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弁護活動を熱心にやり過ぎた余り懲戒になった例

平成21年 7月27日(月):初稿
「『自由と正義』平成19年6月号は懲戒公告多数」に「弁護士に対する懲戒例は、日弁連機関誌として月1回発行される『自由と正義』に被懲戒者が実名で公告され、最近は、毎月結構な件数の懲戒例が掲載されるようになり(中略)懲戒例の公告を読むのが日課となりました。」と記載していましたが、平成21年7月現在も同様です。その懲戒例の中で、印象に残ったものがありました。その正確な懲戒処分要旨は、後記の通りです。

○事案要旨は、次の通りです。
被懲戒者X弁護士は、傷害による損害賠償請求されているAの代理人となった。
被害者がAによる傷害の証拠として、B病院発行診断書を提出していた。
Xは、このB病院発行診断書の信用性を弾劾するため、DをB病院で診断を受けさせた。
Dは、傷害の事実がないのに傷害を受けたと申告してB病院から傷害を認める診断書を得た。
Xはこの「傷害の事実がないのに傷害を認める診断書」を裁判で弾劾証拠として使用した。
その結果、Aの傷害の事実は認められずAは勝訴した。


○X弁護士の行為は、いい加減な診断書作成と言う違法行為をしているB病院の違法行為をさせるためのいわばおとり捜査をしたものであり、ここまでやるのは弁護士の行為としては、「やり過ぎ」であり、「弁護士としての品位を失うべき非行に該当」するとして懲戒処分となりました。

○このX弁護士の行為は,果たして、やり過ぎでしょうか。弁護士に依頼する立場では、これだけ熱心に弁護活動してくれるのは頼もしいと評価して、このような弁護士に依頼したいと言う方も多いはずです。かように安易に傷害の事実を確認する診断書を作成する病院に問題がありますが、その問題性をどうやって立証するかというと現実にはなかなか難しい面があります。

○私の知る医師は診断書の発行は相当慎重でその使用目的を確認し、争いに巻き込まれる可能性のある診断書の作成は一層慎重になります。然るに、かように内容をよく確かめないで安易に作成された診断書の信用性を弾劾する方法としては先ず作成した当該医師を証人として申請する方法があります。ところが現実には医師の証人尋問の実現はなかなか困難な面があります。また仮に証人尋問が出来ても、当該医師は自己の診断書の正当性を主張するのみで却って被害者に有利になる可能性もあります。

○とするとX弁護士の様な方法もやむを得ないとも言えます。このX弁護士の指示による虚偽内容診断書によって被害者側の信用性が失い、民事・刑事いずれでも被害者の主張は裁判所及び検察官に認められませんでした。この結果も踏まえれば、「やり過ぎ」として懲戒処分にすることには疑問を感じます。しかし、そうかといって、同じ場面に立ったら,私自身、そこまでやるかと言うと、ためらいを感じ、まずしないだろうと思いますが。

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1 懲戒を受けた弁護士
(中略)
2 懲戒の種別  戒告
3 処分の理由の要旨
 被懲戒者はAが懲戒請求者を殴打し傷害を負わせたか否かを主要な争点とするAと懲戒請求者間の不法行為に基づく損害賠償請求本訴反訴事件におけるAの訴訟代理人であった被懲戒者は懲戒請求者が証拠として提出したB病院C医師作成の診断書の証拠価値を争うためAの関係者に対し適当な人物を選んでB病院に受診させ「友人から首のあたりをなぐられた」と虚偽の事実を申し述べ診断書を書いてもらって来て欲しい旨依頼した。

 被懲戒者の意を受けたDが2007年3月15日及び同月20日にB病院E医師の診察を受け被懲戒者の指示通りの嘘を言い、会社に提出すると偽って交付を受けた2通の診断書を受領した被懲戒者は上記訴訟にこれを証拠として提出し上記C医師作成の診断書程度のもであればいくらでも作成してくれるとその証拠価値を弾劾した。

 被懲戒者が医師に虚偽の事実を述べさせて誤診させ虚偽の診断書を入手した行為は証拠を収集する場合にも適正な手続きに従い不当な手段を用いてはならないという弁護士の基本倫理に抵触するものであり、正当な弁護活動の範囲を逸脱し一般市民の弁護士に対する信用を失墜させる行為といわざるをえないのであって弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

 もっとも被懲戒者の行為は依頼人を擁護すべくもっぱらC医師作成の診断書の信用性を弾劾する目的でなされた防衛的な行為であったことが認められること、上記訴訟の第1審判決がAによる殴打の事実は認めることができないと判示し控訴審においても第1審の結論が支持されていること及び懲戒請求者がAになした刑事告訴が不起訴処分になっていることなどの諸事情を考慮し懲戒処分のうちから戒告を選択した。

4 処分の効力の生じた日
2009年3月25日
2009年6月1日  日本弁護士連合会
以上:1,987文字

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