平成20年 7月30日(水):初稿 |
○日弁連の平成20年7月18日付「法曹人口問題に関する緊急提言」が、日経新聞を始め各新聞社説等で相当批判されていますが、隣接法律専門職団体である日本司法書士会連合会会長からも「率直な感想」が日本司法書士会連合会会長談話として公表されており、末尾に引用します。 ○日本司法書士会連合会は、日弁連に対し日司連と略称されますが、政治力は日弁連より勝ると言う噂も聞いたことがあります。その最大の成果が、認定司法書士制度での簡裁代理権獲得であり、これによりそれまで弁護士が独占していた法律事務業務の一角に食い込み、いまや債務整理分野は司法書士の方が弁護士より積極的に取り組み業務範囲を拡大しているとも言われています。 ○その司法書士業界トップの日司連会長さんが、「我が国の司法制度における法律家を弁護士のみに限定して考えるべきではなく、隣接法律専門職の専門性を尊重し、その役割分担と業務分掌を正当に評価することによって、その結果として、弁護士人口の適正な数如何は、自ずと決定されてくる」と結論付けています。 ○日司連としても弁護士の数が増えて司法書士との縄張り争いが激化するのは避けたいところと思われますが、さすがに弁護士の数が増えすぎることに懸念を表明するまでには至っていません。法律専門職として司法書士も居るのだからこれもカウントすれば弁護士の大幅増員は不要との法曹増員抑制論への援護射撃を意図したものなのかどうかは、ちと不明確です。 ○日弁連には、司法書士・行政書士の業務分野・範囲の検討・確定作業を担当する委員会があり、私も名目委員になっていますが、司法改革で参考にしたアメリカ法曹制度では日本の司法書士・行政書士資格の仕事も全て弁護士が担当しており、その適正数を検討するには、司法書士・行政書士、更に社会保険労務士、弁理士等もその役割分担と業務分掌程度を考慮する必要はあると思われます。 平成20年07月29日 【会長談話】日弁連の「法曹人口問題に関する緊急提言」について 日本司法書士会連合会 会長 佐藤純通 2008年7月18日付け、日本弁護士連合会の法曹人口問題に関する緊急提言について、隣接法律専門職団体である日本司法書士会連合会会長として率直な感想を述べる。 緊急提言でいうところの、法科大学院を中核とする法曹養成制度の整備状況の未成熟に鑑み、数値目標にとらわれずに、法曹の質に充分に配慮すべく、弁護士人口の急増のペースダウンを求め、狭義の法曹人口の増員計画について再検討を求めるとの趣旨については、一定の理解を示すことができる。 しかしながら、提言においては司法書士制度の在り方にも関する重要な視点が顧慮されていない。そもそも欧米諸国とは異なり、日本の法制度において法律事務を担う法律専門家としては、狭義の法曹三者だけではなく、いわゆる隣接法律専門職者が多種多数存在し、長年にわたり法律事務を取り扱うことを業として分担分掌してきているという我が国の司法・法務分野の制度実体に何ら触れられていないのは、残念である。 実際、裁判その他の法による紛争解決においても、司法書士の簡易裁判所訴訟代理等関係業務の権限付与により、多重債務者救済問題等をはじめとして、国民への法律相談や紛争解決に大きな役割を果たし、すでに一定程度の国民の司法アクセスの拡充に寄与している現状には一切触れられていない。 これら隣接法律専門職の存在や司法制度改革後のこれら隣接法律専門職者が挙げてきた成果を抜きにして、また、いまだ司法過疎の問題をいかに解決すべきかなど、法的サービス全般にわたる総合的な分析をしないまま、ひとり弁護士だけの質をとりあげて一般化し、これを法曹の質の問題とし、弁護士のみを法曹として法曹人口増加の見直しが提言されていることは、在野法律家の中核を担う弁護士会の提言としては、些か偏面的であり説得力が欠けてしまう。 司法制度改革の全体の統一的かつ調和のとれた実現をめざすという改革方針の実現のためには、我が国の司法制度における法律家を弁護士のみに限定して考えるべきではなく、隣接法律専門職の専門性を尊重し、その役割分担と業務分掌を正当に評価することによって、その結果として、弁護士人口の適正な数如何は、自ずと決定されてくるはずである。 以上:1,754文字
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