平成23年 6月 2日(木):初稿 |
○私は,昭和50年代の弁護士に成り立ての頃から月刊誌「選択」を30年近く愛読しています。ときに大変有益な情報を提供してくれるからです。平成23年6月号の山地憲治地球環境産業技術研究所長巻頭インタビュー記事に大変考えさせられました。福島原発事故の悲惨な状況に関する連日のニュースにはただただ気が重くなり,ニュースを見ること自体が苦痛極まりない状況ですが、世論の多くは東電だけを悪者にして叩いていることには少々違和感を持っていました。私は東電管轄地ではありませんが、これまで電力の恩恵を受けて電力使い放題してきた国民全体の責任ではないかとの思いもあり、また太陽発電等自然エネルギーが喧伝されていることには、そんなに簡単なことではないのではと漠然と感じていたからです。 ○山地憲治地球環境産業技術研究所長巻頭インタビュー記事で、初めて判り、そういうことだったのかと目から鱗が落ちたのは、「電力の品質」の問題です。要点は以下の通りです。 ・電力には「品質」があり、周波数と電圧の安定感で決まる ・周波数が変動するとあらゆる場面で使用されているモーターの回転数が変動する ・モーターの回転数が変動すると、単純な「コイルを巻く」等の作業をする機械でも途端に不良品を生じ、これは生産活動-経済に大打撃を与える ・日本の供給電力は世界最高水準「品質」で国の産業を支えてきた ・太陽光や風をによる再生可能自然エネルギーは自然条件で想像以上に出力が変わり、供給量が「暴れる」 ・自然エネルギーが「暴れる」ことを抑制して「品質」を保つには膨大なコストがかかり電気料金を押し上げる ・電力の「品質」に不安がある上に高価となれば製造業は国外に逃げていく 原発反対派からは相当の批判がある見解でしょうが,私は説得力を感じました。 ○福島の惨状を見ると原発に頼るのが如何に危険かを痛感しますが、山地氏の意見を聞くと原発依存もやむを得ないところかとも思います。しかし徹底した安全管理が大前提であり、浜岡原発停止も現状ではやむを得ないところかと揺れるところです。 ○選択同号記事で目にとまったのは「将来の首相候補の『真贋』『浜岡を止めた男』細野豪志」との記事です。浜岡原発停止の主導的役割を果たしたのは、その経緯に詳しい政府高官の話しでは、福島原発事故発生直後から事故対策統合本部に首相名代として常駐し事実上政府の事故対策責任者を務める静岡5区選出首相補佐官細野豪志氏とのことです。 ○政府高官によると、発端は4月上旬、福島原発状況報告で菅首相に面会した細野氏は、「浜岡が心配です」と切り出し、「福島第一と浜岡は構造が良く似ており、浜岡で大事故が起きれば静岡だけでなく首都圏・名古屋圏にも放射性物質が飛散する恐れがあり、最近、そういう夢を良く見るんです」と、当時浜岡を気にはかけるも経済への影響を考慮し思考停止していた菅首相に伝え、更に加えて「浜岡の地震リスクは,他の原発とは全く違い『浜岡は特別』との理屈も成り立つんじゃないでしょうか」と進言し、それから福島・浜岡の二正面作戦に取り組んだとのことです。 ○以下、細野氏の徹底した気配り状況です。 ・地元メディア向け会見で自分のことには触れず、「4月初め頃から、首相は浜岡原発について非常に気にして、私に検討を指示された」と首相主導を強調、「海江田さんと一緒に仕事をさせてもらって本等にすごいと思った」と苦渋の決断をした海江田大臣へ配慮。 ・前原グループに入会し「前原さんを尊敬している」と公言してはばからず、前原代表時代は役員室長に起用され、前原辞任後後任の小沢氏に続投を命じられると献身的に尽くし「細野は信用できると」と特別に目を掛けられ、更に菅首相にも仕え三君に巧く仕えている。 ・小沢幹事長時代の高嶋筆頭副幹事長の言葉 「細野は親分にかわいがられるつぼを心得ている。自分で答えを持っていても、あえて小沢幹事長に相談し、助言を求めて初めて気付いたような顔をする。ああいう芸当は意識して出来るものではない。自力で高松城を攻め落とせるのに敢えて信長の助けを求めた秀吉に似ている。」 ・官邸事務方評 「首相の耳に入れておくべきことはフットワーク軽く統合本部から官邸に戻り短時間でも報告を欠かさない。笑顔を絶やさず腰も低い。誰彼かまわず怒鳴り散らす首相が細野補佐官にはムッとした顔を見せたことがない。」 ○こうしてみると細野氏はサービス精神のかたまりのように見え、どの分野に行っても成功する資質を持った方のようです。嫉妬の海の政界でその特出ぶりにやっかみも相当あるとのことですが、還暦近くになってもサービス精神に欠けてうだつの上がらない私なんぞは,この39歳の若造を少しは見習うべきと感じた次第です(^^)。 以上:1,934文字
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