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破産手続開始決定後取得財産でも破産財団に属する例-要注意!!3

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平成29年 2月 9日(木):初稿
○「破産手続開始決定後取得財産でも破産財団に属する例-要注意!!2」の続きで、第一審平成26年6月18日東京地裁判決(最高裁判所民事判例集70巻4号1109頁、金融・商事判例1492号25頁、金融法務事情2052号75頁)の内、弁護士である被告Y3の不法行為責任についての判断部分全文を紹介します。


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4 争点4(被告Y3らは,被告Y1が本件金員を費消したことについて,不法行為責任を負うか。)について
(1)
ア 前記第2の1判示の事実及び前記3(1)認定の事実によれば,被告Y1は,本件保険金等の支払を受けて,200万円は葬儀費用に費消したものの,残りの金員について,被告Y5から,破産裁判所の見解は,本件保険金等は本件各破産財団に帰属するというものであり,原告らから,本件保険金等の残りの金員を本件各破産財団に引き渡すよう求められているとの説明を受け,平成24年6月1日に,Y2及びBが被告Y3らのもとに相談に行ったところ,被告Y3は,本件保険金等請求権の破産財団帰属性については,調べてみなければ分からないものの,本件金員については,葬儀費用,墓所費用,生活費等として支出することは構わない旨の助言をし,それを受けて,被告Y1は本件口座から2200万円を引き出し,さらに,被告Y3は,平成24年6月7日には,本件保険金等は自由財産であるとの考えを固めた上,本件金員の費消については,被告Y1に対し前記と同様の助言をし,その後も,被告Y3の本件金員の費消に関する被告Y1に対する説明は変更がなかったというべきである。

イ そして,被告Y1が,亡Aの葬儀費用として既に費消した200万円以外に,親族の葬儀出席のための上京費用,亡Aの診療費,お墓代,四十九日の法要代,御布施代,生活費,被告弁護士らに対する弁護士費用等として800万円を費消した行為は,本件各破産財団に帰属すべき財産を費消したものであって,債務者の財産を債権者の不利益に処分する行為として,詐欺破産罪(破産法265条1項4号)に当たる犯罪行為となる可能性のあるものであり,破産管財人に対する不法行為を構成するものというべきである。

ウ 前記ア判示の被告Y3の行為は,原告ら及び破産裁判所(ただし,被告Y3が破産裁判所の見解を聞いたのは平成24年6月7日以降である。)が本件保険金等請求権は本件各破産財団に帰属するものとの見解を採っており,被告Y1は原告らから亡Aの葬儀費用を支出した後の本件保険金等の残りの金員を引き渡すよう求められていることを知りながら,被告Y1に対し,犯罪行為となる可能性のある不法行為を行うことについて,助言を求められた弁護士として,葬儀費用,墓所費用,生活費等に支出して構わないとの助言を行い,被告Y1はこの助言に基づいて本件金員のうちの800万円を費消したものというべきであるから,被告Y3の行為は,誠実にその職務を行う義務を負う弁護士としての注意義務(弁護士法1条2項参照)に違反するものであり,被告Y1との共同不法行為を構成するものというべきである。

エ 他方,被告Y4については,本件破産事件の破産者代理人として,被告Y1と委任契約を締結し,破産裁判所に対して委任状を提出して代理人となったものであるけれども,被告Y3の責任に関する前記ウの判示に照らせば,破産者の代理人であることのみから被告Y1の行為について不法行為責任を負うものとは認められないというべきであり,また,被告Y3のように,被告Y1に対し,本件金員について,葬儀費用,墓所費用,生活費等に費消することは構わないとの助言をした事実も認められないのであるから,被告Y4については,被告Y1が本件金員を費消したことについて,弁護士ないし破産者代理人としての注意義務違反があったとは認められない。

(2) 前記認定判断に関し,被告Y3は,
① 被告Y1が本件保険金等の支払を受けた時点で,その所有権が同人に属するのは明らかであるから,これを費消することは何ら不法行為に該当しないこと,
② 被告Y1は,自己の法的判断に基づいて本件金員を費消したものであり,被告Y3が費消を進めた事実はないこと,
③ 保険金請求権の財団帰属性をめぐって対立する見解がある中で,弁護士がいずれの見解を選択すべきかを強制されるいわれはなく,被告Y3には故意過失がないこと,
④ 原告らは,被告Y1が本件保険金等請求権を行使し,これを葬儀費用に支出することを承認していたこと,
⑤ 原告らは,本件保険証券等を引き揚げず,日本生命及び全労済に本件保険金等請求権が本件各破産財団に帰属するとの通知もしておらず,被告Y1が本件保険金等請求権を行使したのは,原告らのこれらの職務違反が原因であり,被告Y3にその責任を問うことはできないこと,
以上の点を主張する。

 しかし,前記①の点については,被告Y1が本件金員を費消することが,本件各破産財団に帰属すべき財産を費消するものであることは明らかであり,したがって,原告らの権利を侵害する不法行為に当たるものというべきである。

 前記②の点については,被告Y3が平成24年6月1日以降,B及びY2を通じて,又は被告Y1に対して直接,被告Y1が本件金員を葬儀費用,墓所費用,生活費等として費消することは差し支えないと助言し,被告Y1はこの助言に基づいて本件金員のうちの800万円の費消をしたものと認められることは,前記(1)判示のとおりである。

 前記③の点については,財団帰属性について原告ら及び破産裁判所の考え方が示され,原告らから本件保険金等についての保全が求められている状況で,これを費消してよいと助言した点が弁護士としての注意義務に違反するものと解されることは,前記(1)ウ判示のとおりである。

 前記④及び⑤の点については,原告らが,被告Y1が本件保険金等請求権を行使することを黙認していたと認められることは,前記3判示のとおりであるけれども,そうであるとしても,被告Y1が支払を受けた本件保険金等を原告らの指示に反して費消することが不法行為に当たると認定すること及び被告Y3が被告Y1に対して助言した行為が被告Y1による費消行為について共同不法行為に当たると認定することを妨げるものではないというべきである。

 以上のとおりであるから,被告Y3の主張する前記①ないし⑤の点は,いずれも前記(1)の認定判断を左右するものではなく,採用することができないというべきである。

(3) 損害について
 前記(1)判示の事実によれば,被告Y1が,平成24年6月1日から同年9月14日頃までの間に,本件保険金等のうち1000万円から被告Y1が被告Y3に相談に来る前に費消していた200万円を除く800万円を費消し,同額の本件各破産財団に帰属すべき財産が失われたことについては,被告Y3の注意義務違反と相当因果関係のある損害に当たると認められる。

 そして,本件金員1000万円について,被告Y1の破産財団に800万円,Y2の破産財団に200万円が帰属すべきであったことは前記2判示のとおりであるから,被告Y3の不法行為による損害についても,これと同様に,本件各破産財団に按分されるものというべきである。
 また,以上判示したところに照らせば,被告Y3が原告らに対して負う損害賠償債務については,被告Y1の原告らに対する不当利得返還債務と不真正連帯債務の関係にあるというべきである。

 したがって,被告Y3は,不法行為に基づく損害賠償として,被告Y1と連帯して,原告Y1管財人に対して640万円及びこれに対する不法行為後の日である平成24年11月16日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金並びに原告Y2管財人に対して160万円及びこれに対する不法行為後の日である同日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の各支払義務を負う。


5 争点5(被告弁護士らの賠償すべき損害額について過失相殺をすべきか。)について
 被告Y3は,原告らが,保険者ないし共済者に対して本件保険金等の支払を停止するなど本件保険金等を保全する措置を講ずることができたにもかかわらず,そのような措置を怠った結果,被告Y1に本件保険金等の支払を受けさせ,本件金員の費消をさせたのであるから,極めて重大な過失があったものであり,相当な過失相殺がされるべきである旨主張する。

 しかし,被告Y3の注意義務違反については,前記4(1)判示のとおり,被告Y3が,原告らの指示に反して被告Y1が本件金員を費消することについて,弁護士としての助言を通して関与したことにあるのであるから,原告らが,保険者又は共済者に対して本件保険金等の支払の停止を求めるなどの措置を採らなかったことは,被害者側の過失として斟酌すべきものとは認められないというべきである。
 被告Y3の主張は採用することができない。

6 争点6(原告Y1管財人は,被告Y1に対して不当利得返還義務を負うか。)について
 本件保険金等請求権は本件各破産財団に帰属し,合計2400万円の本件保険金等のうち2200万円は被告Y1の破産財団に,200万円はY2の破産財団に帰属すべきものと認められることは,前記1,2判示のとおりである。したがって,原告Y1管財人が被告Y3から引渡しを受けた1400万円を原告Y1管財人が保有することについては,法律上の原因がないということはできない。
 したがって,原告Y1管財人が被告Y1に対して不当利得返還義務を負うものとはいえない。

7 結論
 以上によれば,原告Y1管財人の被告Y1に対する本訴請求は理由があり,被告Y3に対する本訴請求は被告Y1と連帯して640万円及びこれに対する平成24年11月16日から支払済みまで民法所定年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,原告Y2管財人の被告Y1に対する本訴請求は理由があり,被告Y3に対する本訴請求は被告Y1と連帯して160万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから,これらを認容し,原告らの被告Y4及び被告Y5に対する本訴請求並びに被告Y3に対するその余の本訴請求並びに被告Y1の反訴請求は,いずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 後藤博 裁判官 岡本利彦 裁判官 佐々木耕)
以上:4,307文字

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