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日弁連法曹人口政策会議意見書賛否両論遣り取り

平成23年 1月30日(日):初稿
○現在、日弁連では、法曹人口問題をどうすべきか色々意見が交わされていますが、合格者数削減賛成派と、反対派に別れて、おそらく賛成派の方が数では上回っていると思われます。

以下、合格者削減賛成派と反対派(私)の遣り取りサンプルを掲載しますが、詰まるところ、争点は、弁護士既得権保護如何に尽きるように感じました。弁護士会全体では、合格者数削減賛成派が相当多数と思われます。私の意見は、やせ我慢の気が大いにあり、意地を通せば窮屈にも感じます(^^;)。

(賛成派)業革委員会では、これまでの増員ペースに合わせた弁護士業務の新規開拓(緑の大地)を求めて業務改革に取り組んでこられたにもかかわらず、諸先生が、未だに、そんなものは絵空事だとお気づきにならないのはなぜでしょうか?

(反対派)新規開拓(緑の大地)が厳しい状況であることは仰るとおりで、私自身、昨今の仕事減少に相当の危機感を感じております。ただ割合は少ないでしょうが、マーケッティングの創意と工夫で売上げを伸ばしている事務所も確実に存在します。絵空事と断定は出来ないと感じています。

(賛成派)たとえば2万人の弁護士人口を5万人にするのは、駅前に4店舗ある百貨店が10店舗 に増えることを意味します。マーケットの大きさでいえば、(弁護士1人の売上が4000万円と仮定して)8000億円を2兆円にすること、つまり1兆2000億円の売上を持つ企業(高島屋・ヤマダ電機・鹿島建設など)を創出するに等しい。事実上家内制手工業の我々に、これは可能でしょうか?

(反対派)そんなことは、到底、不可能でしょうね。

(賛成派)弁護士の売上や所得水準を維持する必要はないというのもひとつの見識ですが、じゃあ、現実に割を食うのは誰でしょう?

(反対派)既存弁護士に決まっています。それも期の若い弁護士ほど割を食いやすい、即ち、これまでのように簡単に商売として成り立たなくなり、早期独立も難しくなるでしょう。しかし、これまで恵まれすぎていたという考え方も成り立ち、おそらく世間一般は、その考えと思われます。

(賛成派)面接を何度も何度も何度も断られ(数十回はザラ)、就職先もなく、企業にも蹴られ、奨学金債務を背負ったまま、OJTなしに即独・宅・ノキを始める新人弁護士に「君の努力次第だよ」と言い放つのは、手足を縛って川に放り込み「泳げ」というのに似ていませんか?

(反対派)仰せごもっともな面もあります。しかし、合格者2000人から1000人に絞った場合、確実に1000人が弁護士資格を得られません。この1000人の方は、「泳ぐ」どころか、川に入ることも全く出来ません。この1000人の方は、たとえ就職先がなかろうが、「君の努力次第だよ」と言われようが、弁護士資格が欲しいことは間違いありません。資格さえ取得すれば、あとは「君の努力次第」と確実に言えます。「努力」しなければ淘汰されるだけですが、人数削減で合格出来なくなった方は、この「努力」の機会すら与えられません。

(賛成派)国選・法律相談で糊口を凌ぎ、結婚さえ覚束ない新人弁護士(婚約破棄・離婚もザラ)に、自己犠牲のもとで社会的弱者を守り、社会正義を実現することを期待できるのでしょうか?「衣食足りて礼節を知る」とか「貧すれば鈍する」という諺もあるんですけど…。

(反対派)自己犠牲のもとで社会的弱者を守り、社会正義を実現するのは弁護士だけの義務でしょうか。また現在の弁護士でこのような姿勢に徹している方の割合はいかほどでしょうか。もし合格者削減を言う場合このような自己犠牲を全ての弁護士に強いる体制が必要でしょう。そんなことは可能でしょうか。また、資格すら与えられない1000人の方は、就職難でも資格を得た方より、遙かに悲惨な状況です。結婚どころか恋人も作れないでしょう。何しろ、世間からは不合格の烙印を押された無為徒食の浪人生とみなされたままですから。私も大学卒業後の受験生時代は肩身が狭く辛い日々でした。

(賛成派)直近5年間の日弁連または単位会の業務改革委員会委員諸兄の献身的な活動により、どれだけの有効需要が生み出されたのでしょう? 100億円でも10億円でもいい。そういうお宝を見つけたPTがあれば教えて下さい。

(反対派)多分、ないでしょうね。しかし一例を挙げると私担当の交通事故分野に関しては、各弁護士個人のマーケッティング努力で確実に需要が掘り起こされ、実際、交通事故事件が増えているそうです。合格者増による弁護士間競争激化が、確実に需要を掘り起こし、日弁業革PTの努力より遙かに効果を上げています。

(賛成派)国民が弁護士増加を望んでいるといいますが、そのような世論調査や統計が発表(報道)されたことは一度もありません。なぜでしょう?

(反対派)これは判りません。ただ、これまで見向きもされなかった僻地にも弁護士が目を向けるようになり、嫌々やっていた国選事件も奪い合いになる状況は、国民は好ましいと思う方が多いように感じています。さらに何よりもこれまでは殿様商売と揶揄されていた弁護士業務が、お客様は神様とのサービス精神がないとやっていけない状況になることは、国民の望むところと思います。

(賛成派)ひょっとすると、国民は、裕福そうな弁護士たちが苦しんでいるのを見て溜飲を下げたいだけで、弁護士人口の増加(=リーガルコストの増加)は望んでいないんじゃないでしょうか?

(反対派)溜飲を下げたいのは、正に仰るとおりと思います。ただ弁護士人口の増加を望んでいないというのは,論理的矛盾ではないですか(^^)。一般国民には、弁護士人口の増加=リーガルコストの増加との感覚はないような気もしますが。

(賛成派)弁護士が今よりももっと増えるほうが、その弊害と比較衡量しても、本当に国民(社会)のためになるのですか?(医師の数はなぜ制限されているのでしょう?)

(反対派)上記の通り、僻地にも弁護士が目を向け、競争激化によるサービス精神溢れる弁護士の増加は、少なくとも現時点では、国民は歓迎しているように感じています。法律事務所のTV等での派手な宣伝合戦は私も困惑していますが、超高額費用にも拘わらず継続しているのは、確実に顧客が集まっているのでしょうね。

(賛成派)「法曹人口増員に反対するとマスコミに叩かれる」と脅えておられる方がいらっしゃるようですが、日弁連は、何が国民のためかを唯一の基準として意見を言うべきではないでしょうか?

(反対派)弁護士会の側ではなく、国民の側から、合格者数制限が国民のためだとの意見が多数出て来たら、私も「喜んで」それに従います。
ただ弁護士の側からは、「恥ずかしくて」とても言えません(^^)。何しろ、謙虚で控えめをモットーにしているものですから(^^;)。
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