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週2日通院していない通院期間修正を認めない地裁判決紹介

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令和 4年 1月13日(木):初稿
○通院慰謝料は、通院期間・通院日数によって、青本・赤本に基準が記載されていますが、通院日数は一週間7日に2日間通院するのが前提とされていました。そこで通院期間が長くても、通院日数が例えば一週間1回や一ヶ月1回等一週間7日に2日間に満たない場合は、通院日数に2分の7即ち3.5を乗じて、1ヶ月30日で割った数値を通院期間と修正されるのが原則でした。例えば通院期間6ヶ月でも、通院日数が30日の場合、30×3.5÷30=3.5ヶ月に修正されます。

○ところが、この原則について、「被告らは,原告の実際の入通院日(87日間)を3.5倍した304日を基準に傷害慰謝料を算定すべきであると主張し,確かに,原告の通院は平成29年2月以降,月2回程度にとどまっており(乙2),通院期間中の通院日数を総じてみた場合,通院がやや少ないということはできる。しかし,原告の通院は不定期ではなく,定期的に継続したものであるから,通院期間を基準として傷害慰謝料を算定するのが相当というべきであり,被告らの上記主張は採用できない」と判断した令和2年11月10日大阪地裁判決(交民53巻6号1422頁)関連部分を紹介します。被害者側としては有り難い判決です。

○なお、自賠責保険後遺障害第7級に認定された女子外貌醜状痕の逸失利益について、「醜状障害のために後遺障害逸失利益の損害が生じたというためには,醜状障害の程度が著しく,かつ,性質上,容姿や外貌が重要視される業務に従事し,あるいは,従事することが予定されていたにもかかわらず,醜状障害によりその就労の機会が失われるなど,実際に将来における収入が減少する蓋然性がある場合に限られる」として、全く認めませんでした。

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主   文
1 被告らは,原告に対し,連帯して120万4460円及びこれに対する平成28年7月29日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを100分し,その94を原告の負担,その余を被告らの負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告らは,原告に対し,連帯して2000万円及びこれに対する平成28年7月29日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,大阪市〈以下省略〉内の道路上(十字交差点)において,被告Y1が被告会社の業務として運転する普通貨物自動車(以下「被告車両」という。)と原告が乗車する自転車(以下「原告自転車」という。)が出会い頭に衝突した交通事故(以下「本件事故」という。)により,原告が右頬部挫創等の傷害を負って入院及び通院をし,顔面の外貌醜状(1.5cmの線状瘢痕,5×6cmの色素沈着)を残したこと等により,別紙「損害整理表」の「原告の主張」欄のとおり,4437万9734円の損害を被ったところ,被告Y1には,交差点進入にあたって徐行すべき義務を怠り,交差点に進入してくる原告自転車を注視し,適切にブレーキを操作して衝突を回避する義務を怠った過失があったとして,原告が被告Y1に対して不法行為による損害賠償請求権(民法709条)に基づき,被告会社に対して使用者責任による損害賠償請求権(民法715条1項,709条)に基づき,上記4437万9734円の内金2000万円及びこれに対する平成28年7月29日(不法行為日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。

第3 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実。なお,証拠の番号は甲乙の符号と番号のみで表記し,枝番のある証拠につき枝番を表記しない場合は枝番を含む。)
1 当事者等
(1) 原告
 原告は,本件事故当時,15歳(平成12年○月○日生)の女性である(甲1)。

(2) 被告ら
 被告会社は被告Y1の雇用主であり,被告Y1は,本件事故当時,被告会社の業務として被告車両を運転していた者である(弁論の全趣旨)。

2 本件事故

         (中略)

3 原告の受傷及び通院経過等
 本件事故により,原告は,右頬部挫創,両手挫創,頭部打撲血腫,右肩打撲,右膝打撲,右足関節打撲の傷害を負い,以下のとおり,入院及び通院をした。

         (中略)


4 後遺障害診断及び事前認定
(1) 後遺障害診断
 原告は,平成29年7月22日,育和会記念病院で後遺障害診断を受け,以下のとおり診断された(甲8)。
 傷病名 右頬部挫創
 症状固定日 平成29年7月22日
 醜状障害
 ①右眼瞼横に1.5cmの線状瘢痕
 ②右頬部に5×6cmの色素沈着

(2) 事前認定
 原告は,自賠責保険の後遺障害等級認定を受け,以下のとおり認定された(甲2)。
 障害等級 自賠法施行令別表第二7級12号
 理由:外貌の障害のうち,右頬部の色素沈着については,人目につく鶏卵大面以上の瘢痕と捉えられることから,「外貌に著しい醜状を残すもの」として別表第二7級12号に該当する。

第4 当事者の主張

         (中略)


第5 当裁判所の判断
1 はじめに(本件の争点)
 本件において,原告自転車と被告車両との間で本件事故が発生したことは当事者間に争いがなく,被告Y1が不法行為による損害賠償責任を,被告会社が使用者責任による損害賠償責任を負うこと自体は,被告らも争わない。
 本件の争点は,
①本件事故の態様等を踏まえた,原告及び被告Y1の過失割合,
②原告に生じた損害及び損害額である
(別紙「損害整理表」のとおり,治療費,通院交通費,入院雑費については当事者間に争いがなく,争いのある損害費目は,入院付添費,通院付添費,傷害慰謝料,後遺障害慰謝料,後遺障害逸失利益である。)。

2 争点①(過失割合)

         (中略)



3 争点②(原告の損害及び損害額)
(1) 治療費 70万6939円
 当事者間に争いがない。


         (中略)



(6) 傷害慰謝料 166万円
 原告は,本件事故により2日間入院し,症状固定日(平成29年7月22日)まで約1年間通院している(前提事実3)。この入通院に相応する慰謝料として166万円を原告の損害として認める。

 なお,被告らは,原告の実際の入通院日(87日間)を3.5倍した304日を基準に傷害慰謝料を算定すべきであると主張し,確かに,原告の通院は平成29年2月以降,月2回程度にとどまっており(乙2),通院期間中の通院日数を総じてみた場合,通院がやや少ないということはできる。しかし,原告の通院は不定期ではなく,定期的に継続したものであるから,通院期間を基準として傷害慰謝料を算定するのが相当というべきであり,被告らの上記主張は採用できない

(7) 後遺障害逸失利益 0円
 本件事故による原告の後遺障害は,右頬部挫創後の醜状障害(右眼瞼横の1.5cmの線状痕,右頬部の5×6cmの色素沈着)である(前提事実4(1))。
 外貌の醜状障害は,身体機能の障害ではなく,一般的に労働能力を制限するものではない。

後遺障害逸失利益は,後遺障害のために労働能力が制限され,将来において得べかりし利益を失う蓋然性がある場合に損害として認められるものであり,醜状障害のために後遺障害逸失利益の損害が生じたというためには,醜状障害の程度が著しく,かつ,性質上,容姿や外貌が重要視される業務に従事し,あるいは,従事することが予定されていたにもかかわらず,醜状障害によりその就労の機会が失われるなど,実際に将来における収入が減少する蓋然性がある場合に限られるというべきである。

 本件についてみると,原告の醜状障害のうち線状痕は顔面部であるとはいえ1.5cmにとどまっている。また,右頬部についても,瘢痕はケロイド様であったり,肥厚したりしているものではなく色素沈着にとどまっていて,右頬部の写真(甲7)をみても,著しく変色しているとまでいうことはできない。

このような醜状障害により,就労の機会や選択の幅が狭められるということはできず,原告によれば,後に退職したとはいえ,一旦は自ら希望するとおり飲食業の仕事に就いたというのであるから,このことからも,原告の就労の機会等が制限され,将来における収入が減少する蓋然性があるとは認められない。

 以上によれば,原告に後遺障害逸失利益の損害が生じたと認めることはできない。

(8) 後遺障害慰謝料 1051万円
 原告の後遺障害は,自賠法施行令別表第二7級12号に該当する醜状障害であり,このことに加え,醜状障害が顔面部のものであることや,原告が症状固定時16歳の若年女性であり,多感な少年期,青年期を醜状による精神的苦痛を抱えつつ過ごしていくことになると考えられることを考慮すれば,原告が主張する1051万円の後遺障害慰謝料は,後遺障害による原告の精神的苦痛を慰謝するためのものとして相当というべきであり,同額を原告の損害として認める。

(9) (1)~(8)の合計額 1289万7174円

(10) 過失相殺 -515万8870円
 前記3のとおり,本件事故に係る原告の過失割合は40%と認めるのが相当であるから,前記(9)の金額の40%相当額を過失相殺により控除する。

(11) 既払金控除等
ア 対人賠償保険金 -70万3489円
 被告ら(保険会社)による既払金を控除する。

イ 人身傷害保険金 -594万0355円
 原告は,人身傷害保険金として1109万9225円の支払を受けているところ(甲5,6),この保険金のうち,原告過失分(前記(10))に充当した残額である594万1555円を損益相殺により控除する。

(12) 弁護士費用 11万円
 弁護士費用相当額として11万円を原告の損害として認める。

(13) 合計額 120万4460円

4 結論
 以上によれば,原告は,被告らに対し,不法行為による損害賠償請求権ないし使用者責任による損害賠償請求権に基づき,120万4460円及びこれに対する平成28年7月29日(不法行為日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の連帯支払を求めることができる。
 よって,原告の請求は上記の限度で理由があるから,その限度で一部認容し,その余の請求はいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
 大阪地方裁判所第15民事部
 (裁判官 溝口優)

以上:4,303文字

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