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令和 1年12月 1日(日):初稿 |
○「重度後遺障害被害者逸失利益に定期金賠償を認めた高裁判決紹介」の続きで、一審平成29年6月23日札幌地裁判決と二審平成30年6月29日札幌高裁判決の逸失利益定期金賠償に関する部分のまとめです。 ○先ず原告の請求です。 請求の趣旨は (1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X1に対し,連帯して平成32年9月から平成81年8月まで,毎月○日限り,44万1400円を支払え。 (2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X1に対し,上記4(1)の金員を支払え。 請求の原因は、 逸失利益(定期金賠償) 原告X1は,本件事故当時4歳であり,本件事故による後遺障害のために労働能力を100%喪失した。そして,平成24年賃金センサスの男子・学歴計・全労働者平均賃金の529万6800円を基礎収入とし,労働能力喪失期間を49年間(18歳から67歳まで)として逸失利益を求める。ただし,逸失利益についても,将来介護費用と同じく,月1回の定期金賠償を求める。なお,支払日は,逸失利益の発生日が平成32年○月○日であるから,毎月○日とする。 ○判決内容です。 一審判決主文 (1) 被告Y1及び被告日本ホワイトファーム株式会社は,原告X1に対し,連帯して平成32年9月から平成81年8月(※49年間)まで,毎月○日限り,35万3120円を支払え。 (2) 被告損害保険ジャパン日本興亜株式会社は,被告Y1又は被告日本ホワイトファーム株式会社に対する判決が確定したときは,原告X1に対し,上記4(1)の金員を支払え。 二審判決主文 (1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社は,控訴人X1に対し,連帯して平成32年9月から平成81年8月まで,毎月22日限り,35万3120円を支払え。 (2) 被控訴人損保ジャパン日本興亜は,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決が確定したときは,控訴人X1に対し,上記5(1)の金員を支払え。 ○一審・二審の逸失利益部分の結論は変わりません。原告の請求毎月44万1400円が35万3120円に減らされたのは、原告の過失割合2割が認定されたため8割相当部分になったためです。定期金での支払総額は、平成24年賃金センサスの男子・学歴計・全労働者平均賃金の529万6800円に49年分を乗じた2億5954万3200円という膨大な金額になり、保険会社は49年間に渡り支払を継続しなければなりません。 ○それが一括請求だと 529万6800円×100/100(労働能力喪失率)×18.169(49年のライプニッツ係数)=9623万7559円 となり、定期金での支払総額の37%に減ります。実際、支払をしなければならない保険会社としては、定期金より一括支払の方が遙かに得です。そのため保険会社は逸失利益についての定期金賠償請求を激しく争いますが、札幌高裁も全く同じ結論でした。 ○原告が49年生存した場合は、上記の通り、定期金では総額約2億6000万円もの膨大な逸失利益の賠償を受けることができますが、例えば20年後に別な交通事故等で死亡した場合どうなるかについては、平成8年4月25日最高裁判決で、原則として結論に変わりはないとの判断をしていますので、別コンテンツで紹介します。 以上:1,364文字
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