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後遺障害等級第11級脊柱変形労働能力喪失率20%を認めた地裁判例紹介2

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令和 1年 5月18日(土):初稿
○「後遺障害等級第11級脊柱変形労働能力喪失率14%を認めた地裁判例紹介」の続きでです。

○腰椎圧迫骨折等から11級7号脊椎変形障害等併合11級後遺障害を残す37歳男子トラック運転手の後遺障害逸失利益算定につき、運転や荷物の積み下ろしの業務に従事し続けることは困難と考えられ、今後、加齢に伴い、脊柱変形に伴う症状が悪化又は新たに出現する蓋然性もあるとして、就労可能年数の28年間にわたり、実収入の20%で後遺障害逸失利益を認めた平成26年1月29日東京地裁判決(自保ジャーナル・第1917号)関連部分を紹介します。

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主 文
1 被告乙山春子及び同丙川夏子は、原告に対し、連帯して、金1395万5757円及びこれに対する平成22年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告乙山春子は、原告に対し、金64万7594円及びこれに対する平成22年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告Y保険会社は、原告に対し、金841万6911円及びこれに対する平成25年1月17日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は、原告に生じた費用の10分の2、被告乙山春子及び同丙川夏子に生じた費用の20分の1並びに被告Y保険会社に生じた費用の20分の7を原告の負担とし、原告に生じた費用の10分の5並びに被告乙山春子及び同丙川夏子に生じた費用の20分の19を同被告らの負担とし、原告に生じた費用の10分の3及び被告Y保険会社に生じた費用の20分の13を同被告の負担とする。
6 この判決は、第1項ないし第3項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

1 被告乙山春子(以下「被告乙山」という。)及び同丙川夏子(以下「被告丙川」という。)に対する請求
 被告らは、原告に対し、連帯して、1480万1332円及びこれに対する平成22年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告乙山に対する請求
 主文第2項同旨
3 被告Y保険会社(以下「被告Y保険会社」という。)に対する請求被告Y保険会社は、原告に対し、1345万5757円及びこれに対する平成25年1月17日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
1 事案の要旨

 本件は、被告乙山が運転し、被告丙川が保有する普通乗用自動車(以下「被告車」という。)が道路右側の路外駐車場(以下「本件路外駐車場」という。)に向けて右折進行するに際し、対向車線を直進進行してきた原告が運転する大型自動二輪車(以下「原告二輪」という。)と衝突した交通事故(以下「本件事故」という。)について、原告が、被告乙山に対して民法709条の規定に基づいて、被告丙川に対して自動車損害賠償保障法3条の規定に基づいて、本件事故により原告が被った損害(ただし、被告丙川に対しては物的損害を除く。)の賠償を求めるとともに、原告二輪について自動車保険契約(無保険車傷害保険契約)を締結していた保険会社である被告Y保険会社に対し、同契約に基づいて、本件事故により原告が被った人身損害相当額(物的損害及び弁護士費用相当額を除いたもの。)の保険金の支払を求める事案である。

         (中略)

4 争点に関する当事者の主張

         (中略)

(※原告)
キ 後遺障害逸失利益 725万8354円
(ア) 本件事故時の平成22年1月の原告の月収は20万3000円であるから、これに12を乗じると、243万6000円となる。
(イ) 原告の腰椎圧迫骨折に伴う背部疲労感等は後遺障害別等級表併合11級と認定されていること、原告の後遺障害は、繊維筋痛症による全身痛を含め、肉体労働、事務系の仕事などあらゆる仕事に影響を及ぼすことが明らかであるから、その労働能力喪失率は20%を下らない。
(ウ) 原告は、症状固定時に39歳であり、原告の後遺障害が器質的損傷によるものである以上、労働能力喪失期間は、67歳までの28年間(ライプニッツ係数14.8981)である。

(※被告)
キ 後遺障害逸失利益
 原告が主張する基礎収入額を認めるが、原告の後遺障害の内容からすると、労働能力喪失率は14%、労働能力喪失期間は最大で10年とするのが相当である。

         (中略)

第三 当裁判所の判断

         (中略)

オ 休業損害 260万4233円
 証拠(略)によれば、原告は、本件事故当時、株式会社Kに勤務し、平成22年1月分の給与額が20万3000円であったと認められるから、これを30日で除した1日当たりの額は6766円(ただし、1円未満を切り捨てた後のもの。)となる。
 証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、上記会社において、運送トラックの運転手として、運転や荷物の積み下ろしの業務に従事していたと認められ、このような就業内容を前提に、原告の傷害の内容及び程度、その通院状況を併せ考えると、原告が本件事故により負った骨折が軽快し、外傷性頸部腰部症候群に対するリハビリテーション治療が継続されるようになるに至る平成22年9月24日までの237日については100%の、外傷性頸部腰部症候群に対するリハビリテーション治療が継続されたと理解することのできる同月25日から平成24年1月30日までの493日については、36日間の入院期間があること等をも考慮すると、平均して30%に相当する休業損害を認めることが相当である。
 そうすると、原告は、本件事故により、
 6766円×237日+6766円×0.3×493日
 の算定式により、260万4233円(ただし、1円未満を切り捨てた後のもの。)の休業損害を被ったと認めることができる。

カ 傷害慰謝料 220万円
 原告が本件事故により負った傷害の内容及び程度、その治療のための入通院の状況は、前記第二の2(2)のとおりであるから、原告が本件事故により傷害を負ったことに対する慰謝料は、これを220万円とすることが相当である。

キ 後遺障害逸失利益 725万8354円
(ア) 前記第二の2(3)の事実に証拠(略)及び弁論の全趣旨を総合すると、原告は、平成23年9月5日、Dクリニックにおいて、左手舟状骨骨折、左大腿骨骨挫傷、左脛骨骨挫傷、腰椎圧迫骨折の傷病に関し、背部の疲労感、両臀部のしびれ、左手掌の痛みの症状について、同年6月30日をもって症状固定と診断されたが、第1腰椎前方には後方38㍉に対して26㍉という状況の圧潰が生じていると認められ、その圧潰の程度は必ずしも軽度のものとすることはできず、原告に残存する背部の疲労感、両臀部のしびれについては、同症状によるものと認めることができる。

 前記オのとおり、原告は、本件事故当時、株式会社Kにおいて、運送トラックの運転手として、運転や荷物の積み下ろしの業務に従事していたが、上記後遺障害の内容及び程度に照らすと、同業務にそのまま従事し続けることは困難なものと考えられ、また、その余の業務を前提としても、一定の支障が生じることが避けられないものと考えられる。加えて、原告は、症状固定時に既に39歳に至っており、後遺障害を抱える中、新たな就業先を確保することが必ずしも容易とはいえないこと、今後、加齢に伴い、上記脊柱変形に伴う症状が悪化又は新たに出現する蓋然性があることをも考慮すると、原告については、本件事故により負った後遺障害により、今後、就労可能年数の28年間にわたり、後記基礎収入額の20%に相当する程度の収入の減少を生じる蓋然性を認めることができる。

 なお、前記第二の2(3)ア(イ)のとおり、原告は、H病院において、交通事故による繊維筋痛症に関し、全身痛、易疲労の症状について、同月30日をもって症状固定と診断されているが、現段階における医学的知見に照らすと、繊維筋痛症によって説明される、あるいは、同症を説明する原告の自覚症状をもって、未だ本件事故と相当因果関係のある後遺障害と認めることはできない。

(イ) 後遺障害逸失利益を算定するに当たっての基礎収入額が、本件事故当時原告が従事していた株式会社Kから支払われていた20万3000円に12を乗じた243万6000円であることについては、当事者間に争いがないから、原告の後遺障害逸失利益は、243万6000円×0.2×14.8981(28年に対応するライプニッツ係数)の算定式により、725万8354円(ただし、1円未満を四捨五入した後のもの。)となる。

ク 後遺障害慰謝料 420万円
 前記キ(ア)の原告の後遺障害の内容及び程度に照らすと、原告が本件事故により後遺障害を負ったことに対する慰謝料は、これを420万円とするのが相当である。

3 小結
(1) 被告乙山及び被告丙川に対する請求
 前記2(1)のとおり、原告が本件事故により負った人身損害は、①治療費等、通院交通費、入院雑費及び通信費その他が合計260万8097円、②休業損害及び後遺障害逸失利益が合計1219万7534円、③傷害慰謝料及び後遺障害慰謝料が合計640万円となるところ、前記1の判断にかかわらず、被告乙山及び被告丙川との関係においては、本件事故の態様に加え、過失相殺に当たって考慮すべき事情についても、原告が主張するとおりの事実を認めるべきであるから、本件事故について過失相殺をすることは相当でない。

 一方、前記第二の2(5)のとおり、原告は、労災保険から、①診療費及び薬剤費合計220万9210円、②休業給付303万0664円の支払を受けているから、これを充当した後の金額は、順に①39万8887円、②916万6870円、③640万円となる。また、原告は、自賠責保険金331万円の支払を受けているから、充当後の合計額1596万5757円からこれを控除すると、1265万5757円となる。

 したがって、原告の被告乙山及び被告丙川に対する請求は、1265万5757円に弁護士費用相当額130万円を加えた1395万5757円及びこれに対する本件事故の日である平成22年1月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。

(2) 被告乙山に対する請求
 前記2(1)のとおり、原告が本件事故により負った物的損害は58万8722円であるから、これに弁護士費用相当額5万8872円を加えた64万7594円及びこれに対する本件事故の日である平成22年1月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める原告の請求は、理由がある。

(3) 被告Y保険会社に対する請求
 前記2(2)のとおり、原告が本件事故により負った人身損害は、①治療費等、通院交通費、入院雑費及び通信費その他が合計262万7897円、②休業損害及び後遺障害逸失利益が合計986万2587円、③傷害慰謝料及び後遺障害慰謝料が合計640万円となるところ、前記1のとおり、本件事故については、1割の過失相殺をすべきであるから、同過失相殺後の金額は、順に①236万5107円(ただし、1円未満を切り捨てた後のもの。)、②887万6328円(同)、③576万円となる。

 一方、前記第二の2(5)のとおり、原告は、労災保険から、①診療費及び薬剤費合計220万9210円、②休業給付303万0664円の支払を受けているから、これを充当した後の金額は、順に①15万5897円、②584万5664円、③576万円となる。また、原告は、自賠責保険金331万円の、さらに、被告Y保険会社から3万4650円の各支払を受けているから、充当後の合計額1176万1561円からこれらを控除すると、残額は841万6911円となる。

 したがって、原告の被告Y保険会社に対する請求は、841万6911円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成25年1月17日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。

第四 結論
 以上のとおりであるから、主文のとおり判決する。(口頭弁論終結日 平成25年12月25日)
 東京地方裁判所民事第27部 裁判官 松本 真
以上:5,073文字

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