平成18年10月11日(水):初稿 |
○司法書士の業務範囲は従来、登記手続の代理と裁判所や法務局に提出する書類の作成代行でしたが、司法書士会の業務範囲拡張運動が実り、平成14年の司法書士法改正によって法務大臣が実施する簡裁訴訟代理能力認定考査で認定を受けた司法書士は、簡易裁判所の管轄となる140万円以下の範囲内で、訴訟(少額訴訟含む)・調停・和解・民事保全といった手続の代理及びこれらの事件に関する法律相談のほか、裁判外紛争解決手続業務として、仲裁及びその代理、土地の筆界特定手続の代理を行うことができるようになり、この認定を受けた司法書士を認定司法書士と呼び、他の司法書士と区別されています。 ○これは弁護士の法律事務独占を定めた弁護士法72条の規定「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」の大きな例外規定の一つになりました。 ○認定司法書士制度の新設により、140万円以下の法律事務代理資格を得た認定司法書士は、これまで弁護士の業務分野であった多重債務整理事件にも大きく進出していますが、この140万円以下の解釈について弁護士会側と司法書士会側の見解に相違があります。但し、何れも日弁連或いは日司連の統一見解かどうかは不明です。 ○Aさんの債務がサラ金5社に300万円あり、1社平均60万円で140万円を超える金額がない場合、司法書士会側は、1社ごとに判断すれば足りるので司法書士の業務範囲内と解釈し、弁護士会側は多重債務総額が140万円を超えれば業務範囲外と主張しています。 ○また1社の債務額についても司法書士会側は利息制限法に引き直し実質債務額が140万円以内であれば司法書士業務範囲内と主張し、弁護士会側はサラ金業者が主張する名目残額が140万円を超えれば司法書士の業務範囲外と主張しています。 ○更に名目債務額が100万円の債務でも利息制限法引き直し計算をすれば50万円の過払いとなっている事案でも司法書士会側は本来債務がないところ50万円の返還請求をするだけだから司法書士の業務範囲内と主張し、弁護士会側は差額が150万円なので司法書士の業務範囲外と主張しています。 ○これらは依頼者側からみれば司法書士・弁護士両業界のみにくい縄張り争いに見えるかも知れませんが、法律事務取扱に法律上の資格制限がある限り統一見解を定めないと実務が混乱しますので両者合意できる統一見解が必要であり、現在、日弁連と日司連で協議が継続されています。 以上:1,140文字
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