontier」別冊を購入しました。表題は「弁護士と裁判所との適切な協働関係の形成を目指して」となっていました。1冊1500円で、富士山マガジンサービスのHPから購入申込が出来ます。 ○この「NIBEN Frontier」別冊「弁護士と裁判所との適切な協働関係の形成を目指して」には、民事訴訟一般について東京地裁民事部裁判官109名から聞いた裁判官アンケート結果の集計と分析が37頁に渡って記載されています。そのアンケートでの質問事項は、訴えの提起・訴状の作成、弁論・準備書面の作成、弁論準備、証拠調べ・書証・証人尋問・本人質問、和解、判決、その他と民事訴訟全般に及んでいます。 ○「NIBEN Frontier 別冊版紹介-裁判官アンケート結果」では、準備書面についてのアンケート結果を紹介しましたが、今回は、準備書面でも「最終準備書面」についての裁判官の考えを紹介します。私は、今から20年以上前の平成3年3月に記載した「パソコン事始め2」で「私は数年前に自分の手抜き裁判で予想外の敗訴判決を得て以来、どんな事件でも総まとめとしての最終準備書面をできるだけ書くように努めていますが、この最終準備書面をデータベース化するだけでも後の事件処理の役に立つのではないかと思っています。」と記載しておりました。 ○この最終準備書面を出来るだけ作成するように努めるようになったのは、ある裁判官との飲み会で、裁判官は書面の山に囲まれており、特に準備書面については、訴訟の最後にそうまとめの最終準備書面を作成して貰い、そこにこの最終準備書面さえ読んで貰えば、従前の書面は読まなくても良いなんて記載されていると大変有り難いと告げられたことがあったからです。書面の山に囲まれた裁判官は、特に重点的に読むべき書面を特定されると有り難いのだろうと推測しました。 ○「NIBEN Frontier」裁判官アンケートでは、「弁護士の力量は最終準備書面でこそ示される。重複があってもできるだけ厚く書いて揺れている裁判所の心証を決定的にする。」との弁護士側意見に対する賛否を問う形式でアンケートされていました。これに対し、裁判官側の回答は、概要、以下の通りで、私としては意外な結果でした。 ●賛同できる(109人中4名) ・証拠評価が割れる案件、間接事実で勝負する案件は、証拠の総合をどういう構成で考えるか、相手の有力証拠をどうつぶすかを明快に論じられると相当価値がある。 ▲部分的に賛同(109名中54名) ・従前の書面と重複があっても一枚の書面で完結した主張をしてもらった方が助かる。但し「厚く」書くこととは別問題。 ・それぞれの立場から見た証拠判断を示されると、当事者の関心に応えた的確な判決理由記載が出来る。 ・最終準備書面には人証結果を踏まえた証拠全体の評価を期待する。 ・最終準備書面では主張のまとめが重要で、それが証拠とどのように結びついているか明らかにすればよい。 ・最終準備書面では、分量に拘らず、証拠調べの結果を引用して事実認定に関する意見を重点的に書くべきである。 ・判決を念頭においた場合、それのみ参照すればいいよという準備書面があれば役立つ。 ・弁護士の力量は審理過程でこそ示されるが、最終準備書面はその集大成で最も力量が現れる。 ×賛同できない(109名中41名) ・証拠調べに入るまでにどれだけ説得力ある準備書面を書けるかで勝負は決まり、ほとんどの準備書面は判決書きには不要。 ・争点整理手続で争点が整理され、必要な部分に限り人証調べをしているから最終準備書面は不要。 ・争点整理前の初期段階の書面が重要。 ・最終準備書面で心証が決まる事件などほとんどない。 ・人証調べ終了で即終結の扱いが増えており、当事者の主張より証拠そのものが結論を下すので最終準備書面は重要性がない。 ・しかし適宜証拠を引用し、相手方の主張にも配慮した説得力ある最終準備書面が出ると判決は書きやすい。 総合的には、やはり、主張が良く整理され、証拠の引用も十分な最終準備書面は価値があるようです。 以上:1,787文字
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