平成23年 2月 2日(水):初稿 |
○「日弁連法曹人口政策会議意見書賛否両論遣り取り」を続けます。 日弁連内で合格者数削減賛成派と反対派の意見が対立していますが、賛成派の根拠は、「法曹の質」の低下と、「就職難問題」発生を上げる方が多いと思われます。 ○この「法曹の質低下」、「就職難」との2つの理由で合格者数を減らすべきかどうかについて、激論が交わされています。この「法曹の質低下」、「就職難」は、法曹志願者を激減させ、優秀な人材が法曹界に集まらなくなり、更に一層の質低下と就職難を呼ぶ悪循環となり、結果として法曹制度が崩壊するとの極端な理屈にもなります。 ○先ず「法曹の質」ですが、受験者中上位500人しか合格出来なかったものが、上位2000人まで合格出来るようになったのですから、法律学習得レベルでの質が低下するのは当然です。しかし、法律学修得レベルの高さとサービス業としての実務法曹家としてのレベルの高さが必ずしも一致しないところがあり、法律学修得レベルの低下イコール法曹の質低下と断言できない難しい問題があります。 ○次に「就職難」ですが、これは、弁護士に限らず一般大学生、高校生全て就職難に直面しており、他の学校卒業者に限らず他の資格においても、昨今の不景気で就職難が常態化しています。世間一般では、就職難が当たり前なのに、一人弁護士業界だけは、就職難だから定数を減らせと言えるかという問題があります。 ○諸外国との比較ですが、欧米では、就職難を理由に参入規制を設けることは禁止されています。また、今回初めて知りましたが、日本はWTOの一員であり,サービス貿易の自由化を目的とするサービス貿易一般協定(GATS)の締約国で、GATS16条2項は,経済上の需要を考慮する等の理由を問わずサービス提供者の数を制限してはならないと定めており,経済上の需要を理由として弁護士の数を制限することはこの規定に違反するということです。 ○ドイツでは、 ・何人の弁護士を必要とするかは市場が決めるべきで、職業選択の自由に照らし全ての法曹志望者がその能力を市場で問うチャンスを奪ってはならない ・職業遂行に必要な国家資格に定員を設ける事は、新規参入希望者の職業選択の自由を害して原則違憲 ・市場による選別・淘汰こそあるべき姿で、食っていけない弁護士がいるからといって新規参入者を規制せよというギルド的議論は存在しない とのことで、EUにおいても、同様で法曹だけが特別扱いされることはないとのことです。 ○平成23年2月1日、日弁交通事故無料相談担当でしたが、弁護士会館相談室に4時間半待機して1件も相談がないという厳しい状況です。おそらくは交通事故無料相談を謳う個々の法律事務所が増え、ネット等で大々的に宣伝され、更に弁護士事務所以外でも交通事故無料相談を実施しており、わざわざ弁護士会まで来なくても無料相談が出来る状況になっているのが原因の一つと思われます。弁護士が楽に稼げる時代は終わったことをシッカリ自覚して精進する必要があります。 以上:1,229文字
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