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交通事故による傷害と中心性頚髄損傷の因果関係を認めた地裁判例紹介

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令和 1年 6月21日(金):初稿
○交通事故による傷害と中心性頚髄損傷の因果関係を認めた判例を探しています。因果関係を認めない判例は多いのですが、因果関係を認めた判例は余り見当たりません。事故で中心性頚髄損傷、外傷性頚部脊髄症、眩暈症、言語障害、四肢麻痺、四肢筋力低下、右側表在覚低下、両側深部覚低下、軽度排尿障害、運動性失語症の障害を発症させる被害者の事案で、既に事故前から、頸部等に変形性、進行性疾患という体質的素因が存在しており、これが誘因し各障害を発症・増悪させたものと、5割の素因減額を認めた平成10年3月27日名古屋地裁判決(交民集31巻2号528頁)関連部分を紹介します。

○中心性頚髄損傷による症状については、第9級10号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの」に該当と認定し、「眩暈症、言語障害、四肢麻痺」の症状を第6級2号「咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの」に該当として、併合第5級後遺傷害として、労働能力喪失率を100分の79と認定しています。

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主   文
一 被告は、原告に対し、金1036万9868円及びこれに対する平成6年1月1日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用については、これを2分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
四 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 原告の請求

(略)

第二 事案の概要
 本件は、信号機のある交差点において、信号待ちのため停車中の原告運転の自動車に、被告運転の自動車が追突し、この事故により受傷し、かつ、後遺障害も発生したとして、原告が、その車の運転者である被告に対して、その人身被害につき、民法709条に基づき損害賠償を請求した事案である。

一 争いのない事実
1 事故の発生
 原告(昭和6年4月生、事故当時満59歳)は、次の交通事故に遭遇した(以下、右事故を「本件事故」という。)。

(一) 日時   平成2年9月7日午前9時50分ころ
(二) 場所   愛知県瀬戸市<地番略>先道路上(以下「本件交差点」という。)。
(三) 被害車両 普通乗用自動車(以下「原告車」という。)
   右運転者 原告
(四) 加害車両 普通乗用自動車(以下「被告車」という。)
   右運転者 被告
(五) 態様  原告が原告車を運転して本件交差点において赤色信号に従い信号待ちのために停車中に、被告運転の被告車が原告車に追突した。

(中略)

第三 争点に対する判断
一 原告の本件傷害及びその治療について

 前記の争いのない事実に加えて、(証拠略)によれば、次の各事実が認められる。
(一) 原告は、本件事故により中心性頚髄損傷、腰部挫傷の本件傷害を受けたこと(なお、「外傷性頚部脊髄症」は、原告の本件傷害の1つの症状であること。)、

(二) そして、原告は、本件傷害の治療のために、次のとおり医療機関に入、通院してその治療を受けたこと、
(1) 入院
① B病院
ⅰ 平成2年9月7日から平成3年3月9日まで(184日)
ⅱ 平成3年12月3日から平成4年4月18日まで(137日)
② C病院b分院
  平成4年4月21日から平成4年7月26日まで(97日)
③ C病院
  平成4年7月27日から平成4年10月4日まで(70日)

(2) 通院
① B病院
  平成3年3月12日から平成3年12月3日まで(実日数134日)
② C病院
  平成4年10月5日から平成5年11月18日まで

二 原告の本件後遺障害について、
 前掲の各証拠に加えて、本件鑑定嘱託の結果並びに弁論の全趣旨に基づいて、原告の本件後遺障害について検討するに、右の各証拠によれば、
(一) 原告は、本件事故による本件後遺障害として、具体的には、「中心性頚髄損傷、外傷性頚部脊髄症、眩暈症、言語障害、四肢麻痺、四肢筋力低下、右側表在覚低下、両側深部覚低下、軽度排尿障害、運動性失語症」の神経症状が残ったこと(以下これらを「本件後遺障害」という。)
 そして、その症状は、遅くとも平成5年12月末日までには固定したものと認められること、

(二) 原告の本件後遺障害については、一応は本件事故を原因とするものである、すなわち、本件事故と相当因果関係のあるものと推認されること、

(三) そして、原告の本件後遺障害については、前記のとおり多くの症状が残存するが、そのうちの「眩暈症、言語障害、四肢麻痺」の症状は、いわゆる自動車損害賠償保障法施行令第2条別表後遺障害別等級表の第6級2号「咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの」に該当し、その余の症状については、同表の第9級10号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの」に該当し、両者は、結局のところ、いわゆる併合の処理(自賠法では、同表の第13級以上に該当する身体障害が2以上あるときは、重い方の身体障害の等級を1級繰り上げること。)により、原告の本件後遺障害は同表の第5級に該当するものと認めるのが相当であること、

(四) しかしながら、原告の本件後遺障害については、
(1) 本件後遺障害の症状のうち、その中心をなしている言語障害の症状については、本件事故直後からみられたのではなく、平成2年12月中旬ころから、軽く、かつ、徐々に出てきたものであること、
(2) 本件後遺障害の症状のうち、「眩暈症、言語障害、四肢麻痺」等の症状は、外傷による症状というよりも、「変行進行性疾患」(外傷とは関係のない緩徐進行性の変性疾患)による可能性が高いこと、あるいは、少なくともその原因が外傷にのみ基づくものとの断定はできないことの各事実が認められる。

三 原告の本件後遺障害についての本件事故との相当因果関係について
 前記1、2での認定事実、前掲の各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば、本件事故による原告の本件後遺障害については、原告には、既に本件事故前から、頸部等に変形性、進行性疾患という体質的素因が存在しており、原告の前記の各症状は、右の素因に本件事故が誘因となってその症状が発症、増悪した結果であると認めるのが相当である。

 そして、原告の右体質的素因については、本件事故による外力等の作用を待つまでもなく、日常生活で経験する程度の出来事を契機として発症、増悪する相当の蓋然性があったものと推認することができる。
 したがって、以上の事情に照らせば、本件事故による原告の逸失利益やこれに対応する慰謝料等の損害について、これを全額被告に負担させるのは公平とは言いがたいから、本件体質的素因の内容、程度、本件事故の程度等を考慮して、その相当因果関係不明の心証の程度に応じて、それらの損害の5割を減額することとする(民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用。)。


四 損害額について
1 本件後遺障害による逸失利益について(請求額金2846万4717円)
  認容額 金1793万8814円
(証拠略)によれば、原告は、本件事故当時は訴外D会社に勤務して不動産の仲介・売買等の業務に従事していたこと、その時点での原告の右勤務による実収入としては、後記認定のいわゆる平均賃金を相当程度下回るものであったこと、原告の本件後遺障害は、平成5年12月末日にその症状が固定し、原告は、右の症状固定当時満62歳であったから、本件後遺障害により、その後9年間にわたり、前記3の認定事実のとおり、その労働能力の100分の79相当を喪失したものと認められるから、その間に原告が得ることができたものと推認しうる年収額は、平成2年度賃金センサス第1巻、第1表、産業計、企業規模計、男子労働者学歴計の60歳~64歳の平均賃金を基準として、最大でもその約8割程度の金312万円とするのが合理的であるというべきであり、年5分の割合による中間利息の控除は新ホフマン係数(7・278)によるのが相当である。したがって、原告の本件後遺障害による逸失利益は、金1793万8814円(円未満切り捨て、以下同じ。)となる。

2 治療費について(請求額金244万5125円)
  認容額 金244万5125円
(証拠略)によれば、本件事故と相当因果関係のある原告の治療費は、合計金244万5125円をもって相当であると認められる。

3 歩行補助具作成費について(請求額金2万2413円)
  認容額 金2万2413円
(証拠略)によれば、本件事故によれば、本件事故と相当因果関係のある原告の歩行補助具作成費は、金2万2413円をもって相当であると認められる。

4 交通費及び病院での駐車代について(請求額金3万0840円)
  認容額 金3万0840円
(証拠略)によれば、本件事故と相当因果関係のある原告の交通費及び病院での駐車代は、合計金3万0840円をもって相当であると認められる。

5 慰謝料について、
(一) 入、通院慰謝料について(請求額金400万円)
  認容額 金280万円
 弁論の全趣旨によれば、本件事故の態様、本件傷害の程度及び本件入、通院期間等を総合すれば、原告の本件傷害(入、通院)慰謝料としては、金280万円が相当である。

(二) 後遺症慰謝料について(請求額金1450万円)
  認容額 金1150万円
 弁論の全趣旨によれば、本件事故の態様、本件後遺障害の程度及び原告本人の生活状況等を総合すれば、原告の事件後遺障害による慰謝料としては、金1150万円が相当である。
 (以下略)
(裁判官 安間雅夫)

以上:3,947文字

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