平成17年 9月24日(土):初稿 |
○平成17年9月23日更新情報で記載したように私は数億円程度までの事業整理の場合、わざわざ費用の嵩む破産手続は取らず、任意整理で行うべきとの考えで、若い弁護士にも任意整理の勧めを説いているのですが、なかなか任意整理手続を選択する弁護士は私以外には出てきません。 ○私が任意整理を勧める理由は費用の問題だけではありません。依頼者との信頼関係の構築の面もあります。破産手続の場合、申立を依頼された弁護士は、破産決定が出て破産管財人が就任すると同時に任務終了です。破産管財人就任により関係記録の写しや預かった金銭等も全て破産管財人に渡し、いわば破産管財人に業務はバトンタッチしたことになります。 ○このバトンタッチにより、その後の事業清算手続は破産管財人弁護士の仕事となり、申立代理人弁護士と依頼者との遣り取りは殆どなくなり、依頼者との関係も殆ど切れてしまいます。依頼者は破産管財人弁護士の事務所に呼び出しを受け、以降の清算業務遂行のための打ち合わせ等は全て破産管財人との遣り取りとなります。 ○従って破産申立だけの業務は楽と言えば楽ですが、私にとっては、その後の清算業務が出来ないことも、更に依頼者との関係も殆どなくなることも、大変物足りないものです。事業倒産事件の醍醐味の一つは債権が予定通り回収できなくなっていきり立つ債権者各位との遣り取り、更に倒産企業の債務者からの債権回収業務等資産換価作業にありますが、これらは全て破産管財人の仕事になります。 ○私も10数年前までは破産管財人業務を引き受け、一時は10件近く兼任し、破産管財業務収入も全体の30~40%位に膨れて、破産管財業務が無くなったら食べていけるのだろうかと不安に思った時期もあり、その時、債権者との遣り取りは、破産管財人の立場と、任意整理手続で債務者代理人の立場では、相当違いを感じました。 ○破産管財人は裁判所(国)から選任されたいわばお役人であり、債権者も破産管財人は、債務者とは一歩離れたお役人として対処するため厳しい態度は取れませんが、任意整理の場合は、正に借金を踏み倒す債務者会社の代理人であり、債権者は代理人弁護士に対しても時に相当厳しい態度も取ります。 ○破産管財人は、国家権力を背景にした役人であるところ、任意整理代理人は徒手空拳の一弁護士に過ぎず、債権者との遣り取りも時にシビアになり、相当激しい遣り取りもしなければなりませんが、これにより債権者の生の声を聞くことが出来るもので、この過程が弁護士として貴重な勉強になります。(この話題後日に続けます。) 以上:1,054文字
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