平成21年 1月 5日(月):初稿 |
○「事業任意整理における先取特権者者保護2」を続けます。 私は事業任意債務整理事件において債権者の先取特権を重視し任意整理事件着手後先ず最初に先取特権対象となる在庫品を任意に債権者に返還する作業から始めます。具体的にはA社が倒産会社でB社が商品甲の売買代金債権金10万円を有する債権者とすると、B社はA社の元にある商品甲に対する先取特権を有していますので、この商品甲を任意に債権者B社に対し返還します。 ○そのため任意債務整理事務開始にあたっては倒産会社A社の従業員にこの代金未納商品甲を特定する作業から指示し、代金既払い商品との分別作業をして貰います。通常、倒産会社A社とその債権者B社は継続取引が多く、B社から仕入れた商品は代金未納の商品甲だけでなく、代金既払いの商品も残っているからです。代金既払いの商品は当然ですが、先取特権はなく原則として返還対象にはしません。 ○先取特権債権者に対しては債務整理受任通知と同時に「先取特権対象物品引取のご案内」を送付してその日時・場所を指定し、更に「先取特権対象商品引取受領書」も合わせて送付し、引取伝票(いわゆる赤伝)の準備をお願いします。債権者は自社の販売商品を熟知しており,他社の販売商品まで引き取ることは、先ずありません。債権者は引取に来る際は、赤伝を持参しており、商品特定がその場で出来る場合は,引取受領書に加えてこの赤伝も作成して頂きます。 先取特権対象物品引取のご案内 先取特権対象商品引取受領書 ○倒産時に代金未納で先取特権の対象となった商品がのこっているところ、倒産会社からその商品を買い受ける予定でその商品が迅速に納品されないとその事業に支障を来す取引業者も存在します。この場合は、原則としてその先取特権対象商品を先取特権債権者に返還し、その先取特権債権者の指示によりその取引業者に納品したことにして、その先取特権債権者とその商品必要取引業者との直接取引として頂くことを原則とし、必要に応じてこれを確認する書面を取引業者に送付します。 ○これはあくまで倒産即ち支払停止を明確に表明した時点に倒産会社に在庫として残っていた商品に関してのみであり、支払停止表明以前に売却済みの商品に関しては、たとえ倒産前日の売却であっても「債務者の特定動産」ではなくなっていますので、特定動産に対する動産先取特権は消滅します。 ○債権者によっては、倒産直前に売却した売却代金について、自社の商品を売却して生じた代金債権なので自社に優先権があると主張する債権者も時々出てきます。この問題については後日説明します。 以上:1,073文字
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