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破産手続開始決定後取得財産でも破産財団に属する例-要注意!!2

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平成29年 2月 5日(日):初稿
○「破産手続開始決定後取得財産でも破産財団に属する例-要注意!!」の続きです。
当初、アドバイスをした弁護士に対する損害賠償認容金額を間違って紹介していましたので、この事件の控訴審判決である平成26年11月11日東京高裁判決( 最高裁判所民事判例集70巻4号1147頁、金融・商事判例1492号22頁、金融法務事情2052号72頁)全文を紹介します。800万円を自由に費消して良いとアドバイスした弁護士の責任として8割相当額の640万円の支払を命じられています。ホントに要注意!!です。


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主   文
1 第1審原告らの控訴並びに第1審被告Y1及び第1審被告Y3の各控訴をいずれも棄却する。
2 当審における訴訟費用のうち、第1審被告Y5に生じた費用は第1審原告らの負担とし、その余は各自の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 第1審原告Y1管財人の控訴の趣旨
(1) 原判決中第1審原告Y1管財人の第1審被告Y3及び第1審被告Y5に対する請求に係る部分を次のとおり変更する。
(2) 第1審被告Y3及び第1審被告Y5は、第1審原告Y1管財人に対し、第1審被告Y1と連帯して800万円及びこれに対する平成24年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 第1審原告Y2管財人の控訴の趣旨
(1) 原判決中第1審原告Y2管財人の第1審被告Y3及び第1審被告Y5に対する請求に係る部分を次のとおり変更する。
(2) 第1審被告Y3及び第1審被告Y5は、第1審原告Y2管財人に対し、第1審被告Y1と連帯して200万円及びこれに対する平成24年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3 第1審被告Y1の控訴の趣旨
(1) 原判決中第1審原告らの第1審被告Y1に対する請求に係る部分を取り消す。
(2) 第1審原告らの第1審被告Y1に対する請求をいずれも棄却する。
(3) 原判決中第1審被告Y1の第1審原告Y1管財人に対する反訴請求に係る部分を取り消す。
(4) 第1審原告Y1管財人は第1審被告Y1に対し、1400万円及びこれに対する平成24年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4 第1審被告Y3の控訴の趣旨
(1) 原判決中第1審原告らの請求についての第1審被告Y3の敗訴部分を取り消す。
(2) 上記(1)の取消部分に係る第1審原告らの第1審被告Y3に対する請求をいずれも棄却する。

第2 事案の概要(略称は原判決のそれによる。)
1 第1審被告Y1及びその妻Y2との間の長男亡Aを被保険者(被共済者)とする保険契約及び共済契約が締結されていたところ、第1審被告Y1及びY2に対する破産手続開始決定後に亡Aが死亡し、第1審被告Y1が死亡保険金及び死亡共済金合計2400万円の支払を受けた。第1審被告Y1は、そのうち1000万円を費消し1400万円を第1審原告Y1管財人に交付した。

 原審での第1審原告らの本訴請求は次のとおりである。
 第1審原告らは、上記死亡保険金及び死亡共済金の各請求権は第1審被告Y1及びY2の本件各破産財団に帰属し、第1審被告Y1は悪意の受益者であり、第1審被告Y1の代理人を務めていた弁護士である第1審被告Y3、第1審本訴被告Y4及び第1審被告Y5(第1審被告弁護士ら)には第1審被告Y1が1000万円を費消したことについて注意義務違反があったと主張した。そこで、第1審被告Y1に対し、民法704条に基づく不当利得返還請求として、第1審被告弁護士らに対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、第1審原告Y1管財人は、800万円及びこれに対する利息又は遅延損害金の連帯支払を、第1審原告Y2管財人は、200万円及びこれに対する利息又は遅延損害金の連帯支払を、それぞれ求めた。

 原審での第1審被告Y1の第1審原告Y1管財人に対する反訴請求は次のとおりである。第1審被告Y1は、上記死亡保険金及び死亡共済金請求権は破産手続開始決定後に取得した財産であって、第1審被告Y1の破産財団に帰属しないにもかかわらず、第1審原告Y1管財人は前記保険金・共済金の一部である1400万円を保管し、法律上の原因なく利得を受けていると主張して、同管財人に対し、不当利得返還請求として、1400万円及び遅延損害金の支払を求めた。

 以上に対する原審の判断は次のとおりである。
 原審は、第1審原告らの第1審被告Y1に対する本訴請求を全て認容し、第1審被告Y3に対する本訴請求を一部認容し、その余の請求を棄却した。
 すなわち、原審は、第1審被告Y1に対し、第1審原告Y1管財人に800万円及び利息を支払うよう命じ、第1審被告Y3に対し、第1審原告Y1管財人に640万円及び遅延損害金を支払うよう命じ(第1審被告Y1及び第1審被告Y3の支払義務は640万円及びこれに対する附帯請求の支払の限度で連帯支払義務となる。)、第1審被告Y1に対し、第1審原告Y2管財人に200万円及び利息を支払うよう命じ、第1審被告Y3に対し、第1審原告Y2管財人に160万円及び遅延損害金を支払うよう命じた(第1審被告Y1及び第1審被告Y3の支払義務は160万円及びこれに対する附帯請求の支払の限度で連帯支払義務となる。)。
 そして、原審は、第1審原告らの第1審被告Y4及び第1審被告Y5に対する本訴請求をいずれも棄却し、第1審被告Y1の第1審原告Y1管財人に対する反訴請求を棄却した。


 原審の上記判断に対して、第1審原告らは、第1審被告Y3及び第1審被告Y5に対する各敗訴部分に不服があるとして控訴した(第1審原告らの第1審被告Y4に係る敗訴部分については、第1審原告らが控訴しなかったため、確定した。)。他方、原審の上記判断に対して、第1審被告Y1及び第1審被告Y3は、各敗訴部分に不服があるとして控訴した。

2 前提事実(ただし、原判決5頁14行目(本誌本号24頁右段12行目)の「平成16年3月1日」とあるのを「平成16年6月1日」と改める。)、争点及び争点に関する当事者の主張は、原判決の「事実及び理由」第2の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。
 当審において、第1審原告らは、原判決が第1審被告Y1において本件保険金等請求権の行使をすることを第1審原告らが黙認していたと判断したこと及びそのことを前提に第1審被告Y5の不法行為責任を否定したことは誤りであり、また、第1審被告Y3の負うべき損害賠償の範囲を800万円としたことにも誤りがあると主張する。他方、当審において、第1審被告Y1及び第1審被告Y3は、原判決が本件保険金等請求権の財団帰属性を認めたこと並びに第1審被告Y1の不当利得返還義務及び第1審被告Y3の不法行為責任を認めたことは誤りであると主張する。以上の当審における各当事者の主張は、原審での主張と基本的に同一である。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は、第1審原告らの控訴も、第1審被告Y1及び第1審被告Y3の控訴も、いずれも理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり付加訂正するほか、原判決の理由説示(「事実及び理由」第3の1ないし6〔ただし、4(1)エを除く。〕)のとおりであるから、これを引用する。
(原判決の訂正)
(1) 原判決22頁4行目(同31頁右段45行目)の「被告Y1は、」から6行目(同48行目~49行目)の「支払ったのであるから、」までを「第1審被告Y1は、本件保険金等請求権の目的である金員2400万円の支払を保険会社等に請求し、保険会社等が過失なくこれを支払ったことで、本件各破産財団に帰属すべき本件保険金等請求権は消滅した。そして、第1審被告Y1は、そのうち1400万円を第1審原告Y1管財人に支払った。したがって、」と改める。

(2) 原判決26頁3行目(同33頁左段18行目)の「47、」の次に「54、」を加え、25行目末尾(同46行目)に「Y2及びBの相談は、第1審被告Y5は最近になって本件保険金等を破産財団に引き渡すのがよいという見解を持つようになったが、これに納得がいかないのでどうしたらよいかというものであった。」を加える。

(3) 原判決28頁19行目(同33頁右段51行目)の「その後」とあるのを「同月26日」と改め、26行目(同34頁左段4行目)の「セ」の次に「第1審原告Y1管財人は、平成24年6月22日、本件保険金等請求権は第1審被告Y1の破産財団に帰属すると主張して、破産法156条1項に基づき、破産裁判所に対し、第1審被告Y1を相手方として、2400万円の引渡しを求める引渡命令の申立てをした。破産裁判所は、第1審被告Y1(代理人第1審被告Y3)の意見を聴いた上、同年8月6日、第1審被告Y1に対し、同人が本件保険金の払戻しを受け保管中の現金2000万円及び本件共済金の払戻しを受け保管中の現金400万円について、第1審原告Y1管財人に引き渡すことを命じる本件決定をした。(甲19、50、51)」を加える。

(4) 原判決29頁3行目末尾(同34頁左段9行目)で改行し、「東京高等裁判所は、同年9月12日、第1審被告Y1の本件決定に対する即時抗告の申立てを棄却する決定をした。(甲23)」を加える。

(5) 原判決29頁11行目冒頭(同34頁左段19行目)から34頁14行目末尾(同35頁右段36行目)までを削り、次のとおり加える。
「(2) 前記(1)の認定事実によれば、次のとおりである。
 第1審被告Y5は、第1審原告らとの間で、本件保険金等請求権の本件各破産財団への帰属性について意見交換をし、本件保険金等を自由財産とするよう交渉を行っていた。第1審被告Y5は、平成24年5月31日の時点で保険金受取人の保険金請求権は破産財団を構成するものであるとの第1審原告らの考え方及び破産裁判所の見解を伝えられていた。第1審被告Y3は、同年6月1日、相談に来たY2及びBの話を通じて、第1審原告らの本件保険金等請求権の財団帰属性についての考え方を知るに至った(Y2及びBは、第1審被告Y5が本件保険金等を破産財団に引き渡すのがよいという見解を持つようになったことへ不満を抱き、第1審被告Y3に相談をするに至ったものである。)。

 しかし、第1審被告Y3は、Y2及びBに対し、本件保険金等を葬儀費用、墓の費用、生活費に使用することは差し支えないと考える旨説明した(上記の話はY2及びBを通じて第1審被告Y1に伝わっているものと推認される。)。第1審被告Y1は、同月1日から同月4日にかけて本件口座から合計2200万円の本件保険金等を引き下ろした。第1審被告Y5は、同月7日、第1審被告Y3に対し、破産裁判所及び第1審原告らが本件保険金等は自由財産ではないと考えていることを説明したところ、第1審被告Y3は、本件保険金等は自由財産であるとの考えを固めており、第1審被告Y1に対し、本件保険金等を葬儀費用、墓所費用、生活費等として支出することは差し支えない旨を説明した。

 第1審被告Y5は、第1審被告Y3に対し、第1審原告らが本件保険金等の引渡しを求めている旨伝えたが、第1審被告Y3は、これに応じる必要はない旨述べた。第1審被告Y1は同年6月8日に、Y2は同月12日に、それぞれ第1審被告Y3及び第1審被告Y4との間で本件破産事件の代理人としての委任契約を締結した。その後、同月18日になって、第1審被告Y5は、第1審原告らから本件保険金等の保全措置を必ず実行していただかなければならない旨の連絡を受けたため、これを第1審被告Y1に伝えたが、同被告から1000万円を第1審被告Y3に預けた旨の連絡を受けた。同月26日、第1審被告Y5は、第1審被告Y1及びY2の代理人を辞任し、第1審被告Y1は、同月28日、本件金員から第1審被告Y5に対し、弁護士費用として55万1581円を支払い、同年9月14日ころ、第1審被告Y3及び第1審被告Y4に対し、本件金員から弁護士費用として240万円を支払い、そのころまでに合計1000万円を消費した。

 上記の事実経過に照らすと、第1審被告Y5は、第1審被告Y1が受領した本件保険金等の同被告による費消を助長したものということはできないから、同被告が本件金員を費消したことについて不法行為責任を負うものではないというべきである。」

(6) 原判決35頁5行目(同36頁左段4行目)の「被告Y1が、」とあるのを「第1審被告Y1は、」と改め、8行目(同8行目)の「800万円を」から12行目(同13行目)の「べきである。」までを「800万円を費消したものである。」と改め、18行目(同21行目~22行目)の「犯罪行為となる可能性のある不法行為を行うことについて、」及び23行目(同28行目)の「被告Y1との共同」を、それぞれ削る。

(7) 原判決36頁12行目(同36頁左段48行目)の「進めた」を「勧めた」と改め、21行目冒頭(同右段5行目)から24行目末尾(同9行目)までを「しかし、前記①の点については、第1審被告Y3の不法行為責任の有無に影響を与えるものではない。」と改める。

(8) 原判決37頁8行目冒頭(同36頁右段23行目)から14行目末尾(同31行目)までを「前記④及び⑤の点については、前記④の第1審原告らの承認の事実や前記⑤の第1審原告らの職務違反となるべき事実は認められないから、第1審被告Y3の不法行為責任の有無に影響を与えるものではない。」と改める。

(9) 原判決37頁21行目(同36頁右段39行目~40行目)の「相談に来る前に費消していた200万円」とあるのを「相談に来た後に費消されたことの証明がされていない200万円」と改める。
(第1審被告Y3の不法行為責任について)
 保険金受取人の保険金請求権は、保険契約の成立及び保険金受取人の指定によって保険事故の発生等の保険金請求権の具体化事由を停止条件とする債権として発生しており、この権利は、破産法34条2項に基づく将来の請求権として破産財団に属する財産となるものと解され、本件保険金等請求権も本件各破産財団に帰属すべき権利であると認めるのが相当である。この点は、原判決が「事実及び理由」第3の1(1)で説示するとおりである(第1審被告Y3が引用する大阪高裁平成2年11月27日判決及びその上告審判決である最高裁平成7年4月27日判決は、本件と事案を異にし、本件に適切でない。)。

 上記の判断を前提として、第1審被告Y3の不法行為責任について検討するに、原判決の「事実及び理由」第3の3(1)認定の事実(上記で訂正後のもの)によれば、次のとおりである。
 第1審被告Y3は、平成24年6月1日、Y2及びBの相談を通じて、本件保険金等請求権が本件各破産財団に帰属するものであるから引き渡すように求められていることを認識しており、同月7日には、第1審被告Y5の話を通じて第1審原告ら及び破産裁判所は本件保険金等請求権が本件各破産財団に帰属しているとの見解を有していること並びにその保全が求められていることを認識している。

 ことに、第1審原告Y1管財人は、同月22日、本件保険金等請求権は第1審被告Y1の破産財団に帰属すると主張して、破産法156条1項に基づき、破産裁判所に対し、第1審被告Y1を相手方として、2400万円の引渡しを求める引渡命令の申立てをしており、第1審被告Y3は、上記手続の相手方である第1審被告Y1の代理人であり、同年8月6日、第1審被告Y1が本件決定を受けたのであるから(その後、同年9月12日、本件決定に対する即時抗告の申立ては棄却されている。)、その手続の過程で、破産裁判所の上記見解を認識していたものである。

 このような中で、第1審被告Y3は、これが自由財産に属するとの自らの独自の考えに基づいて、第1審被告Y1に対し、本件保険金等から葬儀費用等に費消してもよいとの助言をしたものである(同年6月1日の相談者がY2及びBであったとしても、第1審被告Y3の助言は、Y2及びBを通じて第1審被告Y1に伝わっていたものと推認されるし、第1審被告Y3の同月7日の助言は、第1審被告Y1に対するものである。)。


 そして、第1審被告Y3の上記の助言に従って、第1審被告Y1は本件金員のうち、少なくとも800万円を費消し、破産財団に返還することが不能となったものと認められるから、第1審被告Y3は、上記800万円の限度において不法行為責任を免れることはできない。この場合において、第1審被告Y3の上記の法的見解に基づく助言が正当な見解であると信じて行われたものであるとしても、破産裁判所の上記見解を認識していた以上、過失のある職務行為であるといわざるを得ない。

2 以上の次第で、第1審原告ら、第1審被告Y1及び第1審被告Y3の各控訴をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。
 裁判長裁判官 園尾隆司、裁判官 橋本英史 河村 浩
以上:7,022文字

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