平成30年 5月23日(水):初稿 |
○「針灸・マッサージ費用等医師治療費以外の治療費」等に整骨院等の治療費について交通事故と因果関係が認められるケースを説明していました。最近、整骨院治療費について保険会社の認定が厳しくなりつつあるようです。 ○日弁連交通事故相談センター東京支部で毎年発行している赤い本下巻(講演録編)平成30年版27頁以下に吉岡透裁判官の「整骨院における施術費について」と題する講演録が掲載されています。以下、その備忘録です。 第1 整骨院における施術費が損害と認められる範囲 (1)治療費一般論 被害者が交通事故により受けた傷害の具体的な内容・程度に照らし、症状が固定するまでに行われた「必要かつ相当な治療行為」の費用が損害と認められる。 「必要かつ相当な治療行為」とは、一般的に、医学的見地からみて当該傷害の治療として必要性及び相当性が認められる治療行為であり、かつ、その報酬額も社会一般の水準と比較して妥当なもの 整骨院における施術費も同様。 (2)施術費の請求が認められる要件(その1) ア 施術が症状固定までに行われたものであること イ 施術録に記載された施術が現になされたこと 交通事故訴訟において加害者側が、施術録に記載された通院の事実がないとか、施術録に記載された施術が現になされていないと争う事案が増えている 施術録に記載があれば、現にそのような通院をして施術がなされたことを一応推認させるので、この記載を争う側に推認を覆す事情を主張・立証する必要がある (3)施術費の請求が認められる要件(その2) ア 必要かつ相当な施術行為であること ①施術の必要性-施術を行うことが必要な身体状態にあったこと ②施術の有効性-施術を行った結果として具体的な症状の緩和が認められること ③施術内容の合理性-施術が受傷内容と症状に照らし、過剰・濃厚に行われておらず、症状と一致した部位につき、適正な内容として行われていること ④施術期間の相当性-受傷内容、治療経過、疼痛の内容、施術の内容及びその効果の程度等から、施術を継続する期間が相当であること ⑤施術費の相当性-報酬金額が社会一般の水準と比較して妥当なものであること イ 医師の指示がある場合、ない場合 医師の指示がある場合は、特別事情がない限り、①施術の必要性、②施術の有効性が認められる 但し、③施術内容の合理性、④施術期間の相当性、⑤施術費の相当性が認められるかの検討は必要 医師の指示がなかったとしても①乃至⑤が認められれば、交通事故による損害と認められる ウ 問題のある事案 赤い本平成15年版講演録片岡講演で④施術期間の相当性について「初療の日から6ヶ月を一応の目安」とされたためか、事故直後からほぼ連日整骨院に通院し、施術内容通院頻度も変わらないのに6ヶ月を経過した途端通院を止め、きっかり6ヶ月分で整形外科治療費の何倍にもなる施術費を請求する事案が散見される。このような事例は、④施術期間の相当性だけでなく、その他の要件にも疑問が生じて、交通事故との因果関係が認められないこともありうる。 以上:1,249文字
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